2018年9月27日木曜日

いかにも、の奥久慈男体山


 昨日(9/26)奥久慈の山へ足を運んだ。どうして? と問われると、毛無山から話しはじめなければならない。じつは当初、この日、山の会の毛無山山行を予定していた。一週間前に「天気予報」をみると「雨、降水確率80%」。ところが翌日の27日は「晴、降水確率10%」とあるから、一日ずらしてもいいかどうか、参加者に問い合わせる。むろんそれでよいとの返答。四日前あらためて「予報」を観たら、なんと木曜日は悪く水曜日のほうが良くなっている。天気の変化が早まっているのだ。こんなに目まぐるしく変わる天気も、珍しい。台風のせいもあるのだろうか。もう一度参加者に問い合わせ、元の水曜日に実施することで了解をもらい、三日前にレンタカーの予約を済ませた。夕方「予報」を観ると、水曜日も悪くなっている。参ったなあと思いつつ、その様子を参加者に知らせると、「わざわざ雨の中へ出向くことはない。中止にしよう」と声が上がり、毛無山は中止にしたのだった。だが私の腹の虫というか、山への虫は収まらない。西がダメなら東はどうかと覗いて見たのが、奥久慈の天気。これがなんと「曇り、降水確率20% 、降水量0mm」とある。関東一円は雨の中、行くしかないと思った。


 朝6時前、雨の中、車で出る。奥久慈は茨城県の北部に位置する。福島県の郡山と水戸を結んで、久慈川に沿って南北に走る水郡線の東西に沿うように峰を連ねる地域。埼玉からはアクセスがとても不便だが、車で走ると2時間ほどで寄りつける。高速の常磐道を北上する。雨はやまない。雨着を着て歩くようになるかと心配していたが、西金駅の駐車場に車を置くときには、雨は上がっている。近頃の天気予報は、直近になると正確だと思う。

 湯沢川に沿って北東に伸びる林道を奥へ詰める。二車線が一車線になり、民家も見えなくなる。地理院地図では途中で林道とわかれ、沢沿いに延びる登山道が記されている。その入口辺りに舗装路が別れていたので、そこへ踏み込む。ところが15分ほど登ると、大きな民家に突き当たって、行き止まり。抜ける登山道を探すが、蜘蛛の巣だらけでどこにも通じていない。仕方なく引き返し、車道をさらに奥へ登る。途中で祠の掃除をしている方がいたので、登山道のことを聞く。「ああ、昔はあったな。今は草が覆って歩けないやね。男体山ならこっちだよ」と車道の先を指さす。車道がヘアピンカーブを描くところで、脇にそれ、大円地へ向かう。トイレが設えられ、登山届のボックスが置いてある。何台か車も止められる。「大円地そば」と大書している民家の脇を抜け、山道に入る。標識はしっかりしている。すぐに二股に道が分かれ、どちらも「男体山」と書き、左へ行けば「健脚」右へ「一般」と添えている。「健脚」は直登のようだ。そちらへ踏み込む。標高差450mくらい。

 徐々に急斜面になり、岩を踏んで登るようになる。鎖がつけてあるから技術的にはむつかしくない。岩も削ったように若干階段状になっている。だが雨に濡れて滑りやすい。私の登山靴も四年も使い古したせいか、底が擦り減っているとみえる。「上級」ではなく「健脚」としているわけが分かる。男体山と名づけられた所以が分かるような気がした。1時間5分ほどで、稜線に出る。そこから5分も登れば男体山の山頂、653m。若い男が二人、先客がいた。ガスストーブをつけて、コーヒーを淹れようとしている。「車道を歩いてましたね」という。彼らは車で大円地まで入り、「健脚」を歩いて来たそうだ。

 地元の方?  いい山ですね。
 ええ、那珂から。でも初めてですよ、ここ。
 いやすごい上りでしたね。「健脚」を降るのはごめんですね。「一般」を降ります。
 それにしても、速いかったですね。おいくつですか? ええっ、私の父と同じだ。
 月居山まで縦走ですか。6時間くらいかかるでしょう? 気を付けて。

 山頂からの見晴らしは、西側だけが開けている。大円地も見下ろせる。たぶん向こうの、大きな川が久慈川だろう。西金駅の方もみえているに違いない。大部分は緑に覆われた山地。これが奥久慈か。筑波山のずうっと北側に位置して、さらに北辺には八溝山という名の知れた山をおいて、福島県に至る。

 月居山へ向かう。地図で見ると、ここから月居山までは標高400mほどの稜線伝い。地理院地図にはあるが、地元発行の「ハイキング」コースには載っていない。途中、分岐の標識はしっかりついている。「長福分岐」は、上小川駅から登るルート。こちらの方が、早くから山道に入るのでいいかもしれないと思っていたが、「縦走」という響きに勝てず、月居山のルートを採った。これが、笹が大きく伸びて道を覆うほど。足場は、あいかわらず岩が多く、気が抜けない。定本への分岐から2時間10分と、私のみたYAMAPの行程表は記しているが、どこまでがその時間なのかがわからない。落葉広葉樹が生い茂って見晴らしは利かない。樹々の間から見えるのは奥深い山並みばかり。自分の歩いている地点がわからない。GPSは樹林の中だと衛星と交信できないのか、動かないままだ。見晴らしのいいところに来ると、ポイントを教えてくれるが、くたびれてきて閉口した。ようやく「第二展望台」に来る。「展望台・後山」とガイドブックにあった地点には、山名表示はない。月居山にしても、月居城址の標識がある地点から「←月居山」とあるだけ。小高いそこに上がると、測量に使ったのであろうか、標石が置かれているが、山名表示がない。あれっ、間違えたかなと道を探す。はっきり板踏み跡のルートは下っている。それを辿ると、峠のようなところに来て、「←袋田の滝・袋田駅→」と別れる。城の由来も記してある。

 「袋田駅→」への道をたどると、15分ほどで、賑やかな土産物屋や旅館街のあるところに出た。えっ? 間違えたかな。GPSをみると、私が下っていると思った地点とは違う。でも分岐はなかったし、どこで道を間違えたろうと、不思議であった。待てば、バスが出ていると分かったが、駅まで30分くらいというので、歩く。袋田の滝を見る観光客が、バスを連ねてきている。だがシーズンはまだ先のようで、客引きも暇そうにしている。

 駅に着く。電車は2時間に一本くらい。私はちょうどその中ほどに来たから1時間以上待たねばならない。タクシーが止まっているから、12月に山の会の人たちを案内したときに袋田の滝近くから西金駅までいくらくらいかかるかと聞いた。すぐに4000円くらいと答えてから、何かを算段しているのか、だんだん吊り上げる。5000円くらいかなというあたりで、すっかり観光客にすれたタクシー運転手の顔がのぞいた。

 電車に揺られながら窓外に流れる奥久慈の山並みは、凸凹が大きくて、あんなところを歩いたかしらというほど、大変な山にみえた。たどり着く先が平凡な観光地では、面白くない。冬に備えて、もう一度ルートを考え直さなくちゃならないと、思った。

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