2020年4月27日月曜日
機能不全?の地方行政府
新型コロナの陽性者で自宅待機していた二人が死亡した埼玉県。知事の会見もちょっとだけ報道され、かえって、県は何をしているんだろうと普請が増した。報道はまず、首都圏としてひとくくりにするから、日頃、埼玉県の首長が都知事のように発信している姿を見かけない。
ところが会見で、二人の自宅待機者の死亡が確認されたことから、ホテルなどを借りて陽性者の収容ができるように検討すると知事は説明する。なるほどと思っていたら、なんと、一人の死亡は、もう一人の死亡の十日も前ではないか。ならばなぜ、その十日間の間に、ホテル収用などの手配ができなかったのか。東京都や神奈川県はとっくに、ホテル借用の準備に取り掛かっていたのに。しかし、記者会見でそれを問う質問が出たのか出ないのかわからないうちに、TVの話題は次へ移ってしまう。
だから県民としては勝手に予想するしかないのだが、埼玉県の首長が自在に動けないのはなぜかと、推測するしかない。当然流言飛語が飛び交うようになる。
知事が無能なの? と、身近にいる主婦は思った。そうじゃあるまいと、私は考えた。
(1)この、大野元裕知事は自民・公明の青島健太候補を破って当選した、立憲民主など野党系の候補であった。県政を動かすのに、県議会与党の自公を差し置いて勝手に何かをすることができない。予算など、すでに組まれていることを執行する分には、不都合はないし、それなりの対処はできるであろうが、「補正予算」を組む必要があることは、手足を縛られている。とすると、自公が、知事の手柄にしたくないためにブレーキをかけているのか。まずそう思う。
(2)この大野知事は、衆議院議員から鞍替えして知事になった。父親は「川口自民党」をバックに川口市長を長年務めてきた。つまり保守政治家の後継である。根廻しとか、議会対策とか、保守政治のやり方については熟知しているとも考えられる。だが逆に、一匹狼的に自らの政策を掲げて世論を領導するような手法を知らない。その点が、都知事とも、神奈川県知事とも違う。だから外から見ていると「無能なのか」と思われるほど、何もしていないように見える。突破力がない、ともいえる。
「川口自民党」は、昔から、自民党のなかの独立独歩派であった。かつて来、川口市民は、「自民党川口支部」ではなく「川口自民党」だと肩肘を張るのを、好ましく思い支持してきた。それがあったから知事選でも、大野市長の後継者である立憲民主党の大野候補を「川口自民党」は全面支持して、埼玉県自民党の本部と対立した。そして、選挙で勝った。勝ったから余計に、自民党内ではしこりが残る。保守政治のやり方が大野知事には通用しない。
(3)埼玉県の官僚が、すっかり保守政治に感化されて、新規の事態に対応する力を備えていないのかもしれない。議会の主流に目配りするばかりで、今回のような感染症に緊急に対応することが及び腰なのではなかろうか。つまり官僚もまた、知事の指示による以外は、新提案をして乗り出していくほど、大野知事のバックは強固ではない(と官僚たちは見越している)。
(4)ことに今回の新型コロナでは治療サイドの当事者にあたる県の医師会などが、知事のバックになろうとしなかったのかもしれない。県内における医師会の力は強い。ことに個人経営の町医者が多くを占めるから余計に、コロナを敬遠し、大型医療機関にそれを押し付けはするが、それと連携することに及び腰であったかもしれない。「自宅待機」もそうだが、「ホテル収用」に切り替える場合にも、大型医療機関ばかりか、地域の「かかりつけ医」の協力を得なければ、患者を手厚く診ることはできない。その点で、医師会の協力を得ることができなかったのかもしれない。
(5)前知事の上田清司は、かつての「民主党」をバックに4期知事を務めた。上田は自民党、新生党、新進党、などを渡り歩き、民主党に身を移してきた保守政治家。2003年の知事選で勝利して以来、保守政治諸党の混沌の最中を泳ぎ渡ってきただけに、県政を取り仕切るにはなかなかの力を発揮し、議会与党の自公の対立候補を寄せ付けず、16年も知事の座に居て、昨年、大野元裕に禅譲した格好であった。
上田は今回のコロナ対応について、政府対応の「あいまいさ」を指摘しておいてから、「知事権限で利用できる県の施設はいろいろあるから、それを(自宅待機代わりに)使うといい」と大野を励ましている。
わたしたち庶民は、上記のような諸事情を勘案して「流言飛語」的に埼玉県政を推察するしかない。
県知事は、まずは発信力をつけて私たちが読み取れるように、直面している事態を明らかにしてもらいたい。もしこの「機能不全」が議会与党の「不協力」のせいなら、それはそれが明白になるような手立てを講じればいい。
自らの「不明を愧じる」なら、与党に鞍替えしても頼りになる力を背景に持った方がいい。
即応力が足りないなら、それこそ、都知事や神奈川県知事がやっているようにマスメディアを味方にして、力をある人たちを動かす方法を見いだせばいい。それをやってこそ、政治家ってもんだろうがと、ちょっとばかり憤懣をもって言ってやりたい気分になっている。
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