2019年11月29日金曜日

晴れたので、ワアーっと人出の山


 このところ天気が思わしくなかったが、今日は久々の晴。じつは水曜日の山行を金曜日に変更しておいた。ところが参加者の一人が今日、入院手術ということになった。
「私は大丈夫ですから、行けます」
 と奥方からは返事が来たが、でもそうはいくまい。
「延期します。期日は後日に」
 と送信すると、
「やはり、そうですね」
 と重ねて返信。一緒に行くことにしていた方に知らせると、即座に同意の返事。


 しかし、せっかくの晴の日に家にいることはなかろうと、正月のルートの下見に行ってきた。
 小仏峠から景信山に登り、稜線を辿って小仏峠から城山を経て、高尾山に向かい、薬王院へ初詣としゃれてみようというコース。下山の高尾山口駅近くの料理屋で新年会をするということまで、今年の正月に決めてある。
 下見をするほどのコースではない。台風15号と19号のせいで、くずれたルートがたくさんあるという。現地へ行けば「崩れています」「通行禁止」と表示して、ロープを張ってあったりする。今年の正月に「わたしの里山にする」と決めたこともあって、行ってきたわけ。

 高尾駅8:12のバスに乗り、終点の小仏バス停標高290mから歩き始めたのは8:35。バスは臨時が出た。終点でわんさと降りた。皆さん、景信山や小仏峠や陣馬山や高尾山へ向かう人たち。降りてすぐに歩き始めたわたしが先頭を切った。しかしすぐに、高尾駅から走ってきたトレイルランナーに追い越された。また、タクシーが一台、先へ行った。中央高速道の小仏トンネルの入り口辺りで、景信山への踏路に入る。ゴオーゴオーと響いていた車の音が、ぷつんと止む。40年配の筋肉質の恰幅のいい単独行者に道を譲った。まだ後ろ姿の見えるトレイルランナーを追って、ずいぶんと早い。

 鳥の羽根が散らばっている。首のないハトの死骸が、その端っこに転がっている。足に標識がついている。伝書バトが旅の途中に襲われたのかもしれない。襲った側からすると、折角獲物を手に入れたと思ったら登山者がやってきたので、食べるのを断念したのか。観ながらそんなことを考えていると、後からきた70年配が、
「昔はハトを飼いましたね」
 と懐かしそうな声を出した。
「ええ、ということは団塊の世代ですか」
「そうです、戦後すぐですね」
 と応じ、ずうっと私のあとをついてきた。

 60代女性の二人連れが道を譲ってくれる。
「早いですね」
「いえいえ、バスに間に合わなくて、タクシーで来たんです」
 と、うしろで団塊の世代と言葉を交わしている声がする。

 どこかのTVクルー7人ほどがカメラを回している。何だ断りもしないでと思ったが、まあ、紅葉の小仏城山や高尾山を写しに来たのだろう。それとも、久々の晴天に山歩きをする人たちを撮りたかったのだろうか。でもずいぶんと大掛かりな人数だね。NHKかな、と思う。

 上から降りてくる人、何人かとすれ違う。まだ9時少し過ぎ。どこから入って、どこへ行ってきたのだろう。バス停から55分。景信山727mに着く。高尾山の方からやってきた人たちだろうか、茶屋のベンチに腰かけている。その向こうの山並みが、見事に陽を浴びて屹立する。おおっ、富士山が雪をつけたくっきりとした姿を、惜しげもなく見せている。
 傍らにいた人が、
「あの左のが大室山、その左に雲を少しかぶっているのが蛭が岳ね、その左の丸い山頂が丹沢山、ずうっと左の尖っているのが大山」
 と解説してくれる。大山の少し左側に三つのピークをとがらせているのが大山三峰だ。どれもこれも今年登ったぜい、と思うが、頷く人は誰もいない。

 小仏峠への稜線に踏み込む。昨夜までの雨が残って、ぬかるんでいるところもある。霜が降りている。凍ってはいないから滑る気遣いはない。30分で小仏峠548m。バス停から登って来るルートと合流する。脇にある案内表示で初めて知ったのだが、城山というのは「小仏城山」というのが正式名称らしい。へえ、そういう冠詞がついていたんだ。峠から上りにかかる。陽の当たらない暗いルート。20分ほどで城山670mに着く。

 広い山頂の茶屋は週日はお休みらしい。富士山はすでに雲隠れ。大室山が雪化粧をしているのが、はっきりとわかる。蛭が岳の雲が取れ、山頂のとんがりがわかる。テーブルを囲んでいる人もいれば、一段下の草地にシートを敷いて、相模湖を眺めている人もいる。あちこちに、今日の晴れ間を愉しみに来ているのだ。

 城山から高尾山へ行く途中にある一丁平で、この夏一緒に、槍ヶ岳表銀座を縦走した山の会のysdさんとばったり出会った。
「やあやあ」
「ずうっと天気が悪かったから、どこか行きたいって思いましてね」
「この前来たときにはswdさんに逢ったんですよ」
 と、やはり山の会の人と出逢った話をする。彼女もうずうずしていたようだ。
 
   高尾山の山頂599mに11時20分。石垣に腰かけて、お昼にする。ここはもう、街だ。たくさんの人がいる。2歳ほどの子どもを二人連れたママがいる。一人はベビーカーに載せ、もう一人は前に抱っこ。ママの服装はしっかり山スタイル。筋肉補強スパッツも履いている。いや、すごい。ベレー帽をかぶった若い女性と髪を頭の上で丁髷のようにまとめている女の人。街中のファッションだね、これは。ストックを突いた山ガールも山姥も山翁も、皆、陽ざしに嬉しそう。観ているだけで、こちらも気持ちが良くなる。小さい子が4,5人、人を押しのけるように走り回る。おっと、おでんの器をお盆に載せてテーブルへ運んでいる人にぶつかりそうだ。

 お昼に30分も過ごして、薬王院へ向かう。こちらも人がいっぱい。ご~んと鐘を撞いている人がいる。おみくじを読んでキャハハと笑うカップル。まるで、もう正月が来たような参拝客だ。薬王院から下山路のケーブルカーの近くへ向かう。参拝に来ている人とすれ違う。下山する人ものんびりと歩いているから、追い越す人も出てくる。声を掛ければいいのに、黙って追い越そうとするから、やってくる人と先行している人と追い越す人との身体がぶつかる。先行する人は、慌てて身体を脇に寄せる。そうか、歳末の雑踏か。外国語が響く。大きな声で喋りながら歩いている。欧米系の言葉ではなさそうだ。おや、こちらはタイ語かな。中国語か、子どもの叫び声がちゃりちゃり聞こえる。高尾山は、紅葉の季節を迎え、わんさと訪ねてくる人がいる。

 1号路をとって、高尾山口駅まで歩く。全部小石を混ぜた舗装路、傾斜は急だ。上ってくる人たちは、息が切れそうだ。ここでも外国語が飛び跳ねている。グループが道いっぱいに広がって登ってくる。下っているのは私と私の前を歩くご婦人。ところが、こちらとぶつかりそうなところを歩くスマホをもった若者が除ける気配をみせない。私の前のご婦人が、わきへ除ける。その若者は道いっぱいに広がった同行者と喋りながら私にぶつかってくる。私は意地になって避けない。喋っているのが外国語だとわかって、「無礼者」と声を上げた。若者はパッと道を開ける。そうだよ、日本に来たら日本人のように振る舞え、と口に出さずに毒づく。

 駅に着いたのは12時40分。歩き始めて、約4時間。お昼の時間を除くと3時間35分の行動時間か。正月には、お昼を軽くして、新年会に流れ込まなければならないなあ。でも、里山としては、快適な歩きであった。太陽、燦燦に感謝。

 電車は待ち時間がたっぷりある。その上、武蔵野線が遅れている。3時前に帰宅。こうして山行記録まで書いてしまった。

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