奥日光に来ている。ハイキングをして紅葉を愉しむというのが、当初の訪問目的。ところが、それを聞きつけたカミサンの鳥友が「私たちも、今日奥日光に行きます」と、出発の日に連絡してきた。紅葉なので、いつもの通りいろは坂は渋滞すると考えて、朝6時半前に家を出た。やはりうまい具合に渋滞前を走って8時半には赤沼に着いた。
駐車場わきのズミの木にはたわわに赤い実がなっている。それを啄ばむ小鳥が群れを成している。アトリだよとカミサン。こんなにたくさんのアトリが来ているんだ。もっと南の方へ向かう途中なのかもしれない。その群れの近くに、マヒワが2羽飛び込む。アカハラが現れる。うん? 眉斑があるよと、マミチャジナイだとカミサンがいう。と、上空を、猛禽が飛ぶ。ハイタカだという。
渋滞に巻き込まれた鳥友が、1時間遅れで着いた。もうその頃には何百台か入る駐車場がいっぱい。私などが双眼鏡をもって鳥をみていると、近づいてきた車が「もう出ますか?」と聞いてくる。鳥友は、かなり乱雑に止めてあった車の隙間に自分の車を押し込んだ。
赤沼は、戦場ヶ原の入口。だが戦場ヶ原は目下、昨年の台風で壊れてしまった木道を補修中で、入域できない。ほとんどの人たちは、小田代ヶ原へ行くか、エコバスに乗って千手が浜の方へ行くようだ。バス待ちの人たちの列も長くなっている。日光白根山が雪をまとって外山の向こうに顔をのぞかせ、いかにも日光の最高峰・盟主という風貌である。
私たちは、赤沼の奥、開拓村の方へ向かう。ここは昔、戦場ヶ原が開墾されたときに、最初に入植者がはいったところ。今は畑となり、雪のない季節の慣例を利用し、日光市の麓の方の農家からイチゴや栽培植物の苗を預かり、冬場が近づくと、それを麓に戻す事業を行っている。畑の苗はイチゴか? 作業をしていた方に訊ねると「これはオダマキだよ」と返事が返って来た。そんなものまで育てるんだ。畑のあいだを歩いていると、男体山から大真名子山、小真名子山、太郎山、山王帽子山、三ツ岳が陽ざしを受けて明るく、とてもクリアにみえる。その山体は針葉樹の緑を背景に、黄色や赤の紅葉が映え、ちょうどいい季節に来た思いを強くする。
はて、行き止まりだったろうかと思う頃、電信柱が左へ折れて森の中に消えている。ああ、たぶんここを抜ければ、三本松だよと踏み込もうとする。と、ぱあっと小鳥が飛び立つ。アトリが森の中の踏み跡にたまった水を飲んでいる。しばらく見てさらに進むと、光徳から三本松へのクロカンのルートに入る。十人ほどの人たちがスコープを構えて何かをみている。ムギマキがいるという。いる、たしかに。コガラもいる。メジロもいる。シジュウカラもいる。ヒガラもいたように思った。
お昼を済ませて赤沼から小田代方面へ少し入り込む。こちらではムギマキのオスをみることができた。カメラを持った鳥友はクロツグミもとらえていた。
こうして、絶品の紅葉に眼福の小鳥たちを加えて、奥日光ののんびり時間の一日目がはじまった。
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