2023年5月12日金曜日

日本の『失われた三十年』から何を学ぶか(1)先ず指標の確認

 3月seminarの「日本人の不思議」が不評でした。参加の皆さんの関心外であったようだ。それについてこの欄の2023-03-28の記事「seminar進行者の心得べきこと」で一つ、こう反省しています。

    《keiさんから「GDPが増えたら私たちの暮らしにどういう変化が生まれるの?」という疑問が提示され、特派員氏の取り上げた日本の経済的停滞をもっときっちり考えてみようという提案もあった。これも30年史を振り返るときに、いきなり社会的な当事者問題に飛び込む前に共通認識としておくべき客観的事態であるように思った。つまり、【返信4】と【返信6】にあったオオガくんの指摘する日本社会の当面している事態を、事実関係だけでいいから押さえてすすめる必要があった》

 世情「失われた三十年」と謂われている事実だけでも共有してから話に入るべきだったと考えたわけです。そこで先ず近頃流行のAIに訊いてみました。GAFAMの一角、マイクロソフトの「AI を利用した Web向け copilot」は、こう答えてきた(冒頭のナンバーは引用者がつけた)。

   *

     失われた三十年とは、日本経済がバブル崩壊後の1990年代初頭から低迷を続けた約30年間のことを指す言葉です。この期間には、以下のような経済指標の変化がありました。

    1、名目国内総生産(GDP):1990年に2.4億ドルだったのが、2019年に5.1億ドルになりました。米国は3.5倍、中国は37倍になったのに対し、日本は1.5倍にとどまりました。

    2、国民1人当たりのGDP:1990年に1.9万ドルだったのが、2019年に4万ドルになりました。G7中6番目の低水準でした。

    3、平均賃金:1990年に3万6748ドルだったのが、2020年に3万8514ドルになりました。この30年で日本は4.4%増とほぼ横ばいだが、米国47.7%増、英国44.2%増、ドイツ33.7%増などと差は大きいです。

    4、貧困率:1990年に11.6%だったのが、2018年に15.7%になりました。主要国では高い方でした。

    5、消費税率:1990年に3%だったのが、2019年に10%になりました。

     以上のように、失われた三十年は経済成長や所得水準、格差問題などで他国に大きく遅れをとる時代でした。

   *

 要領よくまとめています。でも、AIは事実をも間違えると言いますので、東洋経済onlineの「経済ジャーナリスト・岩崎博充の記事(2020/01/26東洋経済online、日本人は「失われた30年」の本質をわかってない)」が指摘する事実項目を参照しました。次のように9箇条をあげています。


    ●平均株価(日経平均株価)……3万8915円87銭(1989年12月29日終値)⇒2万3656円62銭(2019年12月30日終値)

    ●株式時価総額……590兆円(1989年年末、東証1部)⇒648兆円(2019年年末、同)

    ●ドル円相場……1ドル=143.4円(1989年12月末、東京インターバンク相場)⇒109.15円(2019年12月末)⇒134.83(2023年5月)

    ●名目GDP……421兆円(1989年)⇒557兆円(2019年)

    ●1人当たりの名目GDP……342万円(1989年)⇒441万円(2019年)

    ●人口……1億2325万人(1989年、10月現在)⇒1億2618万人(2019年、11月現在)

    ●政府債務……254兆円(1989年度、国と地方の長期債務)⇒1122兆円(2019年度末予算、同)

    ●政府債務の対GDP比……61.1%(1989年)⇒198%(2019年)

    ●企業の内部留保……163兆円(1989年、全企業現金・預金資産)→463兆円(2018年度)


 この両者の「名目GDP」には、1990年と1989年、ドル表示と円表示の違いがありますので、ドル/円相場も調べてみました。1989年は1$=138円、1990年は1$=144円ですから、AIも間違えてはいないようです。因みに2019年は1$=109円。2023年現在の1$=134円は、1989年に近いですね。

 もう一つ違いがあります。東洋経済の経済ジャーナリストは株価や政府債務、企業の内部留保金に目をつけていますが、AIは平均賃金、貧困率、消費税を拾って、経済格差に目を留めています。keiさんの「わたしたちの暮らし」を組み込むと、AIの示す指標も大切になります。

 AIは海外先進国との対比をしているのに対し、経済ジャーナリストは日本の国内指標だけです。でも本文中で海外との対比をして云々しています。そこを簡略に拾うと次のように書いています。

《アメリカの株価がこの30年で9倍…ドイツの株価指数もざっと7.4倍になっている》

《世界経済に占める日本経済のウェート●1989年……15.3% ●2018年……5.9%、その凋落ぶりがよく見て取れる/アメリカのウェートは1989年の28.3%(IMF調べ)から2018年の23.3%(同)へとやや低下/中国のウェートは2.3%(同)から16.1%(同)へと急上昇/新興国や途上国全体のウェートも18.3%から40.1%へと拡大》

 つまり、名目額でみると「国内総生産は順調に伸びてきたかのように見えるが」この30年間の世界経済の成長規模に照らすと、日本の停滞は際立っているというわけです。

 そう言われて考えてみると、今傘寿を迎えている私たち世代が還暦の定年を迎えたのは2002~2003年。まだ「失われた十年」でしたから、十分バブル時代の余韻に浸っていました。それが実は、日本経済の構造的転換を押しとどめる役を果たしていたのだと、21世紀になって指摘されるのでした。(つづく)

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