2021年10月11日月曜日

都道府県ランキング

 昨日(10/10)の新聞に、「47都道府県のランキング発表」と記事があった。大見出しは「私の地元 魅力度は?」とある。

《ランキングは,ブランド総合研究所が7月、ネット上で各地の認知度や訪問経験、観光意欲など89項目について約3万5千人から回答を得て,年齢や人口分布を考慮した上で点数化した》

 と、説明がある。最下位順位を気にしていた栃木県や茨城県が、どのような取り組みをしたかを取り上げて、「茨城、再び最下位…西日本で認知度低く」と袖見出しにしている。44位から下位へ、群馬、埼玉、佐賀、茨城の47位へと並んでいる。我が埼玉は,昨年の38位から45位へと順位を下げている。これひょっとすると、「翔んで埼玉」って映画の効果が、賞味期限切れになったってことじゃないの? 

 記事は、昨年最下位であった栃木県が(41位になったのは)3千万円を掛けて「開き直ったPR作戦を展開した」ことを記載している。これは、

(1)「知ってもらいたい」という外部評価を気にしているのだろうか、それとも、

(2)「魅力を伝えて」観光客の誘致をしているのだろうか、あるいはたた単に、

(3)ランキング順位が下位であることに苛立って、順位を上げたいと思っているだけなのだろうか。

 「都道府県魅力度ランキング2021完全版」(ダイヤモンド)を読むと、東京都の「点数の伸びが大きかった」のは、「本調査直後に始まったオリンピック、パラリンピックの影響可能性が大」とある。また、「次に点数の伸びが大きかった千葉県」(順位を21位から12位)は、20代の点数の伸びが前年の4倍になったと子細を記している。

 コロナ禍で近場の観光地が見直されているが、日光や那須が栃木県とは認識されていないともあり、「栃木県の潜在力や地域資源が,あまりにも低すぎる」とコメントも添えられている。

 この調査のトーンは、昨日のこの欄で取り上げたことと同類である。「魅力」というのは観光客がどれだけ振り向いてくれるかという数値であり、上記に記した(1)~(3)を総じていうと、「観光客呼び込み度ランキング」といった風情になる。となると、昨日のこのブログ話題同様、金勘定にしてどれだけ魅力があるかを俎上にあげているわけだ。

 こういう調査をする組織も、それを記事として取り上げるメディアも、いずれも「金勘定魅力」にしか目が向いていない。調査会社の項目にはきっとないから、私の好みは反映されないわけだが、私はむしろ、この都道府県別ランキングの下位にあることを好ましく思う。

 知名度が低い、観光地が少ない、人の出入りが少ないのかもしれない。だがそれは、その土地に暮らす人々が、他の土地からやってくる人の懐を当てにしない生活の型を保っているということではないのか。ま、あまり綺麗事では言えないが、埼玉県などは、東京への出稼ぎでせっせと生業を立てている。埼玉には寝に帰っているだけという働き手も多い。だが逆にそれは、「暮らし」の基本をしっかりと押さえた生活パターンを保っているということである。その強さは、コロナ禍では一番の強みであった。

 ステイホームを呼びかけられて、慌てふためいたのは東京への出稼ぎ者たち。だが幸いにも、未だに公共交通機関が感染源になったという報道はなされない。人流を抑えるとはいうが、電車やバスに乗るなとは,為政者は誰も言わない。外食をやめろとか、お酒を提供するなとはいうが、慎ましく家で料理をして食事をしている分には、何一つ困らない。スーパーの買い出しでマスクをしたり、混み合う時間帯を避ける程度の調整をすれば、むしろ遊びに行かない分だけ遊興費がいらなくなり、亭主がお酒を飲まないで帰ってくる分だけ、交際費もいらない。リモートワークで一日中在宅勤務をいうのが、ひょっとすると煩わしいとお内儀は感じているかもしれないが、家族経営的な自営業の人たちはいつでも一緒にいるのだから、これはお内儀も我慢しなければならない。

 もちろん市場経済の世の中だから、埼玉県域の公益商品だけで暮らしが成り立っているわけではないが、県産品の製造と「輸出」や出稼ぎを含めた「外貨」を稼ぎ、それをもって、圏外からいろいろなものを「輸入」して消費している。観光客を呼び込む必要があるのは、そういう人たちを当て込んだサービス業だろうが、人気が低く、観光地も少ないとなると、それに依存している産業従事者も,そう多くはないということになる。まさしくwith-コロナ時代にふさわしい、産業構造ではないかと思わせる。

 そう考えてみると、この「都道府県別ランキング」の順位が低いところは、むしろ次の時代の地域立て直しに一番優位な位置を占めているとは言えまいか。浮かれ暮らすことが、人生ではない。世間の顔色をうかがって,自らの自画像を作り出す必要もない。順位をつけられて「ブランド力」の有無に心を砕くよりは、自律した暮らしの型をしっかりと作ることに気を配るのが、with-コロナ時代の優先順位の上位に来るはずだ。そう思って、こんな「ランキング」に動揺しない埼玉県を誇らしく思った。

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