先日(8/10)「科学的知見と現実的実効性の間」と題して、TVで耳にした「コロナウィルスに効くワクチンなんてできませんよ」ということについて、これ、どういうこと? と准専門家に尋ねた。この方、薬学の専門家ではなく、現役時代に薬を扱う業界に身を置いていた方。ご近所の友人である。
以下のような返事を頂戴した。
*** MGSさんからの返信(2020/8/15)
相変わらず生真面目に悩んでますね! 私なんぞは右の耳から左へ、中間にフィルターなしなので、何の悩みもありません。難しいお話で、回答などできる訳ありませんが、私なりの理解??をまとめてみます。
まず第一番目に、「コロナウイルスに効くワクチンなんてできない」という発言の背景が分かりませんね。第二番目に、ワクチンの事を聞く相手を間違えています(笑)
と言いつつ、「ワクチン開発について」
1.細菌やウイルスに対する、それぞれにメカニズム(作用機序)の異なるワクチンが多数存在します。
2.同じウイルスに対してであっても、研究チーム毎に異なったメカニズムのワクチンになる。メーカーが違えば作用機序が異なる。
3.ワクチンとして人体に投入する「抗原」としてウイルスのパーツの何を選択するかで違ってくる(例:ウイルス本体を弱毒化、DNA、DNAの構成要素であるRNA、ウイルスの突起部分のタンパクなど)
4.病原体は何れも「生き物」なので、環境や薬物に暴露することで生理機能を変化させて生き残ろうとする(進化又は変異)。つまり薬は効かなくなる。
5.感染症の薬の開発は、常に病原体の変化(変異)のスピードとの競争です。
6.太陽のコロナに似た形状からコロナウイルスと云われるそうで、その正体はあの突起ですね。
7.コロナは先ず、その突起を使って動物の細胞に侵入する。次に宿主のDNAを乗っ取って自らのコピーを増やしてゆく。
8.ワクチンは感染の各段階でウイルスの使うパーツ(抗原)を事前に免疫系に投入して学習(抗体産生)させる。
9.開発段階でどのパーツを抗原として選択するかで各社のワクチンの寿命が異なると思われる。年末か来春には供給が始まるので一息つけるだけであって、変異したニューバージョンのウイルスへのワクチン開発は永遠に続く。マーケットはだんだん小さくなる。
10.もし、抗体のできにくい人がいても、ワクチンが普及して社会全体で集団免疫の状態(長い年月を要するが)になれば、結果としてその人も感染リスクは下がる。
11.地上から撲滅されたと云われる「天然痘」のワクチンは極めて強い免疫を発現すると云われたし、その上に変異の遅いパーツを選択したという幸運に恵まれたのかも知れない。
12.100%が無いのは自明であるが、「コロナに効くワクチンはできない」とはウイルスは変異し続ける事を言っているのか?
因みに、「臨床試験について」
1.ワクチン(抗原)を投与すると抗体(免疫タンパク)が産生し、その量が多く、長期間維持されるほど有効だといえるが、必ず必ず個人差がある。
2.インフルエンザワクチンでもガッチリ効く人もいれば、罹患するが軽症の人、罹患して酷い目にあう人、死亡する人、様々だが上記1.の違いが大きい。
3.通常、臨床試験での「有効率」というエビデンスを基に医薬品としての承認が判断(安全性は当然)される。旧来の薬より有効率が低ければ原則、承認されないが、今回は新薬なので、多少甘い(滅茶苦茶甘いかも?)。
4.体内産生した抗体の量や保持期間の測定、投与量の設定などは初期段階の試験で、臨床試験の第1相、第2相の段階。ここで第3相以降の可能性を判断する。ロシアを含めて先行する5社ほどはこの段階だと個人的に思っている。
5.真っ新の健康人にワクチン投与し、感染者の中に放り出し、有効性と安全性を判断する最終段階はこれから始まる。ここからは人道的に問題の大きい試験だし、コロナを制圧したといわれる中国や一部のアジアの国ではもはや患者が少ないので、試験が進まない。だからブラジルとか特定の国でやることになる。
6.特に安全性に関しては年単位の時間を要する。プーチンは明らかにフライングだが、別の意図があるのだろう。選挙目前のトランプを揺さぶっているのか(笑)。
福島の時もそうでしたが、専門家というのは業界用語をひけらかして満足しているばかり。マスコミを含めて、迷える子羊を安心させるまで手を尽くさない! また、レイムダック状態の安倍政権は経済界の声しか聞いてなく、責任をすべて国民に押し付けて逃げ回る。腹立たしく暑苦しく息苦しい夏が続きます(笑)。
思いつくままに書きましたが、私などには到底及ばないお話でした。 笑ってやって下さい。 MGS
*** 差し上げた返信。
MGSさま
ご丁寧な返信、ありがとうございました。おおよそのイメージは、つかめました。ワクチンにそれほど大きな期待を寄せるってことが、今の段階では無理だよと教えていただいたようです。
でも、政府もすっかり「自己判断で」という態度をとっていますので、年相応の自己防衛をしなくてはなりませんね。ワクチンなんて、遠い未来に期待しないで、日々人混みを避けて、野や山へ出かけるしかありません。
渡哲也が私と同い年です。こちらは、まだ生きている幸運を言祝いで、何時でも彼岸へ渡る心もちだけは持っていようと考えています。
お互い、(と言ってもあなたはまだ若いのですが)頑張りましょう。
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