2019年12月2日月曜日
人知れず消え去る、か
先日、団地の私の階段の上の階の奥様が、ご亭主が亡くなった、とご挨拶に見えた。一週間前、救急車で運ばれ手当てを受けて家へ返され、その後容体が悪化して再び救急車で搬送された先で、身まかられたという。知らなかった。救急車がやって来たことにどうして気づかなかったろうと思ったが、あるいはちょっと外出したときに、そういう動きがあったのかもしれない。
ご亭主が大腸がんを患って手当てをしていたことは、昨年、直接ご本人から聞いていた。同じ階段の別の階に住んでいる方も一緒に話を聞いて、「いやじつは私も大腸がんの手術をしましたよ。でも、こいつは案外生き死にに関係なくて、治りますよ」と笑って、ご当人に応じていたのが、印象的であった。
彼が、退職後にであろう、競技用自転車で出かける姿はよく目にした。がっちりした体格のスポーツマンタイプ。私より10歳ほど若い。ここ数年は、歩いている彼と遭遇することがあった。街中と言っても住宅街。おやこんなところでというほど何キロも家から離れた市街化調整区域が住宅地に変わり始めた地区で、「おや、珍しい、こんなところで」と挨拶を交わすようであった。
家族葬として内々に葬儀も済ませ、ともかくご挨拶だけと言ってお奥さまが「ご報告」にみえたわけだが、まあ、そのままというわけにはいくまい。一番上の階に住む階段役員の理事長に「ご存知でしたか」とメールをすると、団地の管理事務所に届けがあって知ったので、すぐにご挨拶に伺ったと応答があった。自治会長にも連絡をして「弔意」を表する手続きをとってもらったとも。ではわが家もせめてお線香でも上げさせてもらおうと考えていたところ、やはり同じ階段の方から「ご一緒させてもらえませんか」と話しがあり、一昨日、お尋ねしてお線香をあげ、少しばかりお話をしてきた。
68歳。昨年の5月に心筋梗塞を起こしてカテーテルを入れる施術をし入院していた折に胃腸の異常が判明。その後精密検査をしたところ大腸がんが発見されたという。ステージ4であったというから、末期がん。医者嫌いで、仕事をリタイアして以来健康診断を一度も受けなかったそうだ。わが家のカミサンとご一緒した上々階の奥様と話しているのを見ると、女同士というのは、かなり打ち解けて話すようなかかわりを持っていたのかとおもうほど、親密であった。考えてみるともう、30年近くもここに住まわっているわけだから、親密であっても不思議ではないが、でも日頃世間話をするわけでもないから立ち話程度であろうに、私ら男同士よりも立入り方のハードルが低い。コミュニケーション能力の性差が思い浮かぶ。男たちは団地管理組合の理事を交代でやって来たから、その都度の役回りでどのような方かを知らないわけではない、という程度の「付き合い」であった。
でも奥さまからの「ご報告」があってよかった。もしそれもなければ、何カ月もたって、上々階の方たちとの立ち話しから「噂」を聞いて、でも奥さまと顔を合わせても直に聞くわけにもいかず、知らないふりをして通すようなことになったのではないか。私自身の世間付き合いの不器用さに思い当たる。同じ階段のご近所の「訃報」はこれがはじめてであるが、この程度の「付き合い」は欠かさないようにしないとなるまい。そうでないと、人知れず消え去ることになりかねない。ま、でも、それはそれで、悪くはないが。気楽なご近所のお付き合いがクールでいい。
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