2018年8月26日日曜日

よく体を動かすという献身性


 今日は防災訓練。17地区自治会の200人ほどが集まって、なかなか盛況であった。

 昨日、総務係の私は「前日準備」のために避難所へ行った。集合時刻の15分前に着くように行ったのに、すでにブルーシートは広げ置かれ、位置調整をしている。気が早いというか、「(集合時刻を)決めた意味」を無にするような振舞いが、ここでも幅を利かせている。それでも、打合せのときに配られた「マニュアル」に則って、シートとシートの幅は1m20cmと、メジャーで測かる人がいて、動かす。大きなシートだから四人がかりで動かさないと皺になる。こうして、置いたシートを養生テープで止めていく。むろん私も、一員として作業をしている。ところが、タオル鉢巻の職人風情の60年配が、「ここ広すぎるよ」と言いながら、勝手にどんどん配置を変えてしまう。この人、何なんだ? と私は思うが、他の人たちは黙ってそれに従う。メジャーで測っていた若い人も、文句も言わず、付き従って引き続き仕事をしている。私は(なんだ? こいつ)と思うから、それ以降は鉢巻おやじの動きをみているだけにした。この人のことを、Yさんと呼んでいるから「マニュアル」の欄を見ると、総務班の班長のようだ。なるほど、古いタイプのヒトだと思う。率先垂範、身体を動かすことを厭わない。総務班という役員の長なのだから、どんな仕事がどうあって、誰が何をやるという采配を揮えばいいのに、そうはしないで、黙々と自分で動く。体育館のシートも、1m20cmという距離は役所のデスクワーク。その幅をとると設計図通りに体育館が使えない。鉢巻おやじの手直しした方が間違いなく使い勝手がいい。つまり、勝手知ったるこの人がやることが理に適っている。


 そういう感懐を、夜、近隣の知り合いと飲みながら話をしたら、「ああ、Yだね。あれは市議会議員だよ」とこともなげに言う。地区の名士らしい。そうしてこの名士は、じぶんで取り仕切るばかりか自分の身体を動かすことを第一信条にしているかのように、人に何かを指示するようなことはせず、全部自分で動く。まるで、現場の指揮をとる軍曹のようなものだ。いや軍曹の方がまだ、部下に対する指示を怠らない配慮がある。彼はそれもしない。まず隗より始めよ、だ。そして薫陶を垂れるでもなく、人がついてくることを当たり前と考えている。だから、ひと段落ついて、役員の一人が「もう帰っていいですか」と訊ねても、知らぬ顔をして自分の関心に没頭している。その話を聞いた私の近隣の知人は、「ああ、彼は耳が遠いんだよ。聞こえてないんだね」と、解説する。ハハハ、悪い人ではないが、リーダーじゃないね。そう私は思った。

 ところが今日、鉢巻おやじが避難所全体の司会進行を務めている。それがなかなか堂に入っている。声も張りがある。メリハリも付ける。なるほど彼は市会議員だったんだと思う。こういうリーダーシップというか、現場力を発揮する世話役がいるんだと感心した。ま、古いタイプって言えば古いが、アナログなリーダーと言えようか。地区の行事にはふさわしいのかもしれない。

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