2017年2月11日土曜日

意外にガラパゴス、で長生きするのか


 姪っ子に娘が生まれた。といっても第二子。上も女の子だから、仲のよい女同士になるといいと思う。それは上の子にとっては何よりの贈りものになろう。妹の誕生は、同時に姉の誕生でもある。兄弟姉妹というのは、カインとアベルの物語にもある通りに競争的関係にもなるが、模倣し模倣され、保護し保護されて育つという人として成長していく過程に欠かせない要素を間近に持つことになる。上の子が必ずしも優越的にだけ位置しているわけでもない。上の子を模倣して下の子が磊落に振る舞い、上の子はそれを見て己自身にかけていた制約の殻を破るということもある。人は鏡に映して己をかたちづくるから、ひとりの「こころ」も周囲によってかたちづくられていく、いわば集団的無意識の造形物だと言える。


 お祝いに病院へ駆けつけた。母子ともに健康。新生児室の窓ごしに観る新生児は、しかし黒い髪の毛が耳にかかるほどあって、誕生三日目とはとても思えなかった。この姪っ子の上の子・姉はアルゼンチンで生まれた。日本でいえば妹も同じ冬に生まれたから「勘違い」されるのだけど、姉は夏っこ、妹は冬っこなのよと、姉妹の母親は笑う。そうか、季節は日本と逆だから、じつはいろいろな違いがあると、話しが転がった。アルゼンチンでは母子手帳がない。どこかで母子手帳の外国語版(スペイン語と日本語が併記されている)を買い求めて、向こうの医師に書いてもらったという。ところが「日本は遅れてるんよ」というので驚いた。母子手帳に記載された予防接種などが、日本はずいぶんと期間をかけて少しずつ接種するようになっている。だがアメリカはじめアルゼンチンでも、さっさと接種するものは接種するというふうにしてしまっている。だから、彼女がアルゼンチンに滞在しているとき、やってきた日本人の一人がはしかにかかっていたことがわかったとき、アルゼンチン中の新聞が大見出しで「はしかが発生!」と大騒ぎになったそうだ。つまり彼の地では、はしかなどはほとんど絶滅したと考えられていたのに、えっ! 日本からやってきた「はしか」ってわけで、ほとんど未開地を見るような日本評だったという。意外なところで日本がガラパゴスだったとわかる。

 どうして? どっちがいいの? と私が聞くと、姪っ子は、(どっちが)いいか悪いかはわからないけど、いろいろと利権が絡んでるんでしょ、とケロッと切り捨てた。見事な切り口。この肝っ玉の太さがあってこそ、実母も義母も支援に行かないのにアルゼンチンで出産し、育て上げていま日本に帰国しているわけである。二人の子供の母親になって、間違いなくおっかさんになったと感心した。

 このお祝いに一緒に行った弟の嫁さんが、この子(女の新生児?)たちの半数は107歳まで生きるそうですよと話をする。えっ? 平均寿命ってこと? て聞くとそうではない。半数の最長寿命が107歳ということか。いま女性の平均寿命は85歳ほどだそうだから、その頃の平均寿命は95歳ほどになるのかもしれない。そこまで健康で死ねるように頑張るのは、これはなかなか大変な苦行になるなあと思ったが、後期高齢者に年が近くなると、喪中や逝去の話ばかりが降ってわいて、ただただ、おめでとうとお祝いをすることがなくなっていた。良かったねえ、そういうめでたいことがあるなんてとよそ事ながら嬉しくなったのであった。

 姪っ子の父母は二人とも健在。孫娘が107歳、つまり西暦2124年まで生きるというのであれば、せめて、成人するとか結婚するとかまでは爺婆として頑張らねばなるまいと、祝電ならぬお祝いメールを打ったところである。

0 件のコメント:

コメントを投稿