2018年10月29日月曜日

団地住民のミーティング


 ここ一週間ほどの間、小さな住民ミーティングを行っている。目下、団地の修繕積立金の値上げを策定している。管理組合規約には、ひと月以上前に「説明会」を開いて後、「総会」にかけて決議するという手順も定めてあるのだが、型通りに運べばいいわけではないという副理事長の提案ではじめたもの。お勝手の言い分に耳を傾けてみることが大切という、女性らしい発案。それに付き合って、平均して十人ほどが集まる小規模の集会を8回ももつことになった。現状の説明は副理事長が行うのだが、理事長の私が冒頭のご挨拶をすることになって、全回顔を出してきた。住戸の3/4が出席の返事をしてくれた。入居以来28年も経過した団地であるのに、初めて顔を合わす人も少なくない。また、私にとっては9年毎、4回目の理事であるから、いつであったか一緒に理事をやったという顔にも、久々にお目通り願うことになった。


 テーマは、4年後に施工する給水管給湯管の更新工事と積立金の値上げ。大方の住民は、理事会や修繕に関する専門委員会のボランティア活動に感謝と敬意を表しつつ、高齢化してきた住いの手入れのためには値上げもやむなしと、好意的だ。ところが、私が意外であったのは、こうした住民ミーティングに、より好感を持っているということであった。「説明会」は1月に予定されているというのに、まだ値上げ額も公表していない段階で、事態の説明をすることに高い評価をしてくれる。顔を合わせて言葉を交わす、そのことが心地よいという反応である。

 60才以上の世帯主が住戸の6割を占める高齢化が進んだ団地である。夫婦二人だけの住戸が3割になる。おおよそ30代、40代の世代がバブルの終わりころに分譲されたこの団地に入居した。小さな子どももたくさんいて、「子ども会」の活動も盛んであった。それがそのまま年をとったとみえる。中には世代交代が進み、ここで子ども時代を過ごした人がばあちゃんが亡くなって、あらためてここへ移り住み子どもを育てている40歳もいる。若い人が、見栄えもそう悪くなく、いくぶん広いということもあって、中古住宅として購入して入居してきた人もいるから、緩やかにではあるが、世代交代がすすんではいる。

 値上げよりも、給水管給湯管更新工事がどう行われるのかに関心が集まる。大規模修繕などは、専有面積比で費用負担をする仕組みになっている。ひと棟だけなら積立金の管理も簡単なのだが、5棟もある。23年前の神戸の大震災以来、団地の建て替えなどが問題になって、国土交通省が積立金を棟ごと管理にするように指導した。そのため、不具合が生じて修繕や修理をする頻度によって、棟ごとの積立額に違いが生じている。そこへもってきて、給水管給湯管が専有面積に比例しているわけではない。最上階は屋上のテラスがついていて専有面積は広いが給水管などはわりと交換しやすい。ところが、それより狭い部屋であっても1階は、専用庭で使用する散水栓がリビングの下を抜いて長く通り、もしそれを交換するとなると、床をはがす大工事になって、ぐ~んと高い工事費を要する。つまり、各戸ごとに工事費用が異なるから、各戸負担が生じる。では、工事業者と各戸の契約でいいのかとなると、そうはいかないのが業界の通例らしい。つまり管理組合が業者と一括契約を結び、当然支払い責任を負う。各戸の負担部分は管理組合が回収しなければならない。無い袖は振れない人の分は、どうするのか。そういうことが無いようにするには、どう準備をすすめればいいのか。手順を踏んですすめなければわからないことが多く、皆さんの心配や不安に(一般的にしか)応えることができない。

 ところが良くしたもので、住民のなかには、建築関係や給排水管などの事業に経験のある方、司法書士や弁護士もいる。特許やその使用権に関して造詣の深い方もいる。彼らは、それぞれの蓄積からアドバイスしてくれる。ことに女性で50代副理事長が仕切っていることに、「お助け心」が刺激されるのであろうか、いろんな話が出来する。全くの素人である私や副理事長は、むしろ、聞き役。耳学問をしているような気分だ。それがますます、ミーティングがコミュニティの交歓の場としての効果を高めている。もちろんこれを機に、2年前の決議事項がオカシイと訴えたり、これまで理事会に注意喚起してきたのに、耳を貸さなかったと十年前のケースを持ち出してプリントをくださる方もいて、ああ、いろいろと鬱屈を抱えている方もいるのだと、私の心裡の人間模様は多様性を帯びる。まだ現役の方々もいるから、それぞれの生きている世界の多様性を反映しているのであろうが、私の知らない世界が断片的に垣間見えて、面白い。

 まとめるのがたいへんではあるが、なんだか「値上げ案」自体が通る見通しは、ずいぶんと明るくなった。いろいろなご意見を組み込んで「説明会資料」をつくるのがたいへんといったところに来た。

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