2019年7月27日土曜日

団地コミュニティの異変


 明日から山に入るので、このところ準備に忙しない。といっても、用具の準備ではない。歯医者に行ったり、留守中の用件を片付けたり、要するに身の回りの始末をそれなりにしておくというのである。昨日歯医者に行こうと外へ出たら、団地の方から「今朝方、何かあったのですか?」と訊かれた。理事長を務めて以来、顔見知りが増え、このように声を掛けられることが多くなった。


 そう言えば、朝4時ころ窓の外で男が何人かワイワイ喋っていたのに気づいた。うるさいなあ、朝から、と時計も見ずにいたのに、どうして時刻が分かったのか。新聞配達のバイクの音が聞こえていたから、3時半から4時のあいだと思っていた。しばらくしておしゃべりは止んだからまた寝入ってしまった。声をかけた団地の方は、消防車とかパトカーも来ていたんじゃないかしらという。そうして、向かいの棟の何階かの家のベランダの窓を開けようと消防署員が階段通路から入り込もうとしていたというのだ。へえ、そうですか、何にも知りません、熟睡していたのですね、と受けて、どなたか救急車を呼んだけれども、玄関の施錠をしたままだったのだろうかと思うともなく考えていた。

 歯医者の帰りに団地事務所に寄って話を聴こうと思ってはいたが、歩いているうちにそれを忘れてしまっていた。今朝ごみを捨てに外へ出たら、ちょうど一年ほど一緒に理事を務めた方と顔を合わせた。聞いてみると、やはり情報通の彼のこと、よく知っていて、「聞いた話ですよ」と断って聴かせてくれた。

 昨日(7/26)早朝の3時半ころ、新聞配達の方が階段を通っていて「異臭」に気づいた。ドアの新聞投入口に近づいてみると、明らかにここから臭う。彼はすぐに119番に電話をし、やってきた救急隊員が事態を察知、この部屋に侵入しようとしたというのだ。彼の世情通の元理事は3階に居住しているから、向かいの棟の一部始終が手に取るように分かったという。わが家の正面の家だ。

 こういうことだったと、以下のような顛末が分かり、笑い話となった。

 彼の家の方は海外への出張で3カ月ほど留守にしている。ああ、そういえばこの方、じつは今年の理事。留守がちになるので、その間は階段の理事仕事を昨年度の理事が引き受けることになり、(役員交代の時期にすでに出張していたので)当時現役の理事長であった私にも、その話は伝わってきていた。彼の人は出張に際して、家の電源を全部オフにして出かけた。ところが、冷蔵庫の電源もオフになったものだから、その中に入れておいたキムチが、すっかり熟成してか腐ってか、強烈なにおいを放ち、それがついには、玄関の外にまで臭ってくるようになって、新聞配達のお兄さんに伝わったというわけ。私が耳にしてうるさいなあと思った男たちのおしゃべりは、この「異臭」が独り暮らしのこのうちの方の「異変」かどうかと思われたのだ。むろん独居老人というほどの方ではない。

 救急隊員は浸入するのに、北側のベランダから入ろうと階段通路の壁を伝た.ってベランダへあがり、網戸を外してはみたものの窓の施錠を外すのに手古摺ったらしい。どうにかして鍵を外して侵入し、上記の事態が分かったそうだ。

 で、どうしたんだろう。臭いをそのままにはしておけないし、海外の連絡先は(たぶん今期の理事長も)聞いてはいないだろう。また、キムチをそのままにしておいたのでは、ことがおさまらない。こういうとき、救急隊の権限で措置できることってどこまでなんだろうと、私の推測は飛ぶ。キムチを棄てるわけにもいかず、電源をオンにしておくわけにもいかないにちがいない。消臭措置をして、緊急にそのような措置をとったことを書き置いて、帰国したら連絡してくれと、警察か救急隊の連絡先を記し置いたか。

 新聞配達の方がコミュニティの一角を担っているという話は、何年か目から耳にしていた。だが、団地の(同じ階段の)居住者が気づかなかったろうか。気づいても、知らぬふりをしていたのだろうか。それとも、私のように年を取ったご近所の方は臭いを嗅ぎ取る力が失せて、若い新聞配達員だからこその、発見だったのか。コミュニティに鼻の力も問われるのかと、思った。

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