2021年3月4日木曜日

歩きごたえのある飯能アルプス

 今日(3/3)、飯能アルプスを歩いた。同行者は3人。南風が北風に代わる。その前線が昨日夕方から夜にかけて、関東上空を通過した。夜の雨と風は、音だけしか聞いていないが、凄まじいものであった。朝の空を見上げて、「台風一過」という言葉を想い起した。

 飯能アルプスを歩く。いや、この名前を知ったのは、今日歩いた後であった。ただ、飯能駅から天覧山を経て北へと延びる山稜は、賑わいが煩わしい。天覧山を省略して、多峯主山から北へ向けて歩けば、静かな山歩きが楽しめるだろうと計画をたてた。高麗駅集合8時半。私は車で向かう。

 車を駐車場に置いて駅前広場に近づくと、もう、皆さん、集まっている。集合時刻の電車が来るには、まだ20分余もある。

 えっ? どうして?

 この世代の特徴なのか、時間ギリギリの集まりというのに、先んじるクセがあるようだ。そういうわけで、予定より早くスタートした。高麗駅西側の高台へと続く住宅街を抜ける。西武鉄道がこうして開発した住宅地を売り出し、同時に電車の顧客を確保するという関東一円開発のたまものが、沿線の住宅地化であった。みごとに当たった。だが、たぶん、高齢化が進んでいるに違いない。これからの維持補修と世代交代が、この住宅地にどう響くか、そこがモンダイだなと思いながら、高台の突き当りから、山道に入る。すぐに高台の上に出て、振り返ると、住宅地ばかりか、その向こうに広がる関東平野を見渡すことができる。筑波山が孤高を誇る。そのずうっと左に、三毳山が先端を飾る。足利の山、鹿沼の山並みがそこから北へと連なる。今日は、空気が澄んでいて、スカイツリーも東京のビル群も、くっきりと見える。昨日の雨が幸いしている。

 森の中を抜け、斜面を登って、40分ほどで多峯主山につく。数人の人がいる。富士山が白い頭をのぞかせている。南へ目を転ずると、スカイツリーから東京タワー、ビル群がにぎやかにスカイラインを縁取る。

 と、髭の爺さんが現れ、ほらっ、あの手前の光ってる白い丸い屋根、あれが西武ドーム、所沢よ。その右の向こうに黒っぽいビルが二つ並んでるだろ、あれが国分寺、42㌔向こうだ。そのずうっと先、ビルの向こうに雲が浮かんでるように見えるだろ、あれは房総半島、100㌔先だよ。鋸山とかさ。あの房総半島の足元が何だかよく見えねえだろ、ありゃあね、蜃気楼なんだよ。そ、この季節にしかみえねえ。風が強い。昨日は雨が降った。いい条件がそろったってわけだ。

 周りの山を、全部説明してくれた。姿のいい大山、丹沢山塊や大室山、手前の大岳山や御前山まで、ほんとに一望できた。

 地図をみると、次の久須美坂まで行くのに、舗装車道や住宅群を通らなければならないと思っていた。ところが、舗装車道を横切りはするが、見事に住宅群の脇をすり抜け、ほぼ山道ばかりを通って歩ける。その途次に、木の幹に「テンカク、はんのうアルプス」と、白いペンキで書き付けてあるのに出会った。それで、このコースを、この地の人たちが飯能アルプスと呼んでいることが分かったという次第。標高は200mから500m弱の山稜が十数㌔にわたって連なる。結構歩きでのあるコースであった。

 そうそう、舗装車道を横切ったとき、その車道からコースの山道に入るところに木柱があり、その脇の木に取付けた「竈門山 登山口」と記した手書きの標識があった。おや、と思ったのはその文字のまわりが緑と黒の市松模様。stさんの話によると、流行りのアニメの主人公の名にちなんだ「かまど」に誘われて呼び寄せられたようだ。

 久須美坂には標識の周りに石を積み上げてケルンのようにしてある。スタートしてから2時間、ほぼ想定した時間だ。そこから10分ほどで、木の祠をおいた小ピークに着く。小さく「久須美山標高260m」と書いた板が、脇の木にとりつけてあった。私の参照した地図には、これらの名前はなかった。5分ほど先に「久須(美)坂」と手書きした小さい標識があった。私の想定したコースタイムより15分ほど、多くかかっている。コースタイムを「想定した」というのは、私の参照した昭文社地図には、中間地点のコースタイムが記載されていないからだ。私の想定では5時間20分のコースであった。ところがあとで同行したykyさんが調べてくれたのは6時間55分。なんと、1時間半以上も違っていた。私の参照した昭文社地図は1995年版、ykyさんの地図は同じ昭文社の2012年版。そちらの方には地点名もコースタイムも、こまごまと記載されているそうだ。

 久須美坂と東峠の中間点にある竈門山への分岐点には、新しい標識が建ち、「かまど山(20分)」と記し、標高303mと丁寧な明記までしている。まるで聖地だね。

 暗いヒノキの樹林がつづく。アップダウンがくり返される。だが皆さんの歩行は、疲れをみせない。やけに遠いように感じた東峠に着く。コースタイムでいうと、3時間50分だが、30分早い。再び樹林にヒノキの踏み込むが、黒く焦げた跡が生々しい。火事の後のようだ。足利などの山火事を思い出した。どうしたのだろう。ここまでに4人の人とすれ違った。皆さん単独行。男性ばかり。

 25分ほどで天覚山に着いた。12時に5分前。ベンチがある。二人の60代後半らしい女性がちょうど立ちあがるところであった。どっちからきたんだっけ、どっちへ行くんだっけと話している。多峯主山へ行きたいという。指さすと、斜面が急だと騒いでいる。吾野駅から来たという。大丈夫だろうか。

 ここで、お昼。多峯主山で見えた遠景は、少し霞みはじめている。風が強くて冷たかったのが、少し収まったか。陽ざしを受けて暖かい。30分も過ごした。ヒノキの樹林はつづく。西川材の山地らしい風情なのだろう。南北の稜線を、ところどころで横切る舗装車道も、もとはと言えば木を伐り出すのに用いた林道だったのかもしれない。コースタイムより10分早く大高山493mに着いた。13時37分。歩き始めて5時間30分ほど。当初の歩行時間を過ぎている。今日の最高地点だ。小さいが立派な石の標識が立つ。休みもせず、次へと向かう。

 35分ほどで前坂峠に着く。コースタイム通りだ。ここから結構な急斜面の下りとなる。先頭のmzdさんはストックをつかってさかさかと降る。元気がいい。25分で吾野の墓地の脇に降り立った。等々と流れ出る山の水を、空いたペットボトルに詰めて駅へ向かう。コースタイム通りで駅に到着。

 今日の行動時間は6時間41分。お昼を除くと、6時間11分、コースタイムより44分ほど早く歩いた計算になる。大した足慣らし山行であった。

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