2019年5月24日金曜日
まるで開拓期の山? 箱根・白銀山
昨日(5/23)、好天の箱根湯本に足を運んだ。白銀山。目にした「山行記録」には、全行程6時間45分、道が不明瞭、藪山と記している。なるほど、国土地理院の地図にも登山道は山頂までしか記されていない。山頂には「←150m箱根ターンパイク」と、もうすっかり崩れて文字も読めないほどの板の標識が地面に置かれていた。
新宿を7時に出る小田急線のロマンスカー。ネットで座席を確保しているから、そこで合流。車両の半分ほどしか座席は埋まっていない。箱根湯本までの約1時間半を、今日の行程を地図で確認し、来月の袈裟丸山へのアプローチと登降コースを話し合う。kwrさんは、一番行程の長い7時間45分のルートがいいと話す。ずいぶん変わったものだ。1年足らず前、利尻岳に登る計画を話していたときには、果たして7時間の行程を歩けるかどうかと心配していた。
8時半、箱根湯本駅から歩き始め、白銀山登山口に向かう。二つ川を渡り、山への傾斜のきつい舗装路をスマホのGPSで現在位置を確認しながらすすむ。この辺に登山口があるはずとみていたのに、30mほど引き返す。私有地のように鎖を張った下りの坂道が入口であった。ここで装備を整え、kwrさんを先頭に出発したのは9時。湯元の駅に帰着するのは、15時半ころと読む。
ところが小さな川を渡ってすぐ、行きどまりとなる。20mほど引き返して登山道を見つける。背の高い草に覆われて、登り口が見なくなっている。その上は竹林。踏み跡をたどるようにして進む。kwrさんが立ち止まる。「道がない」と。GPSをみると、大きく回り込む登山道からはずれている。引き返すよりも、竹林を上ってルートの合流しようと、見当をつけた方向へ上る。「おっ、タケノコだ」と声が上がる。頭をにょきっと10センチほど出している。いつしかスギ林に変わっている。ルートにだいぶ近づいているはずなのに、それらしい確かさがない。やっと、いかにも「踏み跡」というのに行き当たる。GPSも地図上のルートに乗った。
いつのまにか標高406mのピークを過ぎている。尾根の左側がスギの林で鬱蒼として暗い。右側が落葉樹の明るい樹林である。ルートは暗い樹林を辿り、わずかの落ち葉と枯れ枝が散乱し、歩きにくい。標高700mを過ぎたあたりで、ヤマツツジが陽ざしを受けて際立つ。いつしか緑に覆われた道を歩いている。先頭のkwrさんが道を見失う。スマホをとりだしてみると、ずいぶんルートから外れて、別の尾根筋に踏み込んでいる。引き返す。GPSをみながら引き返し地図上のルートへとショートカットを試みる。30分くらいトラバースしてルートに乗る。と、木の幹に小さく「三所山」と書いたプラスティックが縛り付けてある。時刻は11時半に近い。登山口から2時間とあったから、途中の逸脱をふくめると、三所山でも不思議はないが、標高は830m。「山行記録」には「やぶ」と記されていたピーク。山渓の「東京周辺の山350」の三所山は標高904mになっていた。どちらが正解なのかは、わからない。白銀山までの45分というコースタイムが答えを出してくれると考えながら穂をすすめる。
kwrさんが白い卵のようなものが数十個、地面の腐葉土の上に落ちているのを見つける。ストックでつついてみる。「固いよ」という。動く気配はない。「ギンリョウソウかな」とkwmさんが応えるが、こんなにたくさんの、こんな形のギンリョウソウは初めてだ。ところが先へすすむと、今度ははっきりとギンリョウソウと思われる白い花が2個、枯葉を押しのけて顔を出している。さらに先には、もっと大きく成長したギンリョウソウが姿を見せた。こういうことってあるんだ。
藪がつづく。私たちの背よりも高いハコネタケという種類らしい。両側から道を塞ぐ。顔にあたるから、ストックを前に出して、押し払いながら、すすむ。足元を見ていないから私は、大きな枯木に躓いてどうっと倒れた。やがて針葉樹はヒノキに変わり、明るい落葉灌木の密生しているところに出る。竹が煩わしく道を塞ぐ。踏み跡が途絶える。そっちかな、こっちかなと少し探り、らしき方向へ踏み出るこうして、白銀山の山頂に着いた。12時7分。「三所山」からちょうど30分。とすると、先ほどの830mのところが三所山ということになるか。
白銀山の山頂は、しかし、竹に囲まれた小さな平らな草地。3本ほどの落葉樹が日陰をつくっていた。三角点の標石があり、その傍らに「白銀山山頂」と記した剥げかけた板が、地面に置いてあるだけ。お昼にする。ま、でも、ここまでのGPSに頼った歩き方で、おおよそコースタイムならば、3時半前には湯元駅に着くだろうと踏む。20分ほどの休憩で午後の出発。
ここからは地理院地図にもルートはない。「山行記録」は迷うと書いてあった。地形から考えて、おおよそこの稜線を下り、標高740m辺りに右への分岐がある。それを見過ごさなければ天狗沢への下りは見通せるとみていた。下りは結構、急だ。はじめは踏み跡がわからず藪竹をかき分けて見る必要があったが、いくらか下ると、それらしい踏み跡が分かる。標高に注意しながら下る。そのうちどこが踏み跡かわかりにくくなる。標高が735mになっている。あれ、行き過ぎたかなと少し戻ると、後からみていたkwmさんが「標識がある」と声を上げる。「天狗沢→」と半分壊れた手書きの小さな板が、落ちかけて木に取り付けてある。「これだ、これだ」とkwrさんがそちらへ踏み込む。急な斜面、私はすべって転んでしまった。今日は二度目だ。
「←天狗沢」という板が張り付けてある。だが踏み跡はわからない。そちらの方だろうとkwrさんは踏み出す。「山行記録」には「赤テープのコースマーク」とあった。だが、それは天狗沢の流れ口の方ではなく、上流の方へ向かう。あとから考えると、それが正解であったのではないかと思う。だが私は、太ももが引き攣ってしまって、ルートファインディングどころではなくなった。スプレーをかけて手当てをし、何とか引き攣りを収めて下りにかかる。地形図を見て斜面の柔らかな方向へトラバースする。踏み跡かなと思うところが、ところどころ現れるが、すぐに途絶える。慎重に下れるところを探し、木につかまって身を降ろす。急な斜面に落ち葉が積もり、枯れ枝が散乱する。つかまろうとすると木は枯れていて、折れてしまう。こうして45分ほど、谷への斜面を下り、沢沿いに立つ。導水管が走っている。これを伝って行けば、わかるはずと読む。だが足場はひどく、木の枝を避け、足場のごろた石を回って歩を進める。コンクリートの階段にでた。
「山行記録」には「階段を下るな」とあった、その階段についた。ここだ、ここだ。だが階段以外に、人の歩いた形跡はない。沢の向こう岸かと思ってわたってみるが、そちらもすぐに行き詰る。引き返し、下る道を探るが、見当たらない。とうとう階段を上がった。すぐに車の通りの多い、国道に出た。湯元駅の方へ向かう。左側、標高で100mくらい下方、北に神社がみえ、旧東海道があっちだとわかる。すぐに緑に覆われて、下の方は見えなくなる。と前方に「人や自転車を見かけたら110番」と大きな表示板が現れる。ここは自動車専用道路なのだ。でも、下に降りる道はなかった。ま、パトカーが来てくれれば、どこに下山口があるか聞けるから、それも悪くないと喋りながら30分ほど歩いたら、旧東海道からくる進入路があった。そそくさとそちらへ出る。14時41分。多分歩けば30分ほどで駅に行きつけるが、バス停がある。次の便をみると11分後に来る。もういいや、バスに乗ろうと、荷を降ろした。
ここまでの行動時間、6時間15分。10.4km。たいした距離ではない。面白かったがGPSなしでは帰りつけなかったに違いない。上り下りは面白いルートだが、もう一度歩きたいとは思わない。まるで開拓期の山ルートを歩いたような気分であった。駅からすぐ歩けるのに、整備されていない。人も入らない。見晴らしもない。いいとこなしの山にみえるが、じつは、あまり疲れていない。樹林におおわれ、強い陽ざしが遮られて、歩いている分には心地よい気分であった
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