2023年2月21日火曜日

関東一望の一床山

 今週の山は、佐野市北部にある三床山334.6m。車を置いた所の標高が100mくらいありましたから、ホントの低山。くるりと回ると2、3時間だろうが、Yamapにもコースタイムは書き込まれていない。2週間前に、佐野市の北、栃木市の寺久保山を周回したとき、下山地のコース整備をしていたご夫婦がヤシオツツジがいいとすすめてくれたのが、三床山、二床山、一床山のコース。3月下旬と話していたが、ツツジはさておいてどんなコースか歩いてみたいと足を運んだ。

 駐車場があるとYamapにはあったから、地理院地図でおおよその住所見当を付けてnaviに書き込み、案内に任せてアプローチした。50mくらい入り込む道が違っていた。稼働していない工場の閉ざされた入り口で行き止まり。スマホを出してみると、もう一本西北寄りの農道を詰めるようだ。その農道へ車を入れると、向かいから一台やってくる。少し広い田圃の脇に車を寄せて道を譲る。ところが、やってきた車は脇に並んだ所で止まって窓を開け、「どこへ行くんだい?」と訊ねる。「三床山」というと、「ハハハ、向こうへ行っちゃあダメだよな。この奥に駐車場があるよ」と笑っている。私が行き止まりで車を回していたのを見てたんだね。人が悪いというか親切というか。

 手前にサッカー場くらいの広さの太陽光発電のパネルを敷き詰めた土地があり、その奥の駐車場にはすでに3台の車が駐車している。「とちぎ」「宇都宮」「足立」ナンバー。まだ二十台くらいは止められそう。[←一床山・二床山」「三床山→」の案内看板は新しい。進むと鹿島神社が鎮座している。立派な神社様式建築だ。その脇に登山道がある。

 そこを進んでいて、また失敗をやらかした。地図を見れば、三床山から北へ延びる稜線にとりついてルートがある。それなのに、谷沿いのルートをどんどん詰めてしまった。行き詰まる。えっと思ってスマホの地図を見ると、三床山は正面左上にあり、そこへの稜線は、正面を登って東から西へ三床山に登る稜線をたどるとわかる。引き返すか、とも考えなかった。ここまで来れば、正面突破しようと、踏み込む。先に人が歩いた形跡もあった。それが間違いの元であった。

 踏み跡はすぐに消えた。上りにはなかなか手強い斜面だ。加えてふかふかの落ち葉がたっぷりと積もっている。足を乗せても滑り落ちてしまう。ストックを出す。正面の稜線はスカイラインをみせてすぐ手の届く所にある。木に摑まり、落ち葉を蹴散らして正面の稜線に出た。標高は100mくらい上っている。だがそこから標高差140mほどの三床山の山体斜面は30度ほどの傾斜。落ち葉はもっと降り積もっている。木に摑まり、足元の落ち葉をどけて足を置く。ストックでバランスを取りながら、右足を持ち上げ、木の根方に置いて左足を引き上げる。動物になった気分を味わったころの山歩きが復活した。いや、いかん。こんな山歩きをしてたから事故ったんじゃなかったかと、頭をかすめる。気を抜けば、木の葉ごと足が滑り落ちてしまう。滑ると腹ばいのまま何十㍍も落ちる。慎重に、しかし、気を抜くことなく歩一歩と身を持ち上げる。ここの上りに30分くらい余計に時間を掛けてしまったのではないか。

 標高差230mほどだから、御正道をたどれば30分か40分で山頂だと思っていたのに、結局1時間5分かかってしまった。むろん誰もいない。奥日光の男体山や女峰山が雪を被った姿を木の間越しにみせている。

 この山頂に上がる道は一本しかなかった。少し先へ行くと、「←鹿島神社」「二床山→」の標識が出てきた。ああ、ここへ上ってくる道が御正道だ。先へ進むと急な傾斜の下りがつづく。しばらく行くと「←沢コース」の表示があった。鹿島神社を過ぎてすぐに、「尾根コース」と分かれる分岐があった。ここへ上ってくるのかとみていると、70代くらいの地元人が犬を連れて上ってきた。沢コースの様子を訊ねる。木の葉が降り積もって膝が埋まるほどだと手で示す。この方は三日にあげずこの辺りの山を歩き回っているそうだ。ルートも熟知している。

 実は地理院地図には三床山の名しか記されていない。しかし彼は、前方を指さして、あれが二床山、その向こうにあるピークが一床山と示し、一床山は見晴らしが良いからぜひそこまで行った方が良い。その先のルートをぐるりと回ると、ほらっ、向こうの尾根を降りた辺りに銀屋根の大きな建物がみえるでしょ、あの手前に居りますから、そこから駐車場までは道なりですよと、ガイドしてくれた。

 二床山までは、岩もあり、なかなかオモシロイコース。滑りやすくバランスは必要。もちろん難しくはない。三床山から30分ほどで着いた。途中2組のペアとすれ違った。二床山で11時35分になっていたので、お昼にする。犬連れの男性もお昼にしている。風が強い。だが、雲はなく、寒くはない。スカイツリーは霞の向こうにみえるが富士山は雲がまとわりついて姿を隠している。お昼を済ませ、犬連れの方には先行して貰う。途中で犬がしゃがみ込んだので、私が先になった。

 一床山は15分もかからなかったのではないか。おおっと、思わず声が出る。東の筑波山の双耳峰の山頂部がみえる。北の女峰山から男体山、皇海山、袈裟丸山と西へ掛けて赤城山の雪山が並び、さらに西に、浅間山が美しい白い姿をみせている。いや、すごいなあ。でも富士山は雲の中。犬連れの男性がやってきて、周辺の、他のコースを説明してくれる。本当に関東平野が山にさしかかり起ち上がる所に、この三床山は位置している。空気が澄み渡っていれば東京湾まで見晴らせそうだ。

 そこから私が先行し、結局駐車場まで誰にも追いつかれず、すれ違いもせず歩き通すことになった。稜線歩きは快適で、コースの表示はまことに丁寧であった。行動時間は3時間。帰宅したのは午後2時。軽い体調チェックの山歩きであった。道を踏み外したことも、忘れかけるほどであった。

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