2019年3月28日木曜日
山歩きにいい季節
山を歩いていて、暑くもなく寒くもなく、いい季節というものがあると思った。昨日(3/27)のこと。行程は7時間45分。標高差1116mを上り、1426mを下る。鷹ノ巣山1736mに東日原から登り、石尾根を下って奥多摩駅まで行くという行程。むかし雲取山に登ったとき、奥多摩駅まで下ったことがある。陽ざしを受け、東南に向かって広い尾根を下るのが快適であった思いが残る。でも後期高齢者としてはたぶんぎりぎりの行動時間。それもあって、「トレーニング山行」と名づけた。4人が参加。
奥多摩駅を8時10分にバスが出る。その次は10時台だから、山へ入るにはこれしかない。それにはわが家の最寄り駅を6時前に乗る。それにアクセスする電車がない会員から、「後を追う」と言ってきた。でも待っている余裕が、こちらにない。「待ちません。気を付けて」と話して、4人でバスに乗った。驚いた。立っている人をふくめて、満員だ。それに若い人が多い。春休みだからと聞いて、納得。でも大半の方々は川乗橋で降りた。沢を詰めて川苔山に上り、青梅線のどこかの駅に降りるルート。何年か前に、山の会でもここを歩いたことがある。
東日原で降りたのは十数人。明るい陽ざしが降り注ぐ。鷹巣谷から流れ下る川の向こうに500mほどの岩が屹立している。標高900mの稲村岩だ。その左にこれから登る鷹ノ巣山が陽ざしを受けて、大きな山体を広げている。雪がついている。姿のいい山だ。ウィンドブレーカーだけでなく、羽毛のベストも脱ぐ。ほんの三日前の日原の気温は、最高9度、最低マイナス9度。平地では雨になったからここらは雪になったに違いないと思い、軽アイゼンを用意している。用意のできたグループから出発する。8時45分。
5分ほど道路を歩いて、川へ降りる。後からくるまだ学生のような若い二人組みに道を譲る。彼らは鷹ノ巣山から浅間尾根を下るという。急傾斜の下りだ。先頭を歩くkwrさんのペースが着実。「ネコノメソウだ」と声が上がる。そうか、春の花の季節なんだと思う。ハシリドコロがこげ茶色の花を大きな葉の裏に隠れるように咲かせている。「あっこれ、ヒトリシズカよ」とまだ小さな蕾だけが何本か土から顔を出しているのを見て、kwmさんが指さす。岩がおおくなり、沢水が伏流してしまっている。大岩をぐるりと巻いて登り、尾根の北斜面を稲村岩に向かってトラバース気味に近づいてゆく。上の方から女の人の話し声が聞こえる。先行したグループだろう。
稲村岩は「危険、死亡事故が起きています」と表示があって、上らないように呼び掛けている。ほんの20mほどの高さの盛り上がりだが、むろん踏み外すと何百メートルか落ちてしまう。鷹ノ巣山へのルートは陽ざしが当たり、春の雰囲気だ。馬酔木が青々とした緑の葉を背に一杯の白い花をつけている。東斜面に杉の木が残り、ブナの木が目立ち始める。標高も1200mを超えた。この辺りで、先行グループ5人が休んでいる。女のかたは一人。この人たちも奥多摩駅に下る予定のようだ。先頭のリーダーらしき40歳代の人が、「何時ころに(駅に)着く予定?」と尋ねる。「四時ころ」と応えると「いいですね、その時間」と応じる。ガイドだろうか。
1400mほどの地点で、上から降りてくる単独行の人とすれ違った。70歳ほどか。山頂を往復してきたという。「早いですね」というと「朝早く出たから」と応え、「1600mを過ぎると雪があります。気を付けて」という話しぶりに、わが里山という響きがこもっていた。たしかに、上へあがるにつれ、ちらほらと雪が見えてくる。yさんはわざわざ雪の上を歩いて、感触を楽しんでいる。1562mにヒルメシクイノタワという地点がある。上り一方の尾根がここでひと段落するように、平らになる。「たわんでいるのね」とyさんがいう。だが上にすすむと、雪が多くなる。踏み跡のあるところは、凍りついていて、滑りやすい。kwmさんは雪のついていない枯れ草の急斜面を踏むように登っている。すっかり雪ばかりになったところで、「アイゼンをつけるわ」とkwrさんはしゃがみ込む。銘々がそれぞれ身体を安定させた位置にたどり着いて、アイゼンをザックから出す。「アイゼンだと、やっぱり違うね」とkwrさんは軽快に歩く。先頭はkwmさん。yさんが後に続き、kwrさんに私がつづいて上る。あと15分くらいかなと言っていたが、山頂まで30分かかった。12時10分着。コースタイムより20分余計にかかっているが、雪があったのだから、まずまずの歩き方だ。
山頂には、登山口で私たちを追い越していった若者二人組がいて、言葉を交わす。陽ざしを受け、眺望が良いので長居したようだ。私たちのカメラのシャッターを押してくれる。私たちがお昼にしようと座ったころに、「あっ、Sさんだ!」と声が上がる。後から追いかけると言っていたSさんがもう一人の方と一緒に登ってくる。やはり軽アイゼンをつけている。私たちより30分くらい遅く出発したはずなのに、なんと早い。「もう(山歩きは、一緒に行きたいなんて言わずに)一人立ちした方がいいよ」と話す。彼らもお昼にするという。35分も、山頂で時間をとってしまった。若い二人組は浅間尾根を下ると言って、西の方へ向かった。私たちは、ところどころ雪を残した草原のような東につづく広い稜線を下る。当然、アイゼンはとる。Sさんたちには「どうぞお構いなく、先へ行ってください」と伝える。彼女たちはさかさかと降っていった。
広い稜線、緩やかな下り。だが、雪が解けたばかりなのか踏み跡はぬかるんでいる。脇の草地を踏み歩くが、こちらは凸凹して歩きにくい。ひとたび下ったのちに上がる向こうの斜面を歩く、Sさんたちの姿見える。kwrさんが負けじと速度を上げるのではないかと私は心配したが、彼はいいペースを保って好調である。どこを何時に通過するとコースタイムを記したメモをときどき開いて、通過タイムを書き込んでいる。後れを取り返すとか考えていなければいいが、と思う。コースタイムは、自分の力がどの程度を保っているかをチェックするときに参照するのが良い。コースタイムで歩くようにするとなると、どこかに無理が生じ、それが後々、響いてくる。長い時間歩けなくなったり、脚が攣ったり、腰やひざを痛めて歩けなくなる。
道が深く掘れているところで一度、草付きの斜面を通過して、踏み跡を見失った。GPSでチェックすると左の方へ逸れている。右をみると、下の方に広い道がある。ああ、あれだあれだと、kwrさんは急な斜面の枯れ草と倒木を踏んで、降っていく。先日も、菜畑山でそういう歩きをやった。面白いことは面白いが、それをやっていると、一般道の踏み跡がどういうものであったかに頓着しなくなる。これは、道に迷う第一歩みたいなことだから、実はあまり感心しない。クセにならないように、と思う。
サンシュユやコブシ、アブラチャンじゃないかなどと、女性陣は花の見立てをしている。歩く割に標高が縮まらない。「香りがする」というので振り向くと、梅林がある。囲いをつくって動物が入り込まないようにしているのだろう。ワサビ田がある。人里が近い気配だ。やはり最終段階で、大きい下りが待ち受けている。急斜面というよりは、階段。林道に降りてからも、下の方に氷川の街並みが見える。そう言えば昔は、奥多摩駅などと言わず、氷川駅といった。サクラが花開いている。
奥多摩湖へ向かう青梅街道と日原街道が交差する三差路の手前に降り立った。kwrさんは膝がおかしくなって、歩きにくそうだ。でも橋を渡れば、すぐに駅。そう思って自分を励ましているように見える。16時45分着。出発してちょうど8時間。お昼に35分取ったから、行動時間は7時間25分。全体をみると、20分、コースタイムより早く歩いている。上々、上々。後期高齢者の山歩きとしては、遜色ない。なにより、8時間の行動時間をもてるというのは、夏に予定されている北アルプスや白山の山行には、十分な体力。いましばらくこれをつづけて、歩き続けよう。いい季節になった。
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