2019年4月20日土曜日
トレーニング山行の教訓――総合力
3月になって「トレーニング山行」を行っている。念頭に置いているのは8月の北アルプス表銀座縦走5日間。先日の山行記録にも記したが、トレーニングと言っても「鍛錬」ではない。後期高齢者という、この歳になって鍛えて、今より強くすることは望めない。筋肉もそう、呼吸器もそう、循環器も消化器も現状をそこそこ機能させるのが精一杯。だから、「現状」を意識する機会としてトレーニングをしている。
3/13赤鞍岳と菜畑山、3/27鷹ノ巣山と石尾根縦走、4/3難台山と吾国山、4/16-17丹沢三峰と丹沢山・鍋割山と歩いて来た。おおよそ6時間~7時間半の行程、最大標高差は700m~1460m。表銀座の初日に登ることになる北アルプス三大急登と呼ばれる合戦尾根の標高差が1250mだから、まずその程度がどれほどのものか見ることはできた。だが山のルートにアップダウンはつきもの。累積標高差は最大標高差では測れない。連続する5日間の行程もまた、疲労の蓄積と回復の度合いをふくめて、みておかなくてはならない。
赤鞍岳の厄介さを上ったことが(たぶん)合戦尾根に活きるであろう。標高差は700mほどであったが、ほぼ急斜面の連続。鷹ノ巣山への1100m、丹沢山への1250mよりも手ごたえというか、脚ごたえを感じた。ふくらはぎへの負担が急激にかかる。それに比して鷹ノ巣山や丹沢山の登りは太ももに負担がかかった。その違いが何に拠るのか、正確にはわからないが、斜面の角度と連続性とすべりやすさにあるのではないかと、私は考えている。むろんいずれも、参加した人たちはクリアしたわけであるから、本番の心配をしているわけではない。だが(たぶん)限界に近い感触を味わって歩いていたと思う。この筋力を保つことが肝心だ。
下りにおける脚力はどうだろうか。kwrさんは下りが応えるという。歩き方も関係するかもしれないが、それはたぶん、いつだって下りは疲れが溜まってきたころに向き合う歩行だからだと私は思っている。つまり、上りで頑張りすぎた筋力が下りでへこたれてくる。表銀座は燕山荘に上がってからは主として稜線歩きになる。そういう意味では、西岳から槍ヶ岳へのアップダウンが厳しくはあるが、下りが身に堪えるのは槍ヶ岳から徳澤への標高差1450m、5時間余の行程になろう。もちろんそれだけをとりだせば、石尾根の下りも塔ノ岳からの下りもこなしているから心配はない。だが、行程4日目の疲れの蓄積がどれほど回復できているか。逆にいうと、回復を図りながら行程を緩やかに歩く工夫が、この先の課題。どうしたらいいか、そのあたりを細かくチェックしながら、この先のトレーニングをみておかねばなるまい。
呼吸器系は、去年に比べて良くなった。ほぼ心配がない。ただ、消化器系がちょっと心配になる気配もあった。高山病の症状は、弱いところに発現する。甲斐駒ヶ岳を歩いたとき、胃に現れた場面もあった。吐き気がする。食べられなくなる。それと似たようなことが、丹沢でも起こった。お酒が過ぎたからだとkwrさんは指摘していたが、そうかどうかは、わからない。私は逆に、お酒が夜の睡眠導入的役割を果たしていて、翌朝の元気になる。というよりも、こういったほうが正確か。お酒を呑んでそれを吸収するのにエネルギーを費やすと、眠れなくなる。食べられなくなる。軽く飲む程度にしておかないと、近年は身に堪えるようになった。この辺りが私にとっての課題のように思う。胃の心配よりも、睡眠の確保だ。そこが大きな回復力になる。丹沢山の場合、ほぼ10時間ほど睡眠時間をとっている。それが翌日の回復になった。お酒を過ぎると身体がほてって眠りにつけなくなる。
水分の摂取と循環も重要だ。私は上りであまり水を摂取しない。せいぜい1リットルほど。だが1日の行程が終わってから翌朝までの夜間に500㏄の水分を、夕食・朝食時の水分摂取とは別にとっている。これをしないと翌日の排泄も順調に運ばない。心臓の心配はそれほどしていない。少しばかり鼓動が乱れることも感じないわけではないが、ほんの一瞬。すぐに呼吸の調整で落ち着くから、その両者のかかわりを意識しておくことが大切と思っている。
kwrさんが「総合力なんだね、山歩きって」といっていたことが印象に残る。まさに、そうだ。自分をつかみ、弱点は弱点として意識して(ほかの手立てを講じて)補っていく。日ごろの、体と心、つまり身の習慣が整っていなければ、総合力が安定しない。いつだったか「風呂桶理論」というのを紹介したことがある。風呂桶の水は、風呂桶を組み立てる板一枚一枚の、一番低いところまでしか溜まらない。つまり総合力は、一番力の弱いところまでしか発揮されないということを意味している。そういう意味で、高齢者の山歩きは、これまでの人生の総合力が問われているってことになる。
おお、コワ!
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