好天に誘われて今日(3/17)奥武蔵の山へ行ってきた。今帰ってきて、こうして山行記録を書いている。まだ、午後3時前だ。足を運んだのは飯能市上名栗の名郷から山間部へ深く入るルート。林道山中線をつめて、その辺りに車を置き、妻坂峠~大持山~横倉山~ウノタワ~山中へぐるりと回ってくるコース。コースタイムは4時間ちょっとだと踏んで、皆さんへ案内した。私にとっては、週1の足慣らし山行。結局、単独行になった。
そのコースを観た山の会のkwmさんが「妻坂峠入口の林道山中線は、去年の8月付の掲示では橋が崩落し通行止めとなっていた」と知らせてくれた。ネットで調べると、「埼玉県の林道の通行止め情報」というのが見つかり、県内の林道のいくつかが「台風19号のせいで崩落などがあり……」と通行止め箇所を記しているが、林道山中線が入っていない。そのサイトに電話番号を掲出していた「飯能県土整備事務所」に電話をして、様子を聞いた。ところが電話口に出た人は「わが方では管理していませんので、県の農林振興課に問い合わせてください」という。電話番号を聞いたが「わからない」と返答。何だか、責任の押し付け合いのような感触だった。
ま、いいや。台風19号なら1年半も前。橋が落ちている奈良、その手前まで車で行って、適当に車をおいて、ひと回りして来ればいいだろう。もし沢を渡り切れないなら、引き返せばいいやと考えて、出かけて行った。
名郷から白石の石灰石採石場方面への道を分ける林道山中線の入口地点に「橋が崩落、通行止め」の表示がある。車が入れないということのようだ。歩き始める。8時48分。行けるところまで行って様子をみようと林道をツメル。500mほど入った二つ目の橋のところに、カラーコーンにバーを渡して、「通行できません」と表示してある。その橋は壊れていない。林道の脇に車をおいて、そこから歩く。片道35分だから、往復で1時間ほど余計に歩けばいいだけだ。
林道の終点までに5つ橋があるうちの下から4つ目が、すっかり道からはずれて落ちていた。だがその脇に、工事用の橋が掛けられ、歩いて渡る分には、何の不都合もない。そこを渡り、ウノタワからの横川林道と合流する分岐のところまで25分で着いた。その上の林道終点辺りは、広い草付きがあり、車が通れば、そこへ幾台もおける。1台軽自動車が置いてあったが、放置されたもののようであった。「ウノタワ周辺ハイキングコース」と銘打ちコースタイムを書きこんだマップの掲示板があった。「ウノタワ」というのが、この地では売り出しの一つのようだ。なんだろうウノタワって。
この林道山中線沿いの沢は、大持山の南東部から流れ出し、槻川、都幾川、越辺川などを集めて入間川となり、川越市や川島町辺りで荒川と合流して、南へ流れ下る。荒川の水量の1/4を占める入間川の源流に当たるところを歩くわけだ。
山道に入る。かつては上名栗村から秩父の横瀬や皆野町へ抜ける峠道だったところだ。峠まで杉林がつづき、道はよく踏まれて、しっかりしている。標高差300mほどを40分で登った。途中で一人下山して来る40年配の登山者に出逢った。聞くと、名郷から天狗岩を経て武川岳に上り、妻坂峠を経て名郷へ戻っている。早いではないか。朝7時に歩き始めたという。なるほど3時間半くらいの、朝の散歩か。妻坂峠は、ひと際明るい。武川岳からのルート、生川へ降るルート、山中林道へ下る道、そしてこれから私が登る大持山への道。その交差点になる稜線の鞍部は広く針葉樹も少なくて陽ざしがいっぱい入っている。8時42分。スタートしてから55分か。
そこから大持山へは急登だ。去年の6月24日に山の会で生川から武甲山に登り、大持山を経て、個々へ下る道をとったことがあった。そのときは霧が深く、緑も濃くて暗い感じであった。湿っぽかったのと合わせてここの下りが滑りやすく、とんとんと調子よく駆けるように降りた覚えがある。いま記録をみると、45分で下っている。上りのコースタイムは1時間20分。峠にある標識では1時間40分とあった。標高差は約450m。ゆっくり、休まず、歩一歩と上へ向かう。葉が落ちた裸木の合間から武甲山が見える。振り返ると、武川岳が大きな山体を広げている。去年と比べて明るい踏路が心地よい。途中で一人70年配の登山者が下ってくる。浦山口から小持山、大持山を経て武川岳へ向かうそうだ。二子山へ下るとすると、なかなかの力だ。武甲山は、その前に登ったからと、なぜか言い訳をする。武甲山だけがここの山じゃないよねと思う。
大持山への分岐にある稜線に乗った。10時39分。そこから大持山へはほんの5分。妻坂峠からおおよそ1時間で山頂に着いた。見晴らしは良くない。木の合間から西側の奥多摩の山々がみえ、その稜線の上に、雪をかぶった峰が見える。ええっ、南アルプス? とすると富士山が左にみえるはずだが、それは、ない。武甲山の方から来た30年配の女性が「雲がかかってるから富士山は見えませんね」という。とすると、丹沢の山々が雪をかぶっているのか。4日前の先週土曜日には、平地は大雨であったが、山はひょっとすると大雪だったかもしれない。乗鞍岳の雪崩もあった。
11時前だがお昼にする。山頂の向こうの隅にはやはり30年配の男性がガスストーブを焚いて食事をしている。先ほどの女性も、別の隅に座り込んでガスストーブに火をつけている。ほほう、若い人たちは、昔風の山歩きを愉しんでいるんだと思った。食事をしていると、50年配の単独行者が登ってきて、武甲山の方へ通り過ぎて行った。
20分ほどで出発した。すぐに登ってくる30年配とすれ違う。どうぞと道を譲るが、登ってこようとしない。だいぶへばっている。どちらから? と聞くと、伊豆が岳を越えてきたという。武川岳を経て、ここへきている。この後武甲山を経て横瀬に下るとしたら、結構な縦走だ。頑張ってと挨拶をして、脇を抜けた。
分岐のところまで戻り、鳥首峠の方へ向かう。少しばかり上りがあるが全体としてはゆっくり下る。落ち葉を敷き詰めた広い稜線が、明るく心地よい。鳥首峠の方から60年配の男性二人がやってくる。軽く挨拶を交わして通り過ぎる。結構急な下りもあるが、妻坂峠への下りほどではない。
30分もかからずにウノタワに着いた。広い稜線の鞍部。「山中を経て名栗に至る」と標柱に書いてある。飯能市のたてた「ウノタワの伝説」という説明看板があった。広いくぼ地が沼であったそうだが、そこにいた鵜を猟師が誤って殺してしまい、それと同時に、沼が干上がってしまったという。「鵜の田」が原義だそうだ。下山路の途中にも、古びた同じ説明看板があったから、こちらのは立て直したもののようだ。道筋はしっかりと案内しているのだが、「名郷バス停→」の標識の下に、吊り下げてあるビニール袋に包んだ地図が気になることを書いてある。「ハイキング道 通行止め情報」と標題した地図なのだが、小さな文字で、「赤区間は全面通行止め(歩行者、自転車、バイク)となります」とある。これから下るルートの、山道が終わって林道にかかるところの入口と、すでに通って来た妻坂峠への登山口の処と、車で入った林道分岐点とに×印がついている。なんだよ、来ちゃったじゃないか、ここまで。それに、すでに通過した地点が×なら、大したことはないんじゃないか。行こ行こと、下山を始めた。
コースタイムは1時間となっていたが、横倉林道に出逢うまでの下山路は、なかなか面白かった。ルートファインディングの「触り」を感じさせる。落ち葉、ざれ場、沢のごろた石歩きと、面白い。ピンクのテープがしっかりついているから、それを見落とさなければ、道を間違うことはないが、見極めながら下るのは、なかなかのものだ。35分で林道に降り立った。
なるほど林道は、とても車が通れる状態ではない。土砂が崩れ、山体の岩や土石とともに大木が崩れ落ち道を塞いでいる。だが1年半の人の歩いた跡が、しっかりと残り、用心して歩いて下る分には、不都合はない。落ちた杉の葉が降り積もって、ふかふかとした舗装路も、面白い。20分ほどで、朝見た分岐のところに出た。あとは坦々と舗装路を下って車に着いた。私の車の他に1台、しゃれた軽のトラックがとまっていた。
今日であったのは8人。明るい、奥武蔵の奥座敷。結構人気の山と思った。
0 件のコメント:
コメントを投稿