2017年2月23日木曜日

道なき道の山歩き(1) 中禅寺湖北岸・高山の峠越え


 春が近づいて関東地方に低気圧が到来するようになり、4日おきに雨が落ちる。山沿いでは当然、雪になる。20日から21日にかけての大雪で30センチの積雪があったと奥日光湯元で聞いた。その21日から昨日まで、奥日光のスノーシューハイキング。山の会・山歩講の月例山行である。

                                                     
 21日、あさ9時40分頃に竜頭の滝バス停で落ち合う。私とkhさんはスノーシューを借用して車に積んでいった。車の通る舗装路面にも雪が積もり、圧雪されている。スノーシューを装着している私たちのかたわらで、大型のゴミ収集車が坂道を上がれず、タイヤ周りの雪を取り除いたりして走りはじめるが、空回りしてまた、ずるずると下へ滑り落ちる。小雪が舞っている。

 10時、除雪されて積みあがっている雪だまりを踏み越えて、中禅寺湖北岸の周回路へ入る。一昨日までに降り積もった雪は凍りつき、その上に昨夜来の雪が数十センチ積もっている。スノーシューも新雪に隠れる。ことに斜面に来るとストックも半分以上雪に埋もれる。周回路は高山の山体が中禅寺湖に下り降りる斜面を削るように上り下りしているから、階段の上下もある。そこへ古い雪が凍りついてあるから、スノーシューの爪先のエッジを立てるようにして上がる。降りるとき大きなスノーシューの踵の方が邪魔になって狭い階段に乗せるには横にしなければならない。横にすると、一歩を二段づつ下りないと左右の足が階段を踏めない。夏道のときは、湖側につけられた木柵のかたわらを踏み通るのだが、斜面から崩れる雪で斜めになっている。しかも木柵についている一番下のところは、雪が湖側へ落ちてしまっている。斜面のトラバースをするようになる。木柵の1メートルほど高いところの斜面をトラバースするから、ひときわ高度感もある。しかも踏み込んだ脚が凍りついた雪に触れるとずるずると滑り落ちる。新雪が溜まっているところは、踏んだ脚がずぶずぶと埋まって滑る。一歩一歩踏み固めるようにして何十メートルかのトラバースをするところが、何カ所もある。mrさんが悲鳴を上げる。khさんがすぐ脇に来て、足先のエッジを聞かせるようにレクチャーする。それでも高度感が怖いから、へっぴり腰。するとますます重心が保てず、身体は不安定になる。私のすぐうしろのmsさんはさほど苦労することなくついてくる。後続を待っている間に「楽しいでしょう」と声をかけると「愉しむ余裕などありませんよ」と返ってくる。

 12時、こうして熊窪に着いた。夏道のコースタイムは1時間半だから、いいペースで歩いている。雪はいっそう強くなり、北風を受けて吹雪のようだ。大きな木陰で風を避け、二カ所に分かれてお昼にする。先週機能しなくなっていたスマホを取り出してチェックする。今回は動いている。いつもスマホを出して現地天気予報を観ているmsさんが「午後には晴れ間が出るって…」と元気をつける。

 12時25分、高山からの峠に合流すべく、上りが始まる。深い雪がラッセルにこたえる。でもルートはまるで分らないから、私が先頭を外すわけにはいかない。ときどきスマホを開けて、事前にチェックしたルートとGPSの現在地表示がどれくらいずれているかをみる。順調だ。ただ雪の積もりぐあいが吹きだまっているところと吹き飛ばされているところがあるから、選びながら前へ進める。一歩がしんどい。ああ、これがつらくなったら、私の山案内は終わりだなと思う。先週私が撤退したところに来た。右か左かで迷ったところは、地図を見れば歴然、右の沢にも入らず、沢横の急傾斜面を踏み上る。途中で、夏道の古い標識が頭だけを出している。そうか、ここかと、ルート選択に自信が湧く。

 皆さんに「あと標高差で100m上るだけです。この急斜面を約300mほど歩けば峠に着きます。」と発破をかける。雪が積もって大きくなった倒木を迂回して登るところで、踏む雪が崩れ、一歩で20センチも体が上がらない。ストックを短く持って雪に突き立て、身体を引き上げる。mrさん、kwmさん、swさん、kwrさんたちがつづいてくる。下からkhさんが「ザイルを出して!」と私に声をかける。ザイルを出し、木立にフィックスして下へ降ろす。mrさんがザイルにつかまって崩れ落ちた斜面を登ってくる。ストックをもっていない。私のストックを預けて、先に上へあがるようにいう。otさんとkhさんが上がってくる。ザイルを仕舞い、先行隊の踏み跡を追う。これは楽だ。

 傾斜は変わらぬほど急だが、倒木や吹き溜まりがないから、直登してもさほどむつかしくない。何人か先頭が代わってラッセルをつづけている。そうなんだ、誰もがこうやって交代できるんだと、安心する。と、先頭にswさんが「まっすぐでいいんですか?」と聞く。高度計を見るとあと標高差30mほどで峠と分かる。斜面の50mほど先にある倒木を指して、「あの高さまでです。あれに近づいてから斜め左へ登って行けば、峠がみえるはずです」と見当をつける。気がつけば、陽ざしが背中に当たっている。見上げると青空が見える。峠がみえるところで、先頭をkwmさんたちに行ってもらい、私は最後尾のotさんとkhさんを待つ。otさんは明日で76歳。この山の会の最高齢。誕生祝の山歩き。彼が歩いている間は、この会をつぶせないと、日ごろ私も思っている。

 熊窪から1時間で峠に着いた。夏道を歩くより20分ほど余計にかかったが、雪の深さを考えるとまことに順調だ。「ここからは下りばかり」と聞いて、元気が戻ってきた。50mくらいは広い急斜面、下の平らな平面が目に入るから、怖さがない。銘々がまっすぐ下ったり斜めにおりたり、新雪を踏んで下る。下りは苦手といつも言っているmrさんも、何処でも歩ける雪面をジグザグに選びながら下ってくる。新雪は急斜面でもスノーシューをしっかりと受け止めてくれるから、重心を崩さななければ心地よい。こうして平地に降り立つ。ミズナラの林であったものが、戦場ヶ原に近づくにつれて、シラカバとカラマツとズミの林になる。先頭のkwrさんがときどき振り返って、「まっすぐでいいの?」と聞くように私の顔を見る。頷くだけでどんどん前へすすむ。シカ柵に突き当たる。扉があかない。降り積もった雪が邪魔をして手前に引く扉が動かないのだ。kwrさんが雪を掘っている。下の雪は凍りついている。、kwrさんがストックの先で掘り崩し、私がそれをどけるようにして、かろうじて人が通れるくらい隙間をつくることができた。手前に引く扉でよかった。もしこれが向こうに押す扉だと雪が取り除けず、通れないことになってしまう。

 冬場は運航していないバス通りに出る。小田代ヶ原へまわるのを止めて、赤沼に向かう。除雪してないから、スノーシューがちょうどよい。湯川の流れを渡ったところで、今日はまだ誰も踏んでいない湯川沿いのルートへ踏み込む。赤沼に15時着。お昼を入れて5時間の行程。良い歩きであった。

 16時に湯元の宿に着く。風呂に浸かって汗を流して温まり、17時過ぎからワインを飲みながら2017年度前半の「日和見山歩」のプランを検討する。5人の担当者から10案が提出され、月々の山行計画を決めていった。(つづく)

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