2017年12月21日木曜日

けっこうスリリングな下山の九鬼山縦走


  晴天が続く昨日(12/20)、山の会の月例会。富士急行線禾生駅から九鬼山を経て馬立山への縦走路をたどり、菊花山を通って大月へ下るルートを歩いた。朝9時15分ころに歩きはじめ、午後3時10分ころに大月駅に到着したから、行動時間は5時間55分。お昼に35分とったので、歩行は5時間20分。ほぼコースタイムで歩いている。平均すると70歳を超える面々だから、これは立派である。


 大月で乗り換えた富士急行線の電車は、床が板張り、昭和レトロって感じだねとおしゃべりしている。昨年、高川山を歩いたときは田野倉駅で降りる前に富士山が見えた。どっちだっけと、富士山の見える方に座席を占める。禾生駅は田野倉の次、大月から三つ目。12分で着いた。標高420m。ところどころに雲がぽっかりと浮かぶ晴天。雪をつけた富士山は東側に少し雲をかぶっている。9時16分、歩きはじめる。国道を500mほど北へ進み、リニア新幹線が九鬼山の懐からずいっと出てきたのを目前に、山の方へと踏み込む。古ぼけた標識がぽつんと立つ。朝日川の水が勢いよく流れ、正面には煉瓦造りの水道橋が、朝日川をまたいで通っている。この橋ははまだ現役のようで、豊富な水量を保っている。

 愛宕神社脇を抜け、落ち葉の降り積もる山道へと入る。kwrさんがゆっくりと先頭を歩く。okdさんがつづき、これはこれでKOコンビだというのか、mrさんが黙ってすすむ。紺場の休場686m。ここからが急登。滑りやすい落ち葉を踏み、ジグザグに高度を上げる。立ち止まって左をみると、富士山が樹々の合間から姿を見せている。雲が取れ、白い形が美しい。しばらく進むと落ち葉が亡くなり、すべしやすい砂地の傾斜になる。上から一人、降りてくる。速い。駆けるように下ってゆく。また、降りてくる三人組とすれ違う。聞くと禾生から往復しているそうだ。それにしても早い。まだ10時半にならない。そのあともう一組の女性二人連れとすれ違った。この人たちは札金から登ってきたという。今日行き交った人は、以上の6人。九鬼山は案外静かな山なのだ。

 山頂まであと一息というところに「眺め良し 天狗岩→」と書いたプラスティックの表示が木に掛けられている。その片隅に手書きで、「歩いて3分」とあったから、行ってみる。山肌から突き出た大きな岩の上が、背の高い針葉樹を避けた展望台になっている。富士山が頭頂部と西側を残して雲に隠れそうにしている。小さな山の間に麓の町が陽ざしを受けて白く輝く。そこから20分で富士見平に着く。針葉樹の間に富士山がひときわ大きく雲に隠れそうにしている。今登って来た方向への表示に「落合橋→」とある。あの、水道橋は落合橋というのだろうか。

 ほんの5分で九鬼山山頂に着く。11時。駅から1時間45分。少し広い山頂はしかし、日陰になっている。富士山が見えるように、邪魔になる針葉樹を4,5本伐ったのだろう。ご期待に添うように富士山が姿を見せる。ここからはokdさんが先頭に立ち、OKコンビとなって先へすすむ。地理院地図では北への稜線をたどる道が記されているが、実際の踏み跡は大きく東へ下り、しばらく下った後北へ西へと折れ込み、山体の中腹をトラバースするように道がつくられている。そうして、標高750mほどのところで稜線に乗る。そのトラバース道が狭く滑りやすい。ロープが設えられているから危なくはないが、ずるずると崩れているようで、いずれまた、整備が必要になると思えた。ルートのは消え残りの雪がみえ、メジロが枯れ枝に啼いていた。

 稜線に乗ったところでお昼にする。11時35分。雲に隠れていたお日様が現れ、暖かくなる。遠方に雪をかぶった山頂部をちょこっと見せているのはどこだろう? とkwrさんが見ている。方向からすると農鳥岳から北岳にかけてのようだが、ほんのちょこちょことだけだから、わからない。お昼を食べながら利尻岳の話が出る。この7月に行かないかと、私が声をかけた。登れるか不安もある。避難小屋にとまるとなると、寝袋もいる。4人は行こうと決めているが、あなたが行くなら私も行きたいとmrさんとokdさんが話をしている。okdさんは飛行機に乗るのが怖いのでいかないと固辞している。mrさんは、こういう機会を逸したらゼッタイいけないんだからと自分を励ましている。

 お昼に35分もかけてしまった。起ちあがったのは12時10分。平坦な稜線を歩く。札金を経て田野倉駅に下る分岐に出る。私たちは札金峠を経て馬立山に向かう。札金峠621mは薄暗い谷あいにある。そこから道は上りになり、馬立山分岐761mまでが急登。砂地の急傾斜が右に左に九十九折れになってはいるが、足場が悪い。稜線に着いたのは13時。札金峠から30分。コースタイムの40分より早い。先頭を行くokdさんが速さを気にしているが、mrさんが黙ってついているから、誰も文句は言わない。ほんお10分で馬立山に着く。富士山は九鬼山の陰に隠れて見えない。もう今日の富士山は終わり、と私は思っていた。

 馬立山から沢井沢の頭までもまた、滑りやすい大きなトラバースがある。なんだろうこの山の地形はと、ずうっと考えていた。沢井沢の頭から菊花山を越えて大月へ下ることにした。「okdさん、行ってよ」とkwrさんが声をかけ、彼女が先頭に立つ。okdさんもstさんも何十年か前にこのルートを歩いたことはあるらしい。その頃は道しるべもなく、菊花山に着くまでが長かったとstさんは昔を思い出している。okdさんは怖いところは速く通過するに限ると、さかさかと先へすすむ。mrさんはバランスを保つのに力を使って、ずいぶん慎重だ。急な上りがあると、その上が菊花山のように思えるが、コースタイム1時間を考えると、まだまだ先だよと後ろから声をかける。クヌギやマツの木立を縫う稜線は明るく、ところどころで、下方の大月の町が見える。でも標高は600mを越えているから、標高差は300mほどありそうだ。50分ほど過ぎたころ大きな岩の積み重なった地点に来た。菊花山の山頂644mのようだ。14時22分。山頂から太陽の方向に、逆光の富士山が姿を見せ、いや良かったと眼福に浴していたのだった。

 この岩をみて、九鬼山からこの菊花山にかけての地形的特徴がわかったような気がした。たぶん砂岩の堆積がこの地をつくり、それが崩壊して山体の滑りやすい砂地をなしているのだ。そこに木が生え、葉を散らし土をつくり、そのようにして保たれている山体が、それでも日夜の風雨に削られて急峻な砂地の傾斜をつくり、歩きにくい山肌をなしていると思えた。この印象は、菊花山から大月への下りが、文字通り実証するように思えた。ロープをつけ鎖を張っている下り道は、水平距離500mで垂直高度300mを降る傾斜。これは平均31度の角度にあたる。kwrさんが「もういい加減にしてもらいたいね」と言い出したころ、やっと下に神社の社のような小さな建物がみえ、先に降り立ったokdさんが上を見上げて「ここで終わりみたいね」と声をあげた。神社の鳥居の下は墓地。その脇は国道20号線が走っていた。

 こうして、大月駅15時19分発の特別快速に乗り込んだのだが、「車体に異常を感じた」ということで停車し、ついには特別快速が快速に変更になったりした。だが、大月駅でビールを買いこみ、「忘年会」をしていた私たちは、電車の遅れを気にも留めず、気持ちよく帰途に就いたのでした。

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