2018年10月1日月曜日
台風の落とし物
昨夜の風は強かった。何時ころかわからないが深夜、窓の外がびゅうびゅうと音を立てて唸る。街路樹のハナミズキの枝葉が揺れるだけで、こんなに騒がしくなるものだろうか。どこかでかた~ん、かた~んと規則的に、物と物がぶつかって立てる音が挟まっている。ベランダに置いた自転車の雨覆いが飛んでしまったろうかと思うが、起きてどうにかしようという気にならない。
朝カミサンに起こされた。「起きて! 木が倒れて、お隣さんが観ているわよ。(出かけるのは)水を一杯飲んでからよ」と、起き掛けの一杯にまで気をつかう。えっ、木が倒れたのか。管理事務所の鍵をもって外へ出てみると、車道の2/3を塞ぐように、街路樹のハナミズキが倒れている。直径は15センチくらいか。その向こうの角には、車道に沿う歩道を塞いで、少し高いところにあるハナミズキが根こそぎ倒れている。こちらの方は直径が20センチを超えていようか。他のハナミズキは無事のようだから、この2本はちょうど風当たりが強かったのだろう。
とても人力で持ち上げることはできない。最初に倒木を見つけたお隣さんは、日ごろわが団地の樹木の手入れをしている環境ボランティアの方。「防災倉庫に電動鋸があった」というので、私が預かっている鍵をもって向かう。だが「防災倉庫」にはない。管理事務所脇の自治会倉庫の中にあったのを持ち出す。お隣さんは混合油を入れ、オイルを足してもっていくが、起動のひもを引っ張ってもエンジンがかからない。私がもっていった鋸2本とお隣さんが持ってきた鋸とさらに向こうの棟からやってきたご近所さんの持参した鋸で、まず大雑把に枝を落として、車が通れるようにし、さらにそれらを90センチ以内の長さに切りそろえ、ひもで縛ってゴミ置き場に置くというのを、合計7人で行った。1本は、結局根の部分が抜けず、邪魔にならないように草地に倒して残してしまった。
植えてから最低でも28年は越えるハナミズキは、枝も葉も立派。ちょうどこの季節には赤い実をつけて鳥たちの秋の味覚になるのであろう。上へ伸び、横へ枝を広げているから、頭でっかち。重心は高くなる。ところが根っこは、車道と歩道の舗装もあって、横への広がりが抑えられている。根が深く張ればいいのだが、倒れたのをみると、根が浅い。これでは幹がよほどねじれていないと高い重心を支える力をもてない。昨夜の風が強く当たる南西部に背の高い建物がなく拓けているのも、上の方の風当たりを強くしたのであろう。大きく成長するのは、歳をとるようなものだ。あとで聞いたが、ハナミズキは樹齢は30年程度らしい。でも伐り落した幹の中はぎっしりと木部が詰まり、まだまだうろが入るような気配ではない。ま、人間で言えば、58歳くらいの定年間際であろうか。
1時間半はかかったろうか。今年の団地理事とその家族ばかりか、ボランティア的に居住者が集まって手分けして作業をするようなことがあってこそ、共同性は育まれる。わずか1時間半の共同作業だったが、初対面の人も含めて、ああ、こんな方があそこに住んでいたんだと心に残る。出勤の方々もいて挨拶を交わす。電車は止まったままだろうか、バスは動いているか、では一緒に浦和まで家内に送らせますからと同乗している人たちの姿を見るのも、共同性の一角を占める。台風24号の落とし物。
昨日観たTVドラマ「乱反射」のように、誰のせいでもないが街路樹が倒れて幼い子どもが亡くなるという事故につながらなくて、良かった。責任逃れというのではなく、自然の猛威がさほどでもなくて胸をなでおろした気分だ。こんな「被害」なら、ときどきあった方が、団地の共同性にとってはいいかもしれないと、ふと思った。
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