2018年10月4日木曜日

賑わう首都圏のハイキング・フィールド


 晴れの昨日(10/3)、高尾山に行った。山の会の「日和見山歩」、チーフ・リーダー(CL)はkwmさん。じつは当初、サルギ尾根を登って御嶽山をめぐる予定であった。ところが10/1の深夜、台風24号が来襲した。お蔭でそのあとの三日間、晴れの日が続いたのだが、平地では台風の被害で大騒ぎであった。わが団地でもハナミズキの大きな木が2本倒れ、その始末はたいへんであった。多摩地方の被害も大きいと報道があったので、kwmさんが関係エリアに問い合わせたところ、サルギ尾根は倒木が多いだろうが確認できていない、上ったところのロックガーデンは通行禁止などと聞かされ、高尾山に行き先を変更した。ここは、彼女たちのトレーニング場。週一回のトレーニングに、それぞれが近辺を歩き回っている。ときどき、おや、こんなところで、とご挨拶することもあったという。


 9時、高尾山口駅に集合。ウィークデイというのに、駅前は登山者でにぎわっている。高齢者が多いということでもない。若い人たち、ことに30代、40代の女の人の姿が目に付く。駅前の案内所の入口には、「調査中」とか「通行可能(倒木多い)」というふうに、七つ八つのコースごとにかき分けて、扉の窓ガラスに掲出している。なかには「発生中(日蔭沢林道)」というのもあるが、これはどういう意味であろう。「いつもこんなふうに案内しているの?」と聞く。ふだんはこうではないそうだ。それだけ24号がひどかったというわけか。

 稲荷山コースへ入る。高尾山のいくつかあるコースの一番外側を通るロング・コース。ここを通って高尾山の山頂までの行程は往復3時間ほど。今日はその先の城山まで行き、往復する。5時間半ほどの予定。今日は、4月以来というmrさんが半年ぶりの復活デビュー。すべり症という腰の病気で養生していた。歩いている間は何ともないが、そのあと少し腰掛けたりすると腰に激痛が走るという。「じゃあ、休まないで歩けばいい」とか「腰掛けないで」とか周りは勝手な事をいうが、当人は歩いている途中で激痛が来たらどうしようと不安で、ストレスがたまるのよと笑いながら話す。oktさん、msさんも、やはり4月以来、9月につづいて二度目のリハビリ山行。やっと山の会の賑わいが戻ってきた。

 高尾山は広葉樹の雑木が多く、ルートが明るい。スギやヒノキもあるが、手入れがしてあるのか、全般に明るいのも、気分がいい。階段状の道を上がると祠が二つある。一つの鳥居は、虫に食われいまにも倒れそうなほどボロボロ。oktさんは手を合わせ、お賽銭をあげている。斜面はよく踏まれ、土地が削られて、木の根が剥き出しになっている。大きな木が根こそぎごろりと倒れかけている。今にも倒れんとして、土がはがれかけているのもある。頭上の枝が落ちかかって「頭上注意」の掲示がぶら下がる。スギやヒノキの樹林帯になると、葉をつけた枝がたくさん落ちている。倒れて斜めになっているのもあれば、すっかり倒れて、他の木に乗っかっているのであろう、グラグラと揺れるようなのもある。あるいは道を塞いでいる。上を越すわけにもいかず、下をくぐるように、ひとによっては這うようにして通過する。ご苦労なことに、いち早く手入れをしたのであろう、通路を塞ぐ木は中央部分を伐り払っている。木の枝葉は脇へどけられている。城山の山頂近くには、ぼっきりと折れた大木が白い木部を曝して、台風の風の強さを示すようであった。今日は、台風の被害調査だねと写真をとりながら思う。

 学齢前の子どもが一人で歩いてくる。先ほど婆ちゃんと手をつないでいた子だ。じいちゃんと婆ちゃんを置いて、道は三つに分かれているのに、さかさかと歩いて高尾山頂の方へ行ってしまう。何度か来ている歩きなれた道かもしれない。爺婆は、あとからやってきてやはり山頂の方へ階段を登って行った。ベンチにはたくさんの人が休んでいる。皆さん、おしゃべりに興じて気分がよさそうだ。街中の喧騒から逃れて、深い森に囲まれて交わすおしゃべりの賑わいは「喧噪」とは別物なのだろうか。

 1時間半ほど歩いて「これより奥高尾」と表示看板が立つ。すでに高尾山の山頂へ向かう分岐を過ぎている。「アサギマダラだ!」と前で声がする。ヒイラギのような棘のある葉に大きな蝶が止まって羽を休めている。よろよろしている。飛び立とうとするが、飛べない。ヘタッてすぐに止まる。ちょうど羽を広げたときにシャッターをおした。下の羽の末端が、いやに赤茶ぽいのが目立つ。このあと3羽もみた。渡りの途中なのだろうか。茅原はもうススキの季節だ。

 ルートのガイドはしっかりしている。ところどころに高尾山の植物や虫などに関する説明看板を置き、自然観察のフィールドとしての誇らしさを示している。四通八達しているいろんなルートへ、人は散っていく。あるいは、ひょいと現れて合流する。藪に踏み込み、植物調査をしている風情の方が、何人もそちこちにいる。結構高齢なところをみると、あるいはその筋の専門家が退職後もこうして、植物調査を続けているのかもしれない。写真を撮っている方がいたので、「それ、ボクチですよね」と声をかけると、「カシワバボクチですよ。ほら、この葉、カシワの葉のようでしょう」と返ってきた。また別のところで、花を囲んで何やら談義をしている中高年がいる。名を聞くと、「ノダケ、セリの仲間。これ花ですよ」と教えてくれた。ムカゴの苞が剥けて実が飛び出している。アザミの花に蝶が止まる。「あっヒョウモンだ」と声を上げると、「ツマグロヒョウモンですよ」と傍らにいた高齢者が教えてくれる。

 カメラを構えるが、何度やっても焦点が合わない。そのうち「バッテリーの電池が切れています」と表示が出て、動かなくなってしまった。やれやれ。「そんなこと、想定しなくちゃダメでしょ」とmrさんの手厳しい声が響く。スマホで写真を撮ったが、(うちに帰ってから)それをどうやってPCに転送したらいいか、わからない。結局、一枚一枚メール送信して、PCで使えるようにした。若い人たちはどうやっているんだろうと、思う。

 一カ所ルートが閉鎖されていた。「倒木のため」というのが、帰るときにみえた。大きな木がど~~んと倒れ、その樹幹のたくさんの枝が回り込むことさえ拒んでいる。高尾の山は、この台風のお蔭で、新しい世代を迎える更新期に入るのかもしれない。

 城山の山頂の、テーブル付きのベンチでお昼を囲む。たくさんあるテーブル・ベンチはどこもいっぱい。「なめこ汁」の看板を掲げた茶屋のテーブルまで人が座っている。ウィークデイというのに、何という賑わい。一人歩きの人もずいぶんと多い。若い人もうんといる。身軽に走る人たちは、ほとんど空身で上ってきては、降っていく。私たちのテーブルは、復活デビューの人たちが賑やかにおしゃべりしながら30分以上も過ごした。旧交を温めているとでも言おうか。

 12時半に下山開始。皆さんこの山は歩きなれているから、どこを回ろうという物見遊山気分はない。ほんとうにトレーニングかリハビリに来ているという気配で、さかさかと動く。私にとっては、なかなか面白い山だという感触が残る。人が多い割に、都会地という気配はない。高尾山山頂との分岐で一息入れる。山頂へ行こうとは、誰も言わない。もみじ台は南西側に開けている展望台になっている。古びた山名表示があって、丹沢の山々から富士山まで記されているが、どこも雲の中。

 城山の山頂から下山は2時間半とkwrさんは話していた。じっさいに高尾山口駅に着いたのは2時35分。2時間05分で歩いている。行動時間は5時間30分、おおよそ山頂で40分取っているから、歩行時間は、休憩をふくめて4時間50分ほど。コースタイムより40分ほど早い。「これを4時間半くらいで往復すればいいトレーニングになるよ」とkwrさんはリハビリ組に話していた。足場は広くしっかりしている。出会う人も、驚くほど多いから、万一何かがあっても、緊急連絡をしてもらうことはできる。迷子になることもなさそうだ。そんな話をしながら、電車に乗ったのでした。

 そうそう、昨年の10月3日にも、stさんのCLで東吾野から子の権現を経て西吾野までの奥武蔵の稜線を歩いている。里山もけっこう歩きではある。そう思いながら下山祝いの一杯を空けた。

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