2023年4月20日木曜日

マンション価格の平均が1億4千万円!

 東京の新築マンションの価格が1室平均1億4千万円とTVが報道している。平均を押し上げているのは「新築」だけではない。オリンピックの選手村の(もはや中古物件といって良いような)販売も、不動産業者が買いあさりすでに転売しているものも出たという。6千万円余で手にしたものが9千万円余で売れる。こういうものが「平均」を押し上げている。

 何でこんなに高くなるのか。誰がこんなお金を持っているのか。そういう問いは、戦中生まれ戦後育ち・末期高齢者世代の金銭感覚。金融機関がお金を貸し、値上がりをも込んで転売することを目論めば、高いかどうかは「金利」の問題に見える。

 なにしろ金利は安い。政府の財布・日銀は金利をマイナスにまで持っていった。政府も景気刺激を意図して国債を発行し、日銀がその半数ほどを購入する。つまり市中にジャブジャブと紙幣を流してそれを「投資に」と誘いを掛ける。だが実体経済の中心である製造業は労働賃金の安さを目指して海外へ流れていく。日銀紙幣は不動産か株式への投資、あるいは外貨に換えて海外へ向かうしかない。米欧の景気と通貨の変動に不安を抱く欧米の投資家は円を逃避通貨と考えているのか、円を買って日本でやはり株式と不動産に投資する。株価が実体経済を反映していないといわれて久しい。東京の不動産バブルも、三十数年前のバブルの崩壊を再現するかのように、引き起こされている。短期的な視野のグローバル経済の成長論者は、実体経済がどうなっていようとも株価が上がっている間はほくほくとして資産の増加を喜んでいる。

 ところがこれが、日本だけの話ではない。欧米でもこうした金融バブルの到来が始まっている。シリコンバレーバンクやクレディスイス銀行の倒産がその始まりの予兆のように聞こえる。そこへ持ってきてコロナウイルス禍だ。政府はワクチンを買いあさる。医薬品業界は湯水の如く流れ込む世界大の資金集中に笑いが止まらない。日本も何百兆円を注ぎ込んだ。アメリカは景気刺激を含めて4千兆円規模の市場へのドル供給をしてしまった。それがまた、4年ごとの大統領選まで持ち越すことを時間的目安にするから、とどめを知らない。FRBが金利引き上げをしても一向に気にせずにアメリカの株価は上昇気分を崩さない。

 そこへまた、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。医薬品業界ばかりか軍産複合体も勢いを取り戻した。アメリカの石油などエネルギー産業界も、ロシアを封じ込め中東と手を組んで行こうとした。だが、細く長くでもいいから石油資源を上手に用いて石油以外の産業基盤へ移行しようとしていたサウジアラビアは、ロシア締め出しによって高騰する石油価格を好機とみて、ウクライナ戦争=ロシアへの経済制裁状態の継続を歓迎した。さらにアメリカの凋落を見越して、サウジアラビアはオイルダラーを中国元に切り替えて行こうとしている。当然中国もそれを歓迎してスイスの金融機関を舞台にそれをすすめる。それにお灸を据えたのがクレディスイスの破綻だったともっぱらの噂である。中東の中央銀行がバックボーンであるクレディスイス銀行が半値で買い取られたということは、オイルマネーの価値が半減したことを意味する。中東の資金がドルを見放して中国元にリンクされるのも潰す。それによって、中東のオイルマネーの存在感を一旦白紙に戻して目を覚まさせてやろうとするアメリカの陰謀だという論調がまことしやかに流れている。事実はそうなっているから、その情報が後付けの物語なのか、そうシナリオを書いて運ぶ手立てがアメリカにあるのかと、リテラシーのない私などはなるほどそうだったかと、ついつい腑に落としそうになる。

 不動産売買価格の高騰だけではない。IRの許認可によって世界の資金を集めようという大阪の発想は、まさしく有り余って浮遊する世界中の資金の落とし場所をつくろうという狙い。岸田政権が防衛予算の極大化を口にしはじめたことも、アメリカの軍産複合体の再興と無関係ではない。また日本の武器輸出を策定し、軍事研究を進めて独自の軍需産業を成長させようとするのも、その先鞭として有無をいさわず日本学術会議を席捲しようとするのも、防衛のためというイデオロギーに引きずられてではない。それよりも軍需産業を引き鉄として成長経済を何としてでも延命しようと「すがる懸命の藁」なのである。バブルの夢よ再びというか、すでにバブルに向かっている泡(あぶく)のような経済政策は、庶民の実態生活とはかけ離れ、中味はスカスカになってきている。

 GDPの成長と庶民の暮らしがかけ離れていて、どのような経済政策がいいのか悪いのか、もうワカラナイくらい次元を異にする話になっている。それを紐付けて話すとすれば、わたしたちの暮らしの実体が何であるのか。その実態はどう展開しているのか。そこから話し始めなければならない。経世済民は、随分遠くなってしまった。

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