2017年1月6日金曜日
知らないことがいっぱいある
朝から雪が舞う1月4日。昨日のダイヤモンドダストのような小雪と違い、サラサラで粒は小さいが本降りの観。気温は低い。夜のうちから降っていたらしく、ホテルの庭にはもう15センチくらいつもっていようか。孫たちは雪遊びがしたいというので、爺婆は別行動をとることにする。
竜頭の滝から中禅寺湖北岸を辿る。雪もなく、落ち葉がふかふかと積もった冬枯れの道。雪は舞い視界は利かないが、風もなく、湖面は穏やかに揺蕩っている。熊ッ窪のミズナラの巨樹が、降ってくる雪に煙って怪しげな巨人にみえる。竜頭の滝を出て1時間15分。
そこから高山へ上るルートをすすむ。積雪が多く、徐々に踏み跡がわからなくなる。はじめは谷あいを、中腹からジグザグに支尾根へ取り付き、半ば強引に上へたどる。うっすらと白くへこんでいるあたりがルートにみえ、たどっていると、これが下りのご正道らしいと気づいて、反対方向へ戻る。分岐らしい所に出る。見上げると峠のスカイラインが明るい。そちらへすすむ。高山から峠へ来る道と出逢う。熊ッ窪から約50分ほど。いかにも山を歩いたという実感がこもるルートであった。
「←小田代ヶ原」を辿る。100mほど西へ稜線を歩き、そこから谷合へ下る緩やかな道。やがてズミやシラカバ、カラマツの小さな木々が林をつくり、傾斜は平坦になる。戦場ヶ原の南端になろうか。雪はさらに深く、落ち葉も目につかなくなる。やがて小田代ヶ原への舗装バスルートに出る。今日は小田代ヶ原へは行かないで、竜頭の滝上に止めた車の所へ戻る。15分ほどで湯川に出逢い、それに沿って降ること10分ほどで竜頭の滝上駐車場に着いた。全行程3時間20分。いい運動であった。昨日逆に歩いたときに落ち葉を踏みしめたところがすっかり白くなっている。一人先行者の踏み跡があっただけ。そういえば今日は月曜日、皆さん年明けの仕事が始まっているのだ。
宿へ戻ると、ちょうど湯ノ湖を一周してきた孫たちと出逢った。途中でお弁当を食べて2時間もかけて歩いたらしい。「疲れたあ」といいながら孫たちはまた、そりをもって外へ出ていった。親は付き添う。私たちもああいうふうにして子どもを育てたんだねえと婆が懐かしそうに目を細める。そうだったかなあと爺は思い出せない。2時前から露天風呂につかり、温まってからビールを飲みながら本を読む。至福の時間。
夕方、風呂から上がった孫たちが「投扇興」を持って部屋に来た。昨夜の宿のイベントで「投扇興」を教わり、試合をして準優勝をしたと兄孫が得意そうだ。その道具を宿で貸してくれたらしい。高さ15センチの木製の小箱を立て、その上に布で包んだ7センチほどの高さと横幅の扇型に鈴をつけ「蝶」と名づけた飾り物を載せ、3メートルほど離れた位置から扇子を投げて、その飾り物に当てて落とす。落ちたときの「蝶」と扇子の位置、と重なったり木箱に寄りかかったりしている姿から「得点」を1~50点まで「見立て」、10回勝負で勝敗を決するというゲーム。まず兄孫から投げ方を教わる。扇子がまっすぐに飛ばない。力を入れると右に左にそれてしまう。くるりと一回転して手前に落ちたりする。箱に当るとマイナス点になる。兄孫はなかなか達者だ。10回勝負で22点も入れる。親もかなわない。妹孫もうまくいかないで悲鳴を上げてぐずる。爺も挑戦したが17点で敗退した。
面白いのは「得点」につけられた「見立て」の名称だ。扇子と蝶が(同じ方向に)ばらばらに落ちて、扇子と木箱のあいだに蝶があると「背を早み」で1点、扇子が蝶と木箱のあいだにあると「夏の夜の」で2点、木箱を挟んで扇子と蝶が落ちていると「これやこの」で3点と細かい。そう、百人一首の歌に託して、扇子と蝶と木箱のかんけいを表現している。面白いと思ったのは、妹孫が落ちたのを見て「背を早み~」といったり「あっ、これやこの、だ」 というのが、なんとも「風情」がある。「見立て表」を見ながらいうのだが、そうか、「行くも帰るも別れては~」なのかと、謎が解ける。「ああっ、天つ風~、20点」などと読み上げると、木箱の扇子が乗っていて、蝶が落ちて倒れずに立っている。なるほど「乙女の姿しばしとどめむ」か、ふむふむ、というわけ。妹孫は、もちろん意味も分からずに「見立て表」を読み上げているだけだが、ただ点数を読み上げるよりも、可愛らしい。江戸時代に流行ったらしい。面白いゲームがあったものだと私は思っていたが、この文章を書いていて、「とうせんきょう」と打ち込んで「変換」すると「投扇興」と一発で出てきたのには驚いた。要するに私が知らなかっただけなのだ。いやはや。
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