2020年3月15日日曜日
研究者の走る速さは驚嘆するほどだ
新型コロナの関する首相の会見を聞くと、こんな雑な対応をするのは政治家ゆえなのか、この人物の人柄なのかと、慨嘆を交えて感じないではいられなかった。私自身がそれほどモノゴトに丁寧に応対してきたわけではないから、他人を謗るわけではないが、民主主義を標榜する一国のトップがこんなに雑では、日本国民も相当バカにされていると思わないではいられないのだ。
政府が提示したり指示したりする必要性はわからないでもないが、どうしてそうするのかを説明できないのは、なぜなのか。国民に協力を求めるのは当然であろうが、なぜそういう協力を求めるのかが、的確に説明できないのは、どうしてなのか。もちろん、「いまは、わからない」という実情を話すことも説明の一つになるが、そういう言葉を使いたくないらしい。そういう感触をこちらが勝手に受け止めろということだとしたら、そう言い言葉にしたらいいと、思う。首相の判断の根拠に、私たちと同じ「直感的な」事態認識しかないような気がして、お粗末だなあと思ってやりきれない。
そう思っていたら、世界中から新型コロナウィルスのゲノム情報を集め、RNAゲノム解析をしてその構成の樹形図をつくり、発生源を突き止める研究が行われていると、ジャーナリスト・末家覚三が週刊文春デジタル(2020/3/14)で報告している。
それによると、こうだ。
(1)日本にあるゲノムは10だが、5系統に遺伝的には分類できる。
(2)それらはいずれも中国でみられるものだが、その一部は、交通を禁じている湖北省や浙江省からではなく、広東省に発するものである。
(3)別系統をたどると、シンガポールで1月中下旬に発生したものがあった。
(4)ヨーロッパ各地の樹形図も解明されつつあり、ドイツでは、最初の感染源者「ペイシェント・ゼロ」まで行きついている。
「ドイツでは1月24日、上海のビジネスマンに会ったドイツ人ビジネスマンが発症。このビジネスマンからウイルスがミュンヘンで広がった。当初はドイツ政府の素早い隔離などで感染拡大は食い止められたかにみえたが、実はこのウイルスが2月に入ってブラジル、フィンランド、イギリス、メキシコ、そして感染が爆発的に広がるイタリアに広がっていたことが明らかになった」
こうした世界規模の研究が行われているのは、アメリカなどの研究者がつくるnextstrain.org。
「新型コロナウイルスのゲノム情報を世界中から集め、その近似度に応じて樹形図に表した。研究成果は、ほぼリアルタイムでインターネット上に発表されている」という。
こういう話を知ると、ホッとする。漠然と専門家がいろんなことをメディアでしゃべっていて、どこに、どういうふうにアプローチしていけば、「ほんとうのこと」に近づけるかと不安を感じている。そこへこんな話が舞い込むと、専門家がやるべきことをやっているという「社会的信頼」の裏付けになるからだ。これは、私の「せかい」への信頼感にもなる。
末家覚三は、新型コロナウィルスがまだそれほど変化していないから、それなりに抑え込みに成功していると見ているようだが、じつは私が首相に期待しているのは、上記のような専門家の動きがあるという「事実」の公表なのだ。
たぶん、上記の(3)のようなことがあるから、中国政府は「ウィルスの発生源は武漢ではない(アメリカから持ち込まれたものだ)」と公言しているのだろうが、そういうことも知らないとただ単に中国政府の「妄言」としか受け取れない。いや、正確にいうと、それを知っても「妄言」だと思うが、ただ単に責任転嫁を喚き散らす無茶苦茶政府というガキのような受けとめはしない。ちょっと足掛かりを見つけるとそういう「陰謀論」を持ち出すのは、中国政府自身がそのような「陰謀論」的振舞いをあちらこちらでしているからに違いないと、わりと正確に「理解」できる。そういう正確な理解が国民の民度を上げるうえでも欠かせないことなのだ。
政治家がバカであることが、国民がバカであることの証になる。もっと政治家たちには「選良/エリート」らしい振る舞いをしてもらいたいですね。
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