2017年7月28日金曜日
岩稜とお花畑の薬師岳と早池峰山(2)絶好の山日和
さて26日。朝食は7時。湯豆腐などもあって、けっこう盛りだくさん。昨夜のキャンプ食のせいもあって、ゆっくり、たっぷりといただいた。それでも7時45分発。昨日のコンビニによってお昼を調達。このコンビニ、駐車場は、トラックも含めていっぱいであった。
昨日の登山口へ向かう。このとき、早池峰神社に近づくにつれて東へ向かっているのだとわかる。陽ざしが前から差して来て、狭い林道の先がまばゆくて見通せない。カーブに差し掛かると、速度を落とし手をかざして見極めなければならなかった。8時半前に登山口に着く。昨日と違って、車がいっぱい止まっている。岩手ナンバー、盛岡ナンバーが多いが、横浜ナンバーもあった。8時35分、歩きはじめる。
小田越までは昨日と同じルート。早池峰山の稜線の上は雲一つない青空。東の稜線の向こうに少し入道雲が湧きたつ。いかにも夏の高山という風情。舗装路に照り付ける陽ざしがまばゆく暑い。少ししかない木陰に身を寄せるように、道の右へ左へと移動死ながら歩く。やはり35分ほどで小田越に着いた。
今日はずいぶんたくさんの人が入っている。消防自動車が何台も止まっている。消防の活動服を着用した若者が大勢降りている。「訓練」だそうだ。「背負って降りてね」と年寄りが頼んでいる。若いイケメンが笑って「気を付けて」と応じる。「あの子がいい」というものもいれば、「向こうだって選ぶ権利があるかも」と茶化す。
早池峰山への道に踏み込む。9時15分。コメツガや背の高いカエデなどの広葉樹、やはり丈の高い笹に覆われるようになっていて、日陰を歩く。昨日同様、ドラム缶がところどころにおいてある。単独行の若い人がやってくる。道を譲る。年寄りが来る。譲ろうとするが、「いや、ゆっくりなので」と先行しようとしない。ごろた石を踏むように歩くが、昨日のように水に濡れていたりしない。木立の間から見える空は青く、入道雲が湧きたち始めた。振り返ると、昨日登った薬師岳がすっきりとした姿を見せている。と、ぐぇぐぇぐぇという鳥の鳴き声がすぐ近くで聞こえる。ホシガラスが樹の幹に止まって鳴いている。
30分ほど歩いて樹林を抜けると、今度は大きな岩を伝うように登る。前が止まって何かをみている。エーデルワイスがあった。この後何種類か、様子の違うエーデルワイスがあったから、これがハヤチネウスユキソウかどうかはわからないが、カメラのシャッターを押す。その脇にも紫色の小さい花が咲いている。皆それぞれにカメラを構えて立ち止まる。先頭のoktさんが間をあけていいものか思案している。「放っておいて、先行していいですよ」と声をかける。彼は今朝、腰が痛いと言っていたそうだ。無理はできないが、彼のペースをできるだけ乱さないようにしておきたい。
前方の山稜部が見える。「あれが山頂か。意外に近いね」というと、急に皆さん元気が出たように歩を進める。岩の間に花が咲いている。その都度立ち止まる人、構わず登る人、間が離れる。でも、見透しはよく、見えなくなるわけではないから、勝手に歩いてもらう。私と一緒のoktさんが遅れる。脚が不安なようだ。50分ほど登ったところで、kwrさんが「山頂はあそこなのだから、頑張って」というと、上から降りてきた人が「いや、あそこは五合目くらい。山頂はその上にみえます」という。なんだか気力を奪うようなことをいう、と思った。oktさんは「この辺で待ってます」というから、「上の大岩のところまで行って、山頂が見えるところで待ってましょうよ」といって、少しずつでも身体を持ちあげるように励ます。
やっと大岩の麓に着いた。oktさんは「ここで待ちます」というので、彼を措いて大岩を回り込むと、ほんの50m先で、皆さんが休んでいる。下を向いて「皆さん居ますよ。ここまでお出で」とoktさんに声をかける。彼も上がってくる。「←小田越1.5km、早池峰山・山頂1.0km→」と標識があり、その柱に「五合目御金蔵」と書きつけている。「御金蔵」って何だろう。oktさんはここで待つ、あるいはぼちぼち一人で降りるから追いついて、という。ではでは、と彼を残して登りはじめる。山頂に立ったとき、「五合目はあの辺、oktさんは見えてるかしら」とstさんがいって手を振っていたが、よくわからなかった。下山のときすでに彼の姿はなく、小田越で再び会うことになった。彼に聞くと、「皆さんと別れてみていたら、もうあんなに登っていると思うくらい、皆さんは速かった。待っているのも悔しいし、あとで合流してゆっくり降りたのでは迷惑もかけるから、30分ほどいて降りました」という。13時ころには小田越に着いたというから、私たちよりは40分くらい早く下山したことになる。
あとで考えてみると、五合目を過ぎてからの上りが、急斜面の岩場と30mを超す二段の鉄梯子の上り。その上はさらにまた、大きな岩を攀(よ)じる急登であった。登るときは夢中であるから、疲れも感じない。上から降りてくる人もいる。梯子は二列かかっているから不都合はないが、登る前で立ち往生している人もいて、先を譲ってくれる。もう梯子の先端にいてkwrさんが手を振っている。先行して右側の大岩へ道をとったkwrさんとちがって、msさんは左側の大岩のあいだを上っている。乾いた岩でよかった。すべすべとして黒光りしているこの岩は、雨でぬれたりするとグリップが利かない。
「剣ヶ峰分岐」に着く。左へ400m行けば山頂、右へ1.2km進めば剣ヶ峰に行く。むろん、早池峰山頂の方へ向かう。木道があり、その両側がお花畑になっている。歩一歩立ち止まり、しゃがみ込んで花をうかがう。向こうに赤い屋根の山小屋が見える。kwrさんはもうその脇にいて、手を振っている。こうして山頂に着いた。大きい岩がそちこちにあるから山頂全体を一望することはできないが、広い。早池峰神社の奥社が立っている。鉄剣がたててあるのは、むかし修験道に使っていたからなのか。大勢の人がお昼にしている。11時40分。2時間半のコースタイムより5分早い。いいペースだ。昨日のこともあるから「30分お昼にします」と声をあげ、それぞれ手近なところに座りこんで弁当を広げる。南の薬師岳の方へ向いて座り込みお昼にしているokdさんとmsさん二人の姿が、山頂標識と並んで、向こうの雲に映り、いかにも夏山山頂の一服、という格好。一幅の絵のようだ。何時間でも過ごしていられる。
「えっ、もう行くんですか」と昨日(お昼に)声をあげたmsさんが起ち上げって(えっ、まだ行かないんですか)という顔をして目が合う。「まだ、24分ですよ」というが、先に行ってますというふうに、歩きはじめる。見ると他の方々も、すでに歩きはじめている。mrさんが下りが心配と言っている。kwrさんが「大丈夫、下りになったら降りのモードになるから心配無用」と励ましている。下りになる。上るとき心配していた気配をみせず、mrさんも注意深く降っている。鉄梯子に来る。最後に降りていた私の脚が、mrさんの頭にあたる。「おっ、ごめん」というが、mrさんは私に文句を言う余裕はない。下を向いて、okdさんに「ねえ、早く撮ってぇ」と写真をせがんでいる。okdさんはカメラを出している。kwrさんが「はい撮ります。こちらを向いて、両手をあげてぇ」と声をかける。mrさんが笑っているかどうかは、わからない。私は梯子とは別のルートを岩を伝って降ってしまった。
岩を降りてみると、先頭のmsさんはずうっと遠くを歩いている。そのあとをstさん。着衣とリュックの色で見分けている。上からみると、下の方はすたすたと歩けるように思える。だが実際にその場に行くと、そうはいかない。下方は、小田越までの全体が一望の視野におさまるから、一人の人の歩きがう~んと縮小されて素早く動いているように見えるのだろう。そんなことを考えながら、mrさんの前を下る。足場を選ぶ面倒を軽くしようと考えたのだが、彼女は自分でしっかり選んで、それでいて少しも遅くなることなく、さかさかとついてくる。「下りのモード」になっているのだね。
こうして小田越に着いた。13時30分。oktさんは待ちくたびれただろうと思っていた。途中で下っていた「自然保護」の腕章を巻いた地元のお年寄りといろいろと話しをしていたようだった。上っているときに心筋梗塞を起こした事故のことなどを話す。そうか、深田久弥のように、そういうことにでもなれば、私も案外苦しまなくて彼岸に到達できるかもしれない、と思った。14時に河原の坊駐車場に着く。予定していた時刻よりも、1時間半も早い。これで帰りの温泉にゆっくり浸かれる。
ホテル・ベルンドルフで日帰り温泉を使う。宿泊していたというので半額にしてくれる。何だか儲けたような気分だ。意外にも30分足らずで新花巻駅に着いた。レンタカーを返し、新幹線に乗ろうとする。おっ、あと4分で出るのがあると改札を通ろうとすると「全車指定席」という。切符売り場で8名全員が手続するのには、時間がない。というわけで、1時間後の次の電車に乗ることして、「自由席」のチケッを「指定席」に切り替えてもらう。駅員が「皆さんご一緒の方がいいでしょう」とあれこれ操作をしてくれる。ビールを買い求め、待合室のテーブルを占拠して、また、「宴会」をはじめた。一番早く手続きを済ませたmsさんは(一人で離れて座っては良くないでしょう)となんと、四回も呼び出されてチケットの修正をした。(それほど仲良しではないから)と私は言ったが、駅員は取り合おうとしなかった。なんとも親切なのだね。大宮までの2時間半、「おかげで、女子会ができた」とmsさんはご機嫌であった。
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