2017年7月27日木曜日
岩稜とお花畑の薬師岳と早池峰山
花の百名山「薬師岳と早池峰山」に行ってきた。宮城や福島地方に大雨洪水警報が出ていたのに、週間予報では「降水確率80%」であった25日の岩手・早池峰方面は「曇り晴、降水確率10%」とよくなった。前線が下に下がってそれまで大雨であった岩手秋田地方が好天に変わった。
新花巻駅に下車しレンタカー2台に分乗して、一路「早池峰神社」へ。そこから5kmほど先の登山口に向かう。naviに頼りっぱなしだから、どちらへ向かって走っているのかもわからない。青々とした水田が広がる。やがて山間の道になり、早池峰ダムの脇を通って民家もまばらに点在する集落をへて、細い一本道に入り込む。ところどころに待避所を設えた登山口への道は、土日には一般者の通行が禁じられ、集落手前でシャトルバス乗り換える。だが平日とあって河原の坊駐車場まで乗り入れる。10時半前に着く。ビジターセンターがあり、トイレがある。ほんの数台の車しか止まっていない。標高は1050m。
ここから早池峰山へ直登するルートは、昨年の大雨でルートが壊れ、通れない。いかにも厳しく禁じているかを表すようにテープを張り巡らし、「通行止のお知らせ」と大書してある。だからこの河原の坊から小田越1246mまで広い舗装路を歩く。車は峠を越えて抜けているが、小田越の峠に車は置けない。昨日の雨の降り様を示すように空気はじっとり湿っている。空の雲もうっすらと全面を覆うようにかかり、ときどき雲が切れて早池峰山の山頂稜線部が垣間見える。ダケカンバやブナなどの樹高が、はじめ高くやがて上るにつれて低くなっている。わずか標高差200mほどを登るだけでこれだけの違いがある。積雪が厳しいということなのだろうか。
小田越には40分ほどで着く。ちょっと早すぎるかなと思うが、皆さんの元気にはほとんど影響がない。一人ベンチで休んでいる人がいるだけ。大きな建物があるがそちらにも人影は見えない。薬師岳の方へ踏み込む。11時25分。この薬師岳は「花の百名山」として早池峰山と並んでとりあげられている。小田越を挟んで早池峰山と双璧をなすように立つというから、まず今日は薬師岳の山頂から明日の目標山を眺めてみようと考えたわけだ。早池峰山と違う岩質をもっていて、小田越から往復3時間くらいの行程。両側はびっしりと広葉樹がかぶさるように生えている。その間を縫うように木道が走る。すれ違えるくらいの広さがあるところをみると、土日にはそれなりに人が来るのかもしれない。
やがて上りになるが、急峻というほどではない。「大きな岩の登りがある」とコース説明を読んで心配そうな声も聞こえるが、まだまだそんな心配をする必要はない。500mおきくらいだろうか、ところどころにドラム缶をつるし、それを叩く棒も吊り下げてある。熊除けなのだろう。がんがんと先頭の方が叩く。あとからまたがんがんと鳴る。これで、前後の離れ具合もわかる。皆さんのおしゃべりの声が途切れない。樹林の合間からときどき、向かいの早池峰山の山頂部の雲が切れて姿をみせるが、すぐにまた雲間に隠れる。「←小田越0.7km、薬師岳山頂0.8km→」と標識がある。少し広くなった辺りに腰を掛けて、お昼にする。食べていると上から二人連れが降りてきた。早池峰山と薬師岳の両方を登って今下山しているところだそうだ。地元の人なのだろう。薬師岳をひとめぐりするルートがあったのを、私たちと逆に回っているのだろうか。そう聞くと、いや、向こうの道は荒れて通らないように通行禁止になっている。このルートを往復した方がよいと、忠告してくれる。彼らが通る道を開けたついでに、出かける用意がすすむ。「えっ? もう行くんですか。まだ十五分しか経っていないですよ」と声が上がる。「イヤ急ぎませんよ」というが、起ちあがったついでで、皆さん行く態勢になってしまう。
その先に梯子があり、大きな岩を乗っ越す。岩の間をくぐるようにしながら身を持ちあげる。「あっ、ヒカリゴケがある」という声に脚を止め、岩の間をのぞき込む。さらにその先が森林限界というか、ハイマツやシャクナゲ、ナナカマドやカエデの低木になり、岩のある斜面を右へ左へ屈曲しながら登る。ハイマツのあいだからにょきっと起ちあがる稜線上の大岩にたどり着く。「←薬師岳0.3km」とある。東の方に山頂らしきピークが見える。しかしそれも、雲がかかり、くっきりとみえるわけではない。13時15分山頂に着く。小田越から1時間50分、お昼をのぞくとほぼコースタイムで歩いている。山頂先の分岐にはぐるりと回って小田越山荘へ降るルートもあるが、「通行禁止」の表示が掛けられている。向こうにも大岩が積み重なり、それが雲の中にあって、そこに立つといかにも高山の岩稜に身を置いている気配が湧きたつ。じゃあそちらに行くから写真を撮ってと何人かが行く。雲に入り姿が見えなくなったりしながら、何枚かを冥途の土産にと、撮ってもらう。20分余をここで過ごし、下山にかかる。
やはり下りは身体の疲れがラクだ。梯子を過ぎるまではと私が先頭を歩いたが、難なく、最高齢者もついて降りてくる。ワイワイ言いながら梯子を降り、すでに花の終わったオサバグサの、シダのような葉の群落をあれこれ立ち止まっては評定している。15時、小田越降り立ち、さらに25分舗装路を歩いて河原の坊の駐車場に着いた。当初の行程表に予定した通りのペースであった。
今日の宿、ホテル・ベルンドルフへ向かう。風呂をつかう。大きな湯舟に熱い湯がたっぷりと注いでいる。しかし、火曜日はこのホテルのレストランの休日。「近所に居酒屋とかラーメン屋があるから」と言われていたが、歩いていくには居酒屋は遠い。なんとも田舎なのだ。近くのラーメン屋は親切に応対してくれたが、ラーメンしか出せない、という。kwrさんの発案で、ご近所のコンビニに買い出しに行って、持ち帰って談話室で宴会にしようと決まる。車を一台だし、msさんokdさんkwrさんとかける。さすがにmsさんは食品売り場の経験が長かったせいでか、手際よくさかさかと篭に放り込む。ビールや地元産のワインも仕入れたが、お腹が減っているときに行ったものだから、こんなに食べられるかというほど買い込んでしまった。
持ち帰って「まるでキャンプみたい」という声を耳にしながら、ビールで乾杯する。食べながら飲みながら、「今年度後半の山行計画」を話し合う。「そもそも何のための日和見山歩だったのか」とkwmさんに問い詰められる。要するに、「簡単に行ける山」なのか「自分たちで計画する山なのか」と。stさんが「この人たちと行く山がいいんだから」と熱を込めて言う。いろいろと口を挟んで、修正する。山歩講の白馬岳も、行程を一部変更して、二日目の雪渓歩きを楽にしようと変更提案が出る。こうして、山の話をしているときが、一番うれしい。これで私が山を引退しても「山歩講」はつづくと思った。
2時間半近くも「宴会」をやって、部屋に戻った。私はすぐに寝付いたから知らなかったが、9時半ころに地震があったそうだ。翌日そういわれて、あらためて3・11のことを思い出した。七周忌だ花巻は内陸部だからそうでもなかったのだろうが、岩手県全体では大変なことであった。(つづく)
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