2019年4月21日日曜日

伝えるということ


 団地理事会の役割の一番大きいことは、やはり修繕である。2022年に竣工する予定で、給水管・給湯管の更新工事のプランニングに取りかかる。そのはじまりのところで、次の年度の理事会に引き継ぐ。修繕専門委員長は、修繕専門委員会で型どおり引き継ぐというのに懸念を覚えたのであろう。主たるメンバーで集まって、進展の現況と今後の進め方の立案していることを文書にし、齟齬がないように説明し、やりとりをした。約2時間。それが昨日のこと。


 今日は定例の修繕専門委員会。ここ数年来問題になっていた、ある号棟4階居室の水漏れ原因が判明し、修復工事も終了したと、委員長が報告した。昨年の6月に引き継いだとき私は、つい最近判明した事故だと思っていた。ところが委員長の話だと、もう何年も前から訴えがあり、大規模修繕のついでに水の沁み出るコンクリートをはがしてみたりしたところ、中にポリウレタンの廃材のようなものが詰め込んであったりして、なんだこれは? と、疑念が広がったところで終わっていた。だから昨年の修繕専門委員会でも問題になってはいたが、大規模修繕などほかの事業があったこともあって棚上げにしてきたようであった。今年の委員長はそれに取り組んだ。秋に業者が「わからない」といい、予想される漏水原因の一つひとつをつぶしていくことになった。そして上階のベランダに設置してある給湯器の根元から水が入っているのではないかと仮定して、その根元に水を溜めチェックしてみたところ、間違いなくほんの何十分かののちに下階の壁に水がぽたぽたと落ちてきた。これが原因と決定するのにそれほどの曲折はなかった。今年の1月のことであった。

 まず上の階のベランダにある給湯器の何本かある配管をまとめて防水している根元部分を修復しなければならない。何回か樹脂製の被覆をし、水を溜めて漏れるかどうか診てみるが、なかなかうまく防水できない。やっと先週になって、防水が効くようになり、下階の部屋の修復に取りかかった。それがやって織終わり、委員長は安堵の胸をなでおろしたのであった。

 しかしなぜ、その一戸だけに雨が吹き込んで漏水することになったのか。そのことは、何度か修繕専門委員会で問題になり、おおむね解明されていた。じつは給湯器の型と設置の仕方に問題があったのだ。建築当初から設置されていた給湯器は背板が全部覆われていたのに、新しい方の給湯器は上半分しか背板がつけられていない。なぜ下半分が開いているのかはわからないが、たいていのメーカーは、小型化に伴って付けていないのだそうだ。でも、壁に背をつけるように設置していれば、そちらから雨が吹き込み心配はほぼない。ところが、住戸の方によっては、壁が背よりも狭く、設置しなくてはならない。つまりベランダの低い壁を背にして設置するから、風雨が強いときなどには15センチほどの隙間から雨が吹き込む。その雨が吹き込み、雑な給水管・給湯管の管の防水覆いをしたために、管の合間から水が染み込み、下階の居室の壁に滲出したというのだ。

 当然、同じタイプの住戸は、今後、そうした事故を起こす可能性がある。そう考えた同タイプの住戸に住む修繕専門委員は、「今回の顛末をまとめて、注意を呼び掛けることをしてほしい」と発言したが、委員長は「そういうことをするつもりはありません」とにべもなかった。どうして? 委員長は、給水官・給湯管更新工事のプランニングですっかり力を使い果たしていたのだ。だが、ほかの委員は、どうして? と疑問を抱えたまま黙ってしまった。

 仕方がない。素人の私が(理事長だからという立場を背景にして)、簡単な文書をつくりましょう。原因が判明したことを伝え、注意を呼び掛けます。上階戸の対策は下階戸への被害を予防するためだから、原因責任を負うことになることを明記する。ただ、同タイプの住戸の方々が何に注意したらいいのか、それにはどうしたらいいのかを提示する必要があります。保険に入ることとか、背板をつけることを提示しますが、具体的にどこへ話をもっていけば背板が着けられるか、いくらくらいかかるか、などを知りたい方から問い合わせもあろうから、それに応えられる準備はしておかねばならない。それを、委員の一人にお願いすることして、会議の進行を促した。私たちの後を引き継ぐ理事候補たちは、「ぜひともそうした文書をつくってください」と歓迎している。

 午前中の会議が終わり、お昼を済ませてから文書を作成した。作成しながら、水漏れ住戸の固有名を特定してお知らせする必要はないことに気づいた。「○号棟の4階住戸の水漏れ」と「その上階戸のベランダの給湯器根本の防水」と、一般化しながら、しかし、給水器の設置が特別になっている住戸タイプは明示し、しかも、たいていの居住者は自分の住戸がどのタイプかを気にしていないはずだから、○号棟のどことどこ、×号棟のどことどこと、これは明記した。55戸もある。

 「ご注意いただきたい」というのも、何に注意する必要があるか。まず、背板が全部ついているかどうか、給湯器が壁に並行しているか垂直になっているか。そしてもうひとつ、居宅の北側の居室の壁から水漏れが起きていないか。

 そのうえで、水漏れが起きた時の責任所在があること、そのために保険に入っておくことが一つの対応策。そしてもう一つ、新たに給湯器を購入するときは、背板をつけるようにすること、もし現在器に背板をつけるとすれば、どうしたらいいかは、まとまり次第お知らせする、と。とまあ、こんなことを記して、A4判一枚にまとめた。

 会議で話していた「水漏れの顛末」とはまったく別の文書になってしまったが、「注意喚起と対応策をとる呼びかけ」として伝えたいことは、これに尽きよう。皆さんに手を入れてもらおうと、送信した。あまりのあっけない内容に、修繕専門委員長は、驚いているかもしれない。

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