信仰心がないことがわかり、気が楽になって、歩きに歩いた。といって歩くことをもっぱらにしたわけではない。去年の「ぶらり遍路の旅」のことがあったから、出発前には、疲れを残さないように考えて計画した。去年は、16日間で422km。ほぼ26km/日であった。疲れは残ったものの、これくらいは歩けるが、これくらいが限度かなと思っていたから、平均して25km/日の計画というわけであった。
ところが実際に歩いてみると、19日間、575km。30km/日というペースであった。計画より2割多い。去年はしかし、途中で飽きが来て区切りを付けた。今年は知り合いの法事があって、最初から19日間で区切ると決めて臨んだ。いやじつは、19日間の途中で飽きが来たり、草臥れてどこかに逗留したりするんじゃないかという心配をしていた。それなのに、このハイペースは、何だ?
信仰心がないんだという「覚醒」がひとつ目、ワタシは歩くだけでいいんだという「悟り」が二つ目。そう思ったことが、歩く秘訣といえば秘訣であった。それ以外には、靴を変えた。去年は軽登山靴であった。いや今年も直前まで同じ登山靴で行こうと思っていた。だが、去年、お遍路から帰ってから手に入れたウォーキングシューズが、巧い具合に足にフィットする。たいした山道があるわけじゃないから、こちらの方がいいかもと出発の玄関先で考えて、その軽い方にした。それが、当たったといえば当たった。
靴擦れが6日目に起きた。去年は4日目に靴擦れの水疱が足指の間に二つ三つできて、針と絆創膏と小さい綿とテープを同宿者に貰って、難なくクリアした。今年も同じように足指の間に二つでき、それは去年同様に処置してその後何の問題もなかったのだが、もう一つ右親指の付け根の上にできた水疱が面倒であった。何でこんなところにとはじめ思った。ほかの水疱と同様に処置したが、その後も踏み出す時に折れ曲がる靴の、その部分が当たって痛みが走るんじゃないかと気遣いをする必要があった。痛かったと言うよりもその気遣いに草臥れた。とうとう13日目の宿出発の時にフロントの方に相談したら、消毒とオロナイン軟膏を塗って処置してくれ、その後すっかり解消した。それもあって、毎日ウォーキングシューズの紐を解き、毎朝出発の時に結ぶという手間暇をかけて足と靴との相性を調整することにも気を遣った。
距離が伸びたわけを考えてみると、ひとつは宿が休業していたり廃業していたり、なぜか電話が通じなかったりして、予定通りに運ばなかったことがある。もう一つは、「遍路道」の地図にある四万十川河口の「渡し船」を使おうと思ったら、もう半世紀前に廃業していた(といわれていたが、実は復活し、予約電話を入れれば使えたはずと、後に聞いた)ということもあり、上流の橋まで7kmほども遠回りをしなければならなかったというアクシデントもあった。もう一つが、「古い遍路道」をたどったために、トンネルを抜けると短縮できたのに遠回りになったこともあった。それがあったため十日目、逆に、「遍路道」を避けて国道をたどったせいで、(後で聞くと)山を越えていれば7kmのところを、15kmも遠回りをしてしまったヘマもあった。この時は、なんと41kmも歩いていたのだが、それほどの距離とは思わないほど疲れを感じなかった。
信仰心がないというのを去年は、これじゃスタンプラリーではないか、何をやってんだワタシはと慨嘆したのであったが、今年は、信仰心のない私にとってはスタンプラリーでいいのだ、歩くことがわたしの人生なのだと「達観」したことで、心裡のざわざわはなくなり、気持ちよく歩くことができたと思っている。本当に人は気の持ちようで、身を処すことができると体感した次第であった。
違いを探るために去年と今年の歩く距離と日数を出した。
歩距離/日(km) 今年(日数) 去年(日数)
35km超 5日 1日
30km超 4日 0日
28km超 4日 7日
25km超 4日 4日
21km 1日 1日(17km)
11km 1日 1日(13km)
歩数計がGPSで計測した歩行総時間は、今年は114時間と6分、去年は92時間46分。歩いた距離を時間で割ると、今年は時速5km/hだが、去年は4.5km/h。去年重い荷物を担いでいたことを考えると、さもあらんと思う。今年歩くのが軽くなったというのは、やはり「悟り」を開いた御蔭というべきか。
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