2018年4月5日木曜日

山も初夏の彩り


 昨日は山の会の「日和見山歩・奥武蔵の低山を歩く」。あさ8時ちょっと過ぎに武蔵嵐山駅に集合。雲ひとつない青空。陽ざしが暑く感じられる。このところ風邪を引いたり、腰が痛かったりと不調であったoktさん、okdさん、mrさんたちも顔を見せている。mrさんは「歩かないと歩けなくなる」と意気軒昂であった。


 武蔵嵐山の駅前通りはすっかり整備され、散る桜が彩を添える。ハナモモが鮮やかな花をつける。ほんの10分も歩くと、田舎の気配。菅谷館跡に入る。資料館は9時開館、まだ20分以上ある。広い園内。ヤナギやカツラなどの広葉樹の新緑が明るく頭上を覆う。そのところどころにヤマザクラが花を咲かせ、足元にもサクラの花びらが散り敷いている。皆さんは歩きながらサクラを愛でる。ガビチョウだろうか、にぎやかに鳴く。

 馬頭観音のところでは地元の女の方が祈りを捧げている。その角を曲がり、大平山へ向かう。菜の花のくっきりとした色とサクラのほのかな色と大平山の新緑と常緑の深い緑が山肌をキャンパスにして明るく見事な彩をみせる。山笑うってこういうのかなと、思う。ハナダイコンが青色に足元を飾る。シダレザクラが満開。その脇のソメイヨシノはもう終わっている。ヤマザクラが風に花を散らす。ヤマブキが叫ぶように花を咲かせているところで登山道に入る。石段を数段あがった少し高いところに小さな鳥居があり、鬱蒼とした樹木に囲まれて身を小さくした祠がある。ユキヤナギが白い花をつけて噎せるように咲いている。その先にミツバツツジが満開の様子。今年は季節の進行が早いとサクラの開花をみていたが、なべて植物の生長が早い。「亜熱帯になって来たね」と言葉が交わされている。

 緩やかな斜面を登る。「山の神」のあたりで針葉樹が伐採され、広場になった地点に出る。向こうに東屋が見える。大平山頂との分岐だ。振り返ると嵐山町の市街地が一望できる。靄が掛かって遠望は利かない。山頂189mは樹林の中。大木もある。「太平山と雷伝神社」と地理と歴史解説の掲示が掲げられ「嵐山町の最高峰…槻川の流れを中心に遠山の盆地も見渡せる」と記す。

 明るい広葉樹の囲む道を南へ下る。新緑の海のなかにヤマツツジがヤマザクラと彩を競っている。槻川べりの高台に出る。大きな二階建ての展望台と東屋が設けられている。20mほど下の槻川の水量はそれほど多くない。多いとドラフティングが出来そうだねと思う。ここで屈曲する槻川に沿って大平山の西の端を北上する。ウグイスがきれいな鳴き声を上げる。ずいぶん上手になった。そこを出たところで広い車道に出て、視界が開ける。駐車場の向こうに、サクラ、ハナモモ、ユキヤナギなどの色物が背景の濃い緑と新緑の黄緑に映える。白い椿の花がぼたぼたと落ちている。電線に止まるホオジロが大きな声で鳴く。その声の柔らかさに双眼鏡をとりだして眺めてみると、幼鳥のようだ。

 日枝神社の鳥居の奥にある、高さ20メートルは越えようかというシダレザクラはもう終わっている。かすかに桜色を残し、薄緑の葉を重そうに垂れ下げている。かと思うと、その隣の民家のシダレザクラは、いまが満開の風情。小倉城跡の登り口にある何種かのサクラもいまが見ごろ。「花の寺だね」と誰かが言う。スギの林を上る。明るく開けたところに小倉城があったようだ。堀切の跡も見える。歩きはじめて2時間を過ぎている。今日は、ずいぶんゆっくりした足取りだ。春の里山だものと思う。霞んで遠望は利かないが、この里山のたたずまいをみていた城主は、「国見」を愉しんだに違いない。

 西の方、物見山を目指す。南側の斜面は広葉樹の灌木、山の北側はスギの林。枝打ちも間伐もなされている。ずっとスギの林が絶えないが、間にずいぶんたくさんの広葉樹が勢いを持っている。30年を過ぎると手入れしなくてもいいとスギを育てていた人が、いつか話をしていた。そこまでの面倒見が良かったのだろう。広葉樹が間に生えるスギ山はいい山だと林業家が書いていたのを思い出す。物見山11時40分。落ち葉がたくさん散り積もっている。みなさんあれこれおしゃべりしながら足を止めない。どこを見ても見晴らしは利かない。大日山252mの表示があるピークで、お昼にする。ちょうど12時だ。日陰が気持ちいい。kwrさんはお昼を済ませて昼寝でもしたくなったようだ。女の人たちのおしゃべりが弾んでいる。先月末の矢平山の「山行記録」の写真が急傾斜で大変だったろうと、参加できなかった人たちが口にする。参加したmsさんやkwmさんが説明している。そうでもないよと言っているのか。いやたいへんだったと言っているのかよくわからない。

 北の仙元山へ向かう。西側の広葉樹が日差しに照らされて明るい。急な斜面もなく、快適にokdさんを先頭に歩く。道は四通八達しているらしく、分岐がたくさんある。どれも「小川町→」とある。つまり里山。地元の人の散歩道のような山なのだろう。標高も300メートルに満たない。降り積もる落ち葉が土に還り、ふかふかと心地よい感触を湛えている。

 30分ほど歩いて青山城跡に踏み込む。その中央部にこの城跡の概念図と堀切や廓の位置が記されている。この山の四方に松山城の砦として築かれた趣旨も記されている。急な堀切への斜面を降る。20分足らずで仙元山山頂298m。ちょうど小川町方面の木が払われ、街が見下ろせる。大きな町になった。元気の良さが感じられる。スギ林なのに、足元に桜の花びらが散り敷いている。見上げると遥か上にヤマザクラがあるように思えるが、陽ざしの明るさにわからない。kwrさんが足元のチゴユリを見つける。白い花を咲かせている。

 と、ポンと舗装林道に出た。意外なところ出たらしく、CLのokdさんはどこに出たのかいぶかしげだ。でもいまから登り返して、ルートを探すのはいやだとmzさんは口にする。kwrさんも「いや好いよ、ここから下りましょう」と歩きはじめる。okdさんは大変恐縮している。こうして平地に出たが、このまま駅に向かうよりは「道の駅に行ってビールを飲もう」という声に元気づけられて、okdさんの当初予定の下山地へ向かう。カタクリの群生地へ近づきカタクリの花がもう終わっていると知らされて、流れるように道の駅に行ったのだが、「ビールは置いていません」というすげない返事。バスに乗って駅へ行き、ビールにありつくことにした。駅に着いたところでmrさんの脚が痛みはじめた。彼女は左脚がしびれ、ときどき激痛が走るという。精密検査を予約して受けることになっているが、それまでもじっとしているとこのまま動けなくなると思い、今日の山にも参加したのだった。歩いているうちはなんでもなかったのに、バスに乗っている間一休みしたのが災いしたのか、駅について降りようと立ち上がった時から、痛くなった。彼女はまっすぐ電車に乗って帰るという。okdさんがビールをあきらめ付き添って帰ることにした。

 彼女らを見送り、駅前の食堂でビールをあけて、無事の下山を言祝いだ。歩きはじめから6時間。26000歩。17km。高齢者登山としては、まずまず元気に歩いたといえそうだ。

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