今年は何日、山に入ったろうか。1月が6日、2月が3日。2月には与那国島へ遊びに行ったから山行が減った。そして2月末には、新型コロナに関する緊急事態宣言が出されて、県外へ行くのは憚られるようになった。3月は日帰りの3日となり、4月7日を最後に6月9日まで2ヵ月間、山行が途絶えた。
今年の山行日数は、32回、49日。20回の日帰り山行と12回、29日の泊をともなう山行であった。そのうち山の会の人たちと一緒の山行は、22回、31日に及ぶ。私の個人山行は11回、18日だったから、ま、山の会の皆さんにはよくつきあってもらったと思う。個人山行の1回には、現地の登山口に行ってみるといつも一緒に山に入るkw夫妻の車が止まっていた。出逢うために(たぶんこうだろうと思われる)コースの逆を辿って、うまく中間点の山中で一緒にお昼をとるのもあった。
おおよそ週1回の山行をしていたことから考えると、4,5月の二月を除く山行日数としては、まずまずよく行ったといえよう。ならばコロナの影響は、さほどではなかったのかというと、そうでもない。
同行する山の会の人たちが、格段に減った。何しろ公共交通機関をつかえないとなると、私とkwさんの車で行くしかない。同行する人がいれば最寄りの駅か浦和駅で待ち合わせて登山口に向かったが、それをしたのは3人だけ。あとの方々は、すっかり山から遠ざかったのではなかろうか。
私は電車やバスを使わず、車で行くようになった。一番遠くまで行ったのは会津駒ケ岳登山口の檜枝岐村だったろうか。甲州市の瑞牆山のほうが遠かったろうか、それとも巻機山だったろうか。3時間半から4時間くらいの運転は、しかし、日帰りではないから、ゆったりと時間をとってムリをしないようにした。
同行者が減ったことによる大きな変化は、山行計画段階からはじまった。これまでのように実施日と目的の山名を提示するのではなく、実施の週と目的の山名を提案する。それに同行を希望する方がいれば、その人たちと天気予報を参照しながら、実施日を決めるようにした。その結果、ほぼ晴れた日に山へ入れる。予報と違って雲の中を歩くようなこともないわけではなかったが、それまでのようにざんざん降る雨の中を上るようなことはなくなった。これはこれで、山の愉しみが倍加するようになったともいえる。
それとともに、テント泊がはじまった。私は昔から使っていた一、二人用テントを引っ張り出してつかった。kwさん夫妻はテント用具一式を手に入れ、テント暮らしの第一歩からはじめた。山へ行くごとにキャンプ泊が進化していく。それは「泊」だけを機能的に考えていた私のテント泊観を変えるほどのちからがあり、それはそれで面白いものであった。kw夫妻はそのうち焚火をするようになり、11月の王岳山行を最後に、寒くなったのでテント泊を終了したのであった。山歩き以外に、キャンプを楽しむというアウトドア領域を開拓したともいえる。これは来年の山行の、行き先にも滞在の仕方にも影響を与えるように思う。
山に登る前日に、登山口の近場でテントを張る。もしロングトレイルを歩くのであれば、帰着した日もテントに泊まる。そうすると、年をとっても登れる山の範囲がぐんと広がる。今年登った百名山は、5つか。巻機山、武尊山、瑞牆山、会津駒ケ岳、白砂山。どれも前日泊をした。会津駒と白砂山は下山後にもテントに泊まった。
テント泊が面白いと思ったもうひとつは、テント場に椅子を設え、山を眺めながらワインを傾けてぼんやり過ごす楽しさと言おうか。ボーっとしている時間に身を委ねて、大自然に身を浸すのがこんなにも気持ちをくつろがせるものかと、身の裡の何かがほぐれていくのを感じたことだった。山が歩けなくても、こうやって過ごす時間てのがあるんだ。いつも目的をもって前へ進むという私のからだが身の奥にしつらえてしまっている感性を揺さぶるような体感であった。面白い。
kw夫妻が付き合ってくれてずいぶん私の単独行は減ったが、いつもそうしていると私自身の山行センスが鈍るから、できるだけ週1のペースを崩さず、どこかしらの山へ行くようにしている。これまで登ったことのない山を選ぶようにするのだが、そうしてみると、まだまだ関東の近場にも登ったことのない山がずいぶんあることがわかった。また、「日本二百名山」とか「日本三百名山」とか「山梨百名山」「栃木百名山」「群馬百名山」などが選定されていることも分かる。
あるいはまた、行ってみると、ルートファインディングも含めて、そう簡単な山でないこともあった。地元では登る山として意識されていないのに、地元の名山のように喧伝されているのがあることも分かって、可笑しかった。
こうしてみると、関東甲信越の山だけでも、まだたくさんの未踏峰があり、来年以降の登山に困ることはない。こちらの力が尽きてしまうことの方が先のようだから、しばらくはプランニングの愉しみもとっておける。
ま、こんなところが今年の山を振り返って思うことでした。