2020年4月18日土曜日
「信頼」の根拠
一昨日の《コロナ対策の「民間チェック方法」》には「反応」がありました。むろん知り合いからですが。「早速朝起きて、外に出てやってみました。私はまだ大丈夫でした」と添えてあります。また別の友人からは、「元阪大総長の平野俊夫氏の纏められたもの」という《なぜCOVID-19はこれほど恐れられているか?》が添付されてきました。私の「民間チェック法」というのでは心もとないと思ったのかもしれません。ただみなさん、この先の行く末も含めて新型コロナウィルスの正体がつかめないことに不安を抱き、関心を持っていることがわかります。
その平野敏夫氏の「纏め」にもありましたが、「緊急事態宣言」でやっている「不要不急の外出自粛」は100m走、このコロナ対応はフルマラソンの可能性があるという所見は、欠かせない視点だと思いました。じつはその「纏め」を読む半月前に「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」というサイトが開設されたと報道で知って、アクセスしていた。日々のジョギングを欠かさない山中伸弥らしく「これから激戦、その後は持久戦」として《「マラソンと同じで、飛ばし過ぎると途中で失速し、ゆっくり過ぎると勝負にならない」》とコメントして「5つの提言」をしていました。
同じ医学領域とは言え(たぶん)専門外のこと。でもこうした「専門領域に通じた方」が、さらに専門家たちの言説を噛み砕いて「サイト」を開いてくれるというのは、私たち門外漢にとっては、ありがたいことです。山中伸也のサイトは、新型コロナウィルスに関する「情報」の信憑性を、「1、証拠(エビデンス)があり、正しい可能性が高い情報」「2、正しい可能性があるが、さらなる証拠(エビデンス)が必要な情報」「3、正しいかもしれないが、さらなる証拠(エビデンス)が必要な情報」「4、証拠(エビデンス)の乏しい情報 」と4段階に分け、病態や感染、対策にかかわるいろんな言説や風説を選り分けています。
さらに、内外の関連する論文を要約し、それに対する「コメント」を加えて、紹介しています。つまり、誰が読むか、誰に向けて書いているかをそれなりに分けて読み取れるように配置していますから、読む者の関心の深まり度合いに応じて踏み込むこともできるし、細かい内容は読み取れなくても、斯界の専門家たちが何に取り組んでいるかをみてとることはできます。ホッとしますね、こういうのを読むと。ああ、人間(の探究心)て、大丈夫だと感じるのでしょうか。日頃のメディアでは、政治家の贅言にうんざりしています。だがこういう人たちがメディアの表舞台に出てくることはなくとも、「専門家」としてその領域で頑張ってるんだと思うと、先行きの不安は、ずいぶん解消されます。
じつはそれだけではありません。山中伸弥のサイトは「スーパーマーケットに行く時の注意事項 米国医師会誌 4月9日オンライン版」なども要点を掲載しています。読むのが私のような市井の人ということを想定しているのですね。うれしいではありませんか。ノーベル賞を受賞したというのが、「私の信頼の根拠」にないとは言いませんが、それだけで畏(かしこ)まるほど幼くはありません。ノーベル平和賞のふらつき、経済学賞の視距離の狭さ、文学賞での「配慮」、あるいは物理学賞や化学賞を受賞した人たちの、あきらかに雲上人のような存在は、「権威」を通り越してしまいそうになるほど、関係のない人々という感じでした。マスメディアに登場するときは、今度はタレントのように持ち上げられて、それはそれで理由の有ることではありますが、「専門」とは別の次元の存在になっていました。それがぐうっと近くに(その専門領域にかかわって)現れたと感じたわけですね。
一体感を感じた、といえましょうか。ああこの人は、私の味方だと感じたのですね。
「サイト」を読みながら、感染力(Ro)がどのように算出されているか、インフルエンザと新型コロナウィルスとSARS、MARSとの感染力と死亡率の違いなどを、どう判断しているか譜に落とします。また、「わからない」ことをわからないとしたり、もっと時間がかかるとか、気休めを言わないことにも、好感を持っています。
さてそうして、いまは激戦で(外出自粛という)瞬発力を試されているのは、何とか持ちこたえているわけです。でも持久戦となると、どうだろう。山中サイトが紹介する「ハーバード大学の予測」では、ある程度「集団免疫」が出来上がるまでに2022年頃までかかるとしたり、またその後も、今のインフルエンザのように、あるいはそれ以上の感染力と死亡率をもったコロナウィルスの(小)爆発が繰り返されたりすると考えると、政府による「補償」とか「自粛」で対応できようはずもありません。私たちのような年寄りには、どうにでもやりようがあります。が、現役で仕事をしている人たちやこれから社会に出て自律しようとしている人たちにとっては、大事です。社会的な組み立て方も変え、経済も大きな転換を図って、暮らし方を変えていかねばなりません。社会・経済関係の専門家の出番になっているようですね。
「集団免疫」が出来上がるまで、私たち年寄りが持ち応えられるかどうかわかりません。せいぜい、個人的な免疫力をつけて、元気に暮らし続けるほかないのかもしれませんね。フルマラソンを生き延びる「健康法」ってものを、「自粛」かかいくぐってどう展開できるか。しかも他人にはうつさない構えも崩せません。静かに暮らし、静かに消えていくのが一番かもしれない。そう、思えます。
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