2020年11月26日木曜日

静かな奥深い諏訪山

 昨日(11/25)家を出たとき霧のような雨が降っていることに気づいた。降水量でいえば0mmであろう。ときどきワイパーを動かして雨滴をぬぐう。鶴ヶ島を通過するころには上がっていた。高速道を下仁田で降り、南下して上野村に向かう。途中でnaviがフリーズした。こうなると地図を読んで経路を確認しておかねばならないと思う。道路標示に「浜平→」が目に留まり、そちらへのトンネルを二つくぐる。と、林道が行き止まりになり、ガードレールの外が草地の駐車場になっている。浜平登山口だ。

 今日の諏訪山は、最初4人で上るはずであった。Sさんがお孫さんのお付き合いで行かないことになった。先週、天人山塊の毛無山に同行したkw夫妻が、疲れが取れないと不参加。こうして私の単独行になった。この山、当初私が調べたコースタイムでは5時間であった。ところがkwmさんがネットでみると6時間前後。毛無山は往復5時間20分であったのに6時間を超えたのを勘案したのであろう。ちょっとムリとみたのであろう。地図を打ち出して、スマホのyamapの地図でコースタイムをチェックすると、5時間50分であった。累積標高差は1151mとある。私の単独行の場合、早くなりすぎるのを抑えなければならない。早すぎて、後半で疲れが出るのだ。

 8時20分、歩き始める。湯の沢沿いの入口対岸には、「浜平鉱泉」と何軒かの家屋がある。右岸の20メートルほど高いところから沢に降りる。それなりに踏み跡が残るが、沢のごろた石と落ち葉で分かりづらいところがある。徒渉するところには、丸太を組み合わせた橋が架かる。ところどころに赤いテープがつけられ、それに注意していればルートを見失うことはない。

 沢からはずれる標高800mほどから1250mほどまでの間が、ジグザグの急登になる。紅葉はすでに終わっている。標高900mくらいのところにカエデの紅葉が2本、赤い色を枯れた木立の間に屹立させている。山はとっくに冬なのだ。湯の沢の頭1250mに着いたのは9時44分。歩き始めて1時間24分。コースタイムと5分しか違わない。いいペースだ。

 その先、標高1300mほどまでは稜線歩きになる。いくつかあるピークを巻いて踏み跡がついている。滑り落ちそうな危うい所もないわけではないが、バランスを崩さず歩けば心配はない。1時間のコースタイムの所を45分できている。ついつい調子に乗って急いでしまう。そのさきが、三笠山への上りだ。ロープのかかる岩場が何カ所かあるが、むつかしくはない。鉄の長いハシゴのかかるところが二カ所ある。三笠山1491mに10時56分。湯ノ沢の頭から1時間半のところを1時間12分。ちょっとコースタイムより早いか。登山道から眺めたこの三笠山は、峨峨たる山が木を装っているようにみえる。三笠山を越えて諏訪山に向かう途中で振り返ってみると、そこの深い漆塗りのお椀を伏せたようにぽこりとした山容を、木々の間を通して見せている。三笠山からの眺望は見事であった。上州の山並みの向こうに八ヶ岳など、甲斐の山々が輪郭をくっきりとしてみえる。湿度も低いのだろう。遠望が利くのは、ここだけであったと、諏訪山の山頂へ行って思った。

 三笠山から諏訪山へ向かう地点に一カ所、どう降りるだろうと思案する岩場があった。斜度は60度、15mほど。二枚の岩がぶつかり合って直角に凹んでいる。縦に罅割れたところはあるが、手や足を掛けるところがみつからない。ただ、ロープが2本、新しいのと古いのが掛けてある。かつてはこういうところをザイルで確保して肩がらみやエイト環をつかって下ったものだが、まさか肩がらみで降りることを想定しているとは思えない。わずかでも足場になるところに爪先をかけ、靴裏を岩に張り付けてザイルをもって身体を立てるようにして降った。この同じところを復路では、手足を掛けるところが簡単に見つかり、ロープをつかむことさえしないで通過したから、下りのときによく見極めて通れば、ムツカシクはないということであろう。

 諏訪山山頂直下でのこと。正面の大岩のすぐ左側を上れば山頂部につくと思ったが、岩の右裾に踏み跡がある。へえ、そちらからも行けるのかと踏み込んでみた。だが大岩を回りこんだところで踏み跡は消え、ている。枯葉が降り積もった急斜面を見上げると、上に山頂部と思われる平坦部が見える。元に戻るのも面倒だと、落ち葉にストックを突き刺して、まるで雪山のラッセルのようだと思いながら、急登を上った。案の定、そこが山頂であった。11時28分。登山口から3時間8分。ちょっと早すぎたくらいで、いいペースであった。山頂部は縦に長く、木々に囲まれて眺望はない。太い古木を横たえてベンチにしている。やわらかい陽ざしが降り注ぐ。そうだ、今日はまだ、誰一人として逢っていないと気が付く。お昼にする。ここで20分過ごして、下山にかかる。

 往路を戻りながらコースタイムとの差を頭で計算している。三笠山までが20分の所を2分ほど余計に掛けている。三笠山から湯ノ沢の頭までは1時間5分のところを、ほぼ1時間4分。その途中で、脚に異変を感じた。左太ももが攣りそうになる。右の太ももにも、そういう感じが走る。わりと平坦な稜線を歩いていたときである。立ち止まって、スパッツの上からエアゾルをかける。しばらく違和感が落ち着くまで足を休ませる。ゆっくり歩いて違和感をほぐす。緩やかに炎症が収まり、違和感が遠のいていく。やれやれ。前回これが起こったのは、蕎麦粒山へ行った帰り道だった。そのときも同じような手当てをして、少し立ち止まっていて、収めた。やはり前半と還りの岩場が負担をかけていたのであろうか。

 湯ノ沢の頭からの下りが1時間のところを約1時間。何と順調に上り下りしたことか。ただ、急斜面を下るのは足への負担が大きい。太ももの違和感がどうなるか気遣いながら、下った。幸い何事もなく、バランスを崩すと危うい所も難なく通過して、駐車場に到着した。14時21分。出発してからちょうど6時間。山頂の食事タイム20分を差し引けば、歩行時間は5時間40分。まずますのコースタイム山行であった。そうそう、誰一人、出会わなかった。静かで奥深い山であった。

 先週の山は、帰りに暗くなる運転のことが心配であった。今回も、日暮れは早い。4時を過ぎてからは灯りを点けて走った。帰宅したのは4時45分。すでに街灯も点いていた。もう冬場、6時間を過ぎる山行はムリなのかもしれない。

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