2020年8月21日金曜日

幸運の証か

 新潟県の南魚沼警察署から手紙が来た。表書きに「会計課」とあった。カミサンは「何か交通違反したの?」と言いながら私に手渡す。中を開けてみると、「遺失物確認通知書」とある。

 なんと、8月5日に巻機山の割引沢を遡行中に落としたカメラを、どなたかが拾って届けてくれたのだ。みると、届は8/6になっている。拾ったのは5日か6日か。

 でもどうしてカメラが、私のものと分かったのだろう。思い当たったのは、撮った写真だ。巻機山麓キャンプ場にテントを張った際、テント場の雰囲気を記憶にとどめておこうとシャッターを切った。その時、テントの脇に置いた車のナンバーも写っていたに違いない。そうだ、そうに違いない。さっそく、落とした経緯(割引沢の右岸を遡行中、岩場で滑ったときに落とし、沢の激流に落ちてしまったと思い込んでいた)と、それが私のものと判断したSDに残っていた写真の(テントとともに車のナンバーが移り込んでいた)ことを記し、手数を掛けたことへの御礼と連絡をくださったことへの感謝を記し、受取人払いで送ってほしい旨と拾ってくれた方への連絡先を教えてほしいことを書き添え、運転免許証の写しを同封して、南魚沼警察署へ手紙を出した。

 

 たぶん、その手紙が到着した日であろう、南魚沼警察署から電話があったそうだ。

「本人に確認したいことがあるので、**日にまた電話する」

 といったそうだ。

 **日に電話が来た。私の名前、落とした日にち、場所と経緯、あわせて写真に写っていた車の色やナンバー、テントの色と大きさを確認し、「送ります」とやりとりがあった。

 そうして昨日、ゆうパックが届いた。「こわれもの」とシールを貼り、緩衝材でくるんだカメラが入っていた。あわせて、拾ってくれた方の住所とお名前、電話番号を記して、爾後のことを相談してくださいと書いてあった。

 

 千葉県の方。あの日かその翌日に、あの沢を遡行する方がいたこと自体が、幸運であったと思う。カメラが沢に落ちなかったこと、雨が降らなかったであろうこと、いくつもの幸運に恵まれている。さっそく手紙を書いた。

***

前略

 突然にお便りを差し上げる失礼をお許しください。

 この度、巻機山の割引沢で、私の落としたカメラを拾ってくださり、ありがとうございました。今日、南魚沼署から品物を受取り、あなた様が拾ってくださったことを知りました。

 割引沢の右岸の少し高い岩場をトラバース中に足を滑らせて岩にしがみついたときにカメラが落ちたものと思い、てっきり5メートルほど下を流れる割引沢の激流に流されてしまったものと思っておりました。失くしたことに気づいたのは、その先の沢が滝になっている地点に来てからでしたので、あきらめておりました。

 たまたま写真の一枚に、前日巻機山麓キャンプ場で撮影したテントとともに私の車が移り込んでいたため、南魚沼署が調べて私に連絡してくれたもののようです。

 ありがとうございました。5年程使い込んだカメラではありますが、記録用に手軽に映して使っておりました。戻ってきて、ほんとうに喜んでおります。

 重ねて感謝申し上げます。

 ところで、南魚沼署からは、

    「拾ってくださった方には物件の価格5%~20%に相当する額の報労金を請求する権利があります。報労金については、あなたと拾ってくださった方で額を決めることになりますので、相手の方に連絡を取ってください。」

 と、説明がありました。

 あなた様の御意向に沿うように始末したいと思っておりますので、お手数をおかけしますが、ご希望のところをお知らせくださりたくお願い申し上げます。 草々頓首

***


 割引沢遡行のことは、先日(8/6)の本欄「幸運頼りの限界が見えた」に書いた。無事に帰還したことが「幸運」であったと、わが身の限界を感じたことを記している。それに加えて、この落し物の無事の回収。写っている写真は何でもないものだが、つくづく私は運が良いと、思った。

 むろんこの幸運に甘える気は、毛頭ない。いましばらく気持ちを引き締めて山へ行かせてもらおうと、よろこんでいる。

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