2018年4月12日木曜日

静かな丹沢の山


 昨日(4/10)6時前に家を出て丹沢へ行ってきた。来月の山の会の「日和見山歩」なのだが、私が海外へ行っていて参加できないというので、チーフ・リーダーが下見に行きときに同道することにしたのだった。チーフ・リーダーはやはり70歳の友達を連れてきて、この方のペースを基準にしてガイドしようというわけ。天気は絶好。ただ新宿発が6時42分と早い。


  チーフ・リーダーは「丹沢・大山フリーパス」がお得と教えてくれた。どうやって買うのかわからないが、小田急新宿の改札口の駅員に訊ねた。と駅員は「外へ出ます」といって出てきて、自販機のところで「そのボタンを押して、ハイ、そこに書いてある、ハイ、そこを押して、ケーブルカー乗りますか、乗らないのでしたらそちらですね」とまったく私を年寄り扱いして丁寧に応対してくれた。デジタルに応対できない年寄りという「埒外」になった気分でしたね。でも1430円かで、新宿から秦野や渋沢駅間、バスのヤビツ峠までや大倉からが全部込みだから、安いって感じがする。

 ヤビツ峠へのバスは混んでいた。私は立ちっぱなし。皆さん登山客だ。ウィークデイだし、すでに学校ははじまっている。なのに年寄りも多いが、若い人も多い。男女半々くらいか。大山へ登る人たちが3割、残りが丹沢へ向かう人たちというところか。でも、丹沢へのメインルートをとる人たちがほとんどで、支脈から登って三ノ塔から大倉への支脈を下山するというのは私たちだけであった。静かな丹沢山塊であった。ミネザクラが満開。たくさんついた花が皆下を向いている。例年の山なら四月下旬から五月にかけて花開くのに、今年は何もかもが早い。スミレが花盛りだ。木々の緑もつき始め、それらに隠されていた大山が上る途中の萱場からくっきりした姿を見せる。

 ルートは藪漕ぎの気配を湛えながら登り、岳の台899mの高台に出る。その上に二階建ての展望所を設けている。上に上がる。おっ、富士山が姿をみせる。これはおもしろい。四合目あたりから下が薄雲か霞に覆われて見えないから、中空にぽっかりと浮かび上がるように白い山体が現れた。手前の小さな箱根の山が黒っぽい山稜を横たえるから、よけいに、へえあんなところにと、驚きの思いが強くなるほど意外であった。やがて、向こうのほう正面に丹沢山の山体を見ながら、降りに下る。下りきったところが菩提峠かと思っていたら違った。「菩提風神祠」とあり、ほんの小さな石の祠が少し離れたところに祀ってある。そこから登り返し、開けたところがパラグライダーの出立地。南西の方に向けて飛び立つ木製の台がしつらえられている。林道が通っていて駐車場があり、何台かがとまっている。菩提峠だ。

 林道は一カ所だけを残して閉鎖されており、そのゲートの片隅に「日本武尊足跡」という古びた木柱があり、その脇に踏み跡がある。昭文社の地図にはないルートなので、CLのSさんは登り口を探している。「ここじゃないの?」と私。「でも、インチキって書いてある」と木柱の別の面を指さす。たしかに書いてある。だがこれは、「足跡」ってのがインチキってことじゃないのと笑って、そちらに踏み込む。スギの林の倒木と枯れた落ち葉とで踏み跡は消える。少し上へあがったところに、たしかな踏み跡がある。そこからはずいずいと上がる。同伴している70歳が少しへばり気味だ。

 鳥居があり、また「日本武尊足跡」という木柱がある。大きな岩に注連縄を張り巡らし、何かを祀っているのか。それとも、岩自体を祀っているようにあしらっているのか。手前のところに注連縄が張ってあり、26センチくらいの足の形のくぼみが岩に空いていて水が溜まっている。これだよ、足跡ってのは、と話す。この大きさなら背の高さは170センチというところか。

 山頂への踏路を上がる。明るい林になり、稜線が見えてくる。ミネザクラが相変わらずきれいに咲いている。支尾根の稜線をたどるとすぐにヤビツ峠からやってくる丹沢山塊の本稜線に合流する。そこが二ノ塔だ。広く、腰掛けるベンチが何脚かある。三ノ塔がはっきりと見える。そこまで15分だが、70歳がしんどそうだ。11時45分。お昼にする。腰掛けてお昼を食べていると、三ノ塔から若い男が一人やってくる。ヤビツ峠を6時半に出発して大日岳まで行って帰ってくるところだという。早いねと言うと、にこりと笑う。しばらく休んで彼が消えた後、同じ方向から身軽な格好の若い女性がやってくる。見るからにトレイルランナーって感じだ。彼女が消えるとまた同じような格好の女性ランナーがくる。そうか、ここはトレーニング場となっているようだ。

 お昼を済ませ三ノ塔へ向かう。70歳も回復したようだ。15分で三ノ塔に着く。ここはずいぶん広く、トイレも設置され、山小屋がどっかりと鎮座している。下の方に渋沢の街もみえ、丹沢の大日岳の左側に富士山が浮かんでいる。まさに浮かんでいるというように、下半分は雲か霞に隠されてないように見える。海は見えない。

 ほんの少し戻って、大倉への三ノ塔尾根を降る。スギの樹林に囲まれた快適な下山路にみえたが、ここから30分ばかりが階段や階段状の急傾斜の下山になる。私はストックを出してそれを支えに身体を降ろすから、あまり疲れない。70歳はストック一本だけで「体が小さいから下りはたいへん」と言いながら、懸命について行っている。ベンチがあるところから先の下りは緩やかになった。やがて牛首と名づけられた地点に来る。下山を始めてから1時間ほど経っている。下に林道が見える。だが下山道は林道から離れて稜線をずんずんたどる。道が分かれている地点で左をとる。さほど歩かないうちに舗装林道に出る。そこからは林道を伝い、下の方に大きな橋と公園をみる。あそこがバス停よとCLが話し、わずか15分ほどで橋のたもとに着いた。

 ミネザクラではないサクラが満開。ヤエザクラも花を開いている。犬を連れて散歩する人や小さな子どもを連れた若いママたち、年寄りの二人連れと、けっこうな賑わい。どこかしらバス停はとCLがつぶやく先にバスが見える。えっ、あれは52分発よ、あと3分でるわ、とCLは駆けだす。でもゆっくり歩いて乗ったところでバスが出た。昔の大倉はこんなに賑やかでもないし、これほど整備されたもいなかった。今はすっかり行楽地という雰囲気。大きな駐車場は公園を訪れた人たちでいっぱい。ずいぶん立派な登山基地になっていた。

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