2017年8月26日土曜日

どこに実感の起点と焦点を合わせるか


 朝鮮半島情勢が緊張を増している。元自衛隊将校OBは、今年末までにアメリカが北朝鮮への軍事行動に出ないならアメリカの威信は地に落ち、日本は(安全保障のために)防衛予算を倍増して装備を十分に整え、中国との連携を模索することが必要になると具体的な提言もするほどだ。

 また今日(8/25)の東洋経済onlineでは、津上俊哉という中国研究者が、朝鮮半島から米軍が撤退する可能性と半島が中立化したのちの東アジアと日本の安全を保持するために、日本が採ることのできるシナリオを検討している。最悪の場合に日本は、核武装をするという意思の表明をして米中と渡り合う必要があるかもしれないと提言している。つまり、北朝鮮崩壊後の朝鮮半島をめぐる国際的な力関係の変化と日本の立ち位置を論題にしているわけだ。

2017年8月25日金曜日

孫との五日間(下)よく歩く、よく回復する


 さて五日間預かった孫を連れて、どこを歩くかは私の領分。奥日光をフィールドに選んだ。この孫たち、毎年正月には奥日光で何日かを過ごすのだが、雪のないときに来たことがない。となると、どこでも歩ける。天気を観ながらコースを決めればいいだろうと考えていた。

 ところが、連日の雨。家を出る20日も雨の中であった。8時40分。だが子どもたちは車が走り出すやすぐに眠りについた。日曜日とは言え、天気がよくないせいか高速路の車は少なくズムーズに走る。いろは坂を登りきってトンネルを抜けると雨はやみ、路面も濡れていない。やはり奥日光は梅雨知らずといわれるだけあって、太平洋岸の平地が雨でも、天空の中禅寺湖や戦場ヶ原は晴れている。

2017年8月24日木曜日

孫との五日間(上) 子どもの好み、子どもの思案


 いやはや、全力投入であった。息子夫婦が仕事で三日間出張になるので、前後をあわせて五日間、小学生の孫二人を預かった。19日、新幹線でやってくる東京駅へ迎えに出たのはカミサン。兄妹二人が真っ先に飛び出してきたそうだ。たぶん、「次は東京、終点です」とアナウンスがあってすぐに、荷物をもって出口に並んだのであろう。妹がキャリーバッグを曳いていたという。この孫兄妹は食事が面倒だ。食べなかったり、好みが会うたびに変わっていたりする。ご飯にふりかけばかりを食べたり、唐揚げばかりに執着したり、兄妹の好みが違ったりするから、カミサンはピリピリしている。夕食にと、とりあえず蕎麦を打つ。これは二人とも好んで食べる。大人以上に食べたこともあるので、大人二人前分を余計に打つ。カミサンは天麩羅を揚げる。ところが、思ったほど食べない。大人半人前が余る。珍しいことだ。

2017年8月19日土曜日

消えた中動態の痕跡


 国分功一郎『中動態の世界――意志と責任の考古学』(医学書院、2017年)を読む。図書館で借りて、他の本を読んでいるうちに返却日が近づいてから、手に取った。面白い。私の胸中にぼんやりと棚上げされていたコトゴトの、向こうの方に薄明かりがともるような、そんな気がして読みすすめた。

 中動態というのは、能動態、受動態という言語学の「する」「される」関係の中に、そのどこにも位置しない、ときにはどちらにも位置する動詞の名称である。インド=ヨーロッパ語族に属するギリシャ語の文法解読を通じて、その中動態の意味するところをとらえ、副題の「意志と責任」の現在的ありように迫る力作と直感する。

2017年8月18日金曜日

やっとアメリカもアプレ・エイジング


 今日(8/18)の朝日新聞に《米女性誌「アンチエイジング もう使いません」》と、記事が出ている。おお、やっとここに到達したか。五年遅いぞ、と私は思った。2013年2月29日の「36会 aAg-Seminar 開設のご案内」で「主宰 浜田守」さんは、次のように釈明しています。

《「aAgってなんだ?」とお思いの方に、まず弁明。
 正面から「アンチ・エイジング」と呼称するのは面はゆく、でも世間体もありまして、このような名称を付けました(世間体は、「会場」をご覧いただければお分かりになります)。漢語を交えて表記するなら「臨床抗齢学会」、和語にすると「寄る年波調べ所」とでも訳しましょうか。聞かれたら、そうお答えしようと、まあ、この程度に考えています。》

2017年8月17日木曜日

成長も衰退も目に見える


 三日間の霧ヶ峰を過ごして帰ってきた。帰って来てみると、さいたまも涼しいではないか。「16日間連続の雨」と、記録二番目を喧伝している。なんだ、こちらも雨だったのかと、連日雨模様の霧ヶ峰の天気を赦す気になった。

 14日の霧ヶ峰は雲がかかる。それでも八島湿原から車山のレーダードームが見える。エゾノカワラナデシコ、ヨツバヒヨドリ、コオニユリなど湿原の花々はお湿りに生き生きとしている。塩尻駅で出逢ったいとこ同士の孫たちは、もうすっかりご機嫌のおしゃべりに興じて、湿原へ繰り出す。9歳から13歳までの孫4人の脚は速い。爺婆は、置いて行かれる。孫たちの父母が付き添うから心配はしないが、去年の秋にはこうではなかったと、成長の速さと衰退の着実さを、対比的に思い浮かべる。ま、それでいいのだ、が……。

2017年8月13日日曜日

別荘のようなところでの静養?

 と言って私が「別荘」を持っているわけではない。「別荘のように使える馴染のペンションがある」だけだ。息子の知り合い。南極料理人のご主人がつくってくれるフランス料理に舌鼓を打ち、信州ワインを味わい、近くの八島湿原や車山などを散策して、のんびり過ごす。年に一回は出かける。もう十何年通い続けている。息子一家と合流する。ときに娘の家族が加わる。つまり、我が家の一族が顔を合わせる機会になる。

2017年8月12日土曜日

対立軸を前提にすると、それをすり抜けてきたのか、私たちは。


亀田達也『モラルの起源』(岩波新書、2017年)に「進化ゲームでみる倫理の衝突」という節で紹介している「実験」があります。

《進化ゲームとは、さまざまな行動を「戦略」として定式化したうえで対戦させ、ほかと比べて利益の上がる戦略が次第に集団で増えていくという、生物進化とのアナロジーから集団のダイナミクスを調べようとするアプローチです》

2017年8月11日金曜日

「山の日」という非日常に思う


 今日は「山の日」。去年から祝日になった。だから私は、お休み。若い人たちの邪魔をしたくない。国の施策に踊らされたくもない。加えてこれ以上、非日常を増やしたくない。海の日もあるから山の日もというのなら、空の日も水の日も設けなくてはならない。つまり、天然自然に思いをはせその恵みに感謝するのなら、というほどの意味で私はそう考える。もちろん山の日を設けた方は、お盆とつなげて皆さんが遊びに出ることを奨励し、少しでも景気浮揚に貢献したいという「ねらい」であろうから、自然への感謝も何もあったものじゃない。幸いにも今日は朝から低い雲がかかり、涼しい。昨日までの暑さがちょっと治まって、家でゴロゴロしているのにちょうど良い。静かな日常が戻って来たみたいだ。

2017年8月10日木曜日

スウィングする苦悩


 ドロシー・ベイカー『Young Man with a Horn――あるジャズエイジの伝説』(諸岡敏行訳、青土社、2001年)を手に取った。図書館の「新着図書」の棚にあった小説。後で発行年を知って、どうしてこんなに年数を経て? と思ったもの。しかも、初版本だ。原作は1938年に発行されている。

2017年8月9日水曜日

山歩きのQ&A


Q:薬師岳の山行、「75歳以降の私の山歩きの目安になる」と言ってたけど、どうだった?
A:行ってよかった。2013年の飯豊山のときに較べたら、間違いなく力が落ちている。飯豊山のときは3泊4日、約20kgの荷物で、アプローチを除くと、一日目10時間半、二日目8時間半、三日目7時間半を歩いた。下山したときは、オールアウトの状態。ほぼ力を使い尽くしたって感じ。麓の元旅館の風呂場を借りて汗を流させてもらい、冷たい水をごちそうになってやっと息を吹き返したって……。思い出しましたよ。だけど今回は、一日目4時間の散策、二日目5時間、三日目5時間、四日目6時間、五日目2時間半と日にちは多かったけど、一日の行程は飯豊の時の半分くらい。力を使って歩いているって感じはまったくなかった。行程の配分がうまくいったのかな。荷物も多いときで13kgと軽かった。上るときも下るときも、足を出せばうまい具合にそこに置き場があるっていうか、ほとんど意識することなく歩一歩とすすみましたね。そうだ、これからは、こういうペースで歩けばいいんだって思いましたよ。たしかに「目安」になりましたね。

2017年8月8日火曜日

わたしが世界からの手紙なのだから


 テレンス・デイヴィス監督『静かなる情熱――エミリ・ディキンスン』(イギリス・ベルギー、2016年)を観る。欧米各地の映画祭のオフィシャル・セレクションを受け、グランプリ賞ももらっているという。だが正直なところ、これらの映画祭の選考者がどのような現代的感覚をもって、この作品を選んだのか、わからない。お前がバカだからだと言われるなら、それを受け容れたいが、ぜひともどなたか、なぜバカなのかを教えてもらいたい。

2017年8月7日月曜日

変化に富む薬師岳の縦走ルート(3)マイペースで歩く心地よさ


 薬師岳の山頂で30分近くも過ごし、下山にかかる。少し進むと岩室がある。最初、これが山頂かと思っていた。「ニセ薬師」と若い二人連れは言う。彼女たちは太郎平の方からも来たことがあるらしい。そのときに山頂だと思ってがっかりしたんだよねと笑っている。彼女たちに先行してもらう。下りは砂地の斜面。富士山の砂走りより少し大きい瓦礫がつづく。バランスの良い若い人は、さかさかと降ってゆく。雲は3000m辺りを覆い、その下の山々はくっきりと見える。薬師岳山荘2071mで先行した二人は休んでいた。32分できている。私は構わず先行する。やがて瓦礫の道はハイマツ帯になる。と、5mほど道の先にライチョウがいる。これで3日間連続でライチョウに出逢った。カメラを出して撮影する。ライチョウは砂浴びでもしていたのだろうか。足元の土が少し掘られて色が変わっている。どうしたものか思案しているように立ち止まったまま。私も動きを止める。と、うしろから件の若い女たちがやってくる。ライチョウがいると声を出さずに言うと、伝わったらしく、先頭の彼女は後ろのカメラウーマンに何かを言う。二人がそうっと近づいてくる。

2017年8月6日日曜日

変化に富む薬師岳の縦走ルート(2)稜線の眺望と面白いアップダウン


 2日目に宿泊した五色ヶ原山荘の部屋は6畳間に4人。シーズン中の山小屋としては割とゆったりした方であった。一人は還暦前の大阪の方。ロッジくろよんから7時間半ほどかけて登ってきた。この地域のいろんなルートを歩き回っているようで、立山の方へ抜け、剣山や大日岳を経めぐって4日に下山する予定という。話す口調は軽々としているが、なかなか深い奥行きを感じさせる。雨に降られて全身ぐっしょり。幸い山荘には乾燥室もあって着替えた衣服は早い段階で乾かすことができた。あとの二人連れは、川崎のアラカンと大阪のアラフィフ。アラカンの方が山慣れた先輩で、アラフィフの方は、装備服装は今風のヤマボーイという感じに若作り。私と同じ室堂からのルートをとって、同じ行程を歩く予定。そのため、最後まで山小屋が同じだが、歩き方にも違いが出て、それなりに面白いことに気づかされた。また部屋は別だったが、登り口の室堂で私に話しかけてきた60代半ばの二人連れに「早かったですね。黄色いザックカバーが後ろからよく見えましたよ」と声をかけられ、最終日まで同じコースを歩くのだとわかった。

2017年8月5日土曜日

変化に富む薬師岳の縦走ルート(1)北アルプス深奥部に入る


 五日間の山旅を終えて無事に帰ってきた。薬師岳を訪ねる今回のルートは、岩と雪渓とお花畑に彩られた変化に富む、北アルプスの奥深さを満喫させるルートであった。経路を紹介しておこう。

1日目……立山の弥陀ヶ原や室堂を周遊し、天狗平山荘に宿泊する。
2日目……室堂から浄土山を経て龍王岳、鬼岳、獅子岳、ザラ峠を通り五色ヶ原山荘まで。
3日目……五色ヶ原から鳶山、越中沢岳、スゴの頭を経てスゴ乗越小屋に泊まる。
4日目……スゴ小屋から間山、北薬師岳、薬師岳を越えて、薬師岳山荘、薬師峠を経て太郎平小屋。
5日目……太郎平小屋から折立へ下る。