2022年4月7日木曜日

花の吉野山

 この4日から桜を観に和歌山と奈良へ足を運んだ。雨の中を出発。浜松を過ぎて日差しが出た。濃尾平野の低い山肌に花開く桜が薄い新緑とコラボして山笑う風情を醸す。名古屋を過ぎて関ケ原に差し掛かると桜はいまだし。地形と季節の進行の違いが現れている。

 企画の主催は紀州加太の休暇村。現地集合現地解散。2泊して、真ん中の日にチャーターしたバスで吉野山に日帰り。駐車場から4時間ほどが自由見学というわけで、昔行ったことのあるカミサンが案内役を買って出た。

 この休暇村がなかなか素敵であった。和歌山市の北、加太の海岸縁、百メートルほどの高台の先端に建つ新しい外観。近くの「森の小径」を巡ると明石大橋から鳴門大橋までのすべてが見えて、さらに南の太平洋へと紀州の視界が開ける。露天風呂の溢れる湯が目線を低くすると、まるでそのまま海とつながっているように見えるとカミサンに言われて、そうかそういう見方をすると、海がそのままわが身の先を見せているような解放感に溢れている。そうそう、朝風呂にゆくと加太港から釣りに出る船の灯りがぽつりぽつりと見える。風呂に入ってきた(私より若い)年寄りがその漁り火をみて、「いかなごですか、いかですか?」と聞くが、わからない。そう言われて考えてみると、船にひとつだけ灯をともしてゆっくりと南から北の方へ動いていく数隻の船は、網を下ろしてトロールしているのか。とするとイカナゴ漁だ。1ヶ所に留まって船全体を満艦飾に灯りを点けるのはいか釣り船か。露天風呂の朝は、関東と30分づれて開けてくるのも、好ましい。

 船尾に小さな帆をかけた小舟、ゆらりゆらりと揺れながら釣りをしている。それより大きな船には3人の船員の姿が見える。沼島と淡路島の南端の間に鳴戸大橋。空が青みを増してくる。到着して「森の小径」を散歩したときに淡路島とその南側の沼島を教わった。ちょうどその前々日、TVの「ぶらタモリ」で中央構造線が淡路島と沼島の間を通っているとやっていたので、沼島がとっても印象深い。二日目の朝、双眼鏡で覗くと、沼島と淡路島の間の向こうに鳴門大橋がはっきりと見える。さらにその先に四国山地の山並みが高く盛り上がっている。

 夕食を食べているとき、アナウンスと一緒にカーテンが一斉に上がりはじめた。その時はじめて閉まっていたことに気づいた。露天風呂から観たのと同じ紀淡海峡の景色が見える。正面に淡路島、その上に太陽が沈みかかる。朱く丸い形が絵に描いたようにゆっくりと降りてゆく。山の端にかかり、すっかりその姿が隠れてしまうまでのショウであった。

 カミサンは「これを観ただけで、ここへ来た甲斐があった」と、吉野の桜も観ないで喜んでいる。

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 翌朝、宿からバスに乗り和歌山県が一番淡路島に近づく地点から紀ノ川に沿って東へ走る。無料の高速道とガイドは言っていたが、確かに大部分は片側一車線の鄙びた山間を走る。その小高い丘のような山肌もまた桜が咲き誇り、吉野ばかりか、和歌山ならのこの辺り一帯が桜を愛でているようであった。橋本市、五條市を抜けて吉野山の下千本のバス駐車場に着いたのは、予定の時刻よりも30分早かった。あとはフリータイム。集合まで4時間半。

 ガイドに西行庵まで行って来られるか聞くと、5㌔程だから大丈夫じゃないか、でも、本当に行くのかと、私の歳をみて驚いている。距離5㌔、標高差400㍍ほどと聞いて、楽勝と思った。上りはゆっくり。詳しく観たいところは見当を付けて帰りに立ち寄ればいいと考えた。後でわかるが、スマホの歩数計が測った距離は往復15.8㌔あった。結局、往復4時間15分かかった。バスが予定通りであったら、行って来られないところであった。車が上まで行っている。バス停もあるからバス便もあるようだ。中千本までは人が沢山来ている。奥千本となると、桜が3分咲きということもあって、人影はまばら。奥千本の桜ははまだ蕾みであった。

 途中で時間がかかっていることに気づいて帰途を急ぐ。とは言え、無理をするほどではない。上千本の古い家屋の縁側に座って桜を観ながら柿の葉寿司と葛餅いただく。時間を聞いて1時間というのでなんとか間に合うと読む。蔵王堂の屋根が見えて後15分もみればいいと考え、吉水神社への横道へ逸れ、一目千本にも足を運んだ。だが、そこから先がまるで年末のアメ横のように、人が道いっぱいに広がり、散策を楽しんでいる。ごめんよと言いながら、脇を抜けて余裕を持って駐車場に着いた。朝の広々とした駐車場は大型バスで一杯。集合時刻の15分前に着いたのだが、もうほとんどの人たちは座席に座って全員が揃うのを待っているようであった。

 休暇村への帰途も順調。5時少し過ぎに着き、風呂に入り、ワインを一杯聞こし召してから夕食。今日は曇り空で夕日は雲間からちょっと赤い色を見せただけであった。

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