2020年6月24日水曜日
シャクジョウソウとビロードハマキ
昨日(6/23)、9時まで雨、そのあと曇りの天気予報に期待して、北本自然公園へ足を運んだ。小雨が降り続く。降水量0mmがウソのように、降り注ぐ。参ったねえ。お弁当ももってきたのに、これじゃあダメだね。そう思いながら、まずはビジターセンターへ入る。
来館者は少ない。展示はしかし、南極の地衣類の研究が大きく掲出されている。なんでも、このセンターの研究者が南極に行き、落ちの地衣類(菌類)の調査をしてきたようだった。公園の「生きものマップ」が面白い。白板に手書き。ツバメ、カノコガ、ナナフシ、ミクリ、ミドリシジミ、ヒメコウゾと、鳥や虫や植物の目撃情報を特段扱いして、公園マップのどこに、何が、いつ、目撃されたと記されている。ホトトギスの声、キビタキ、オオヨシキリ、カワセミ、エナガ、セミハリセンボン、ミドリシジミ、ミナミメダカ、タヌキ、コバネグモ、クロスジギンヤンマ、ニイニイゼミ・・・という具合。植物もまた、リョウブ花、ニワトコ実、ネムノキ花、ヒメコウゾ実、コウホネ花、ガマのほ、シャクジョウソウ花、ハンゲショウ(白っぽくなってた)・・・という調子で、びっしりと書き込んである。
シャクジョウソウというのは、私は初めてだ。見に行こうと歩いていると、さかさかと私と似たような高齢者が先を行く。ずうっと先で、その方が斜面に踏み込んでカメラを構えている。その脇に、「シャクジョウソウ」と書いた掲示板が立てられている。ああ、これだこれだ。その方は場を譲って、「いやね、埼玉新聞に出てましたからね。来たんですよ。」
と嬉しそう。
ちょっと見には、ギンリョウソウのようだ。山を歩いていると時々目にする。白っぽい、透き通るキセルのような形の花が何本か同じところから生えて並ぶ。かたちが同じようなシャクジョウソウは、色が少し薄茶色がかって6本ほどが立ち並ぶ。少し離れて、背の高い1本がすっくと立ちあがって、見栄えが立派だ。
掲示板には《本種は腐生植物と呼ばれ、緑の葉をもたず共生する菌類を通して枯葉などから栄養分を得ている・・・》と記されている。南極に行った菌類研究者がビジターセンターにいたなと想い起す。
師匠は、シャクジョウソウを見たのは3度目とか。雨の中、傘をさしてゆっくり公園内の森を散策する。師匠は、水草から身を乗り出しているウシガエルを見つける。その脇の「ヒメガマのほ」の特徴をさして、「ガマのほ」との見分け方を教える。ヤマユリが蕾をつけている。ヤブレガサが花を何輪か咲かせている。オカトラノオが頭の方から順に白い花を咲かせて、迫り出している。ヤブランが楚々とした花をつけている。いくつか花の咲いた草の名前を聞いてが、耳を素通りしてしまった。
別の高齢者が草叢をのぞき込んでいる。私をみると、ここに珍しい蛾がいるよと教えてくれた。緑の葉の上に、きれいな幼虫のようないも虫。白と黒と赤の色の違ういぼいぼのような小さな突起を身体中から突き出して、なかなかきれいだ。幼虫ですか? と訊くと、「いや成虫。蛾です」という。なんだか羽が生えていない蛾のようにみえた。どっちが頭だろうと呟くと、ほら、こっちに触角があるよという。細いが長い触角が二本突き出している。そのとき名前を思い出せなかったこの方が、後で出逢ったときに、「あれね、ビロードハマキっていうんですよ」と教えてくれた。おもしろい蛾がいるものだと思って、帰宅後に図鑑を観たら、羽を広げたビロードハマキが載っていた。ごく普通の蛾にみえた。
そうそう、ひとつ、師匠にもわからないのがあった。対生のちょっとした大きさの葉をつけて背を伸ばす茎。そのところどころに、小さな「托葉」がついている。
帰りにビジターセンターに寄って「これはなんですか」と、私のとった写真をみせて尋ねる。はじめ応対した女性職員は、わからないわ、でもちょっと待ってねと奥へ行く。男の人が出てきて、「あ、マスクをしますね。」と断ってから、私のカメラをのぞき込む。「ちょっとこちらへ」と書棚の方に誘って、植物図鑑を取り出し、ページを繰る。
「花の写真ばかりで、ちょうど葉が映ってるのがないのですが、ウグイスカグラの葉ですよ」
という。師匠がのぞき込んで、「ずいぶん姿が変わるんですね。ありがとうございました。あとは自分で探してみます」と話している。この教えてくれた方が、菌類研究者だと、そっと女性職員が教えてくれた。
こうして、雨の中、車でお昼をとって、引き上げてきた。町はコロナウィルス以前に戻ったように賑わっていた。
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