2020年7月11日土曜日
キャンセルの不可思議
一週間後に大阪・堺の宿を予約していた。去年の12月のこと。コロナウィルス禍がやって来るとは思いもよらなかったころ。その宿の受付をしたのは、旅の諸予約を一手に引き受けているインターネット代理店。支払いもカードで済ませる、予約の「キャンセル不可」とあったが、半年以上先の予約の目的は「法事」であったから、キャンセルすることがあろうとは、思いもしなかった。一緒の方が良かろうと、兄弟の分も一緒にまとめたので、それきりにしていた。
ところが、4月8日から「緊急事態宣言」。法事が順調に運ぶかどうかも見通しがつかない。5月の下旬にかかるころ、宿に問い合わせをした。「緊急事態宣言が出ていれば、キャンセル料はいりません」と返事が来た。そうして6月に「解除」され、何とか法事もできそうだと兄弟とも言葉を交わすことができた。
そうしてこの7月。東京都も埼玉県も感染者数は増える一方。第二波かとこちらは心配しているが、政府は「緊急事態というほどではない」と知らぬ顔の半兵衛。参ったなあ。
どうしようと思いながら、しかしキャンセルできなとなると、仕方がない、用心しながら足を運ぼうかと、生来の貧乏性が顔を出した。埼玉県知事は「できるだけ東京への移動を自粛してください」と呼びかけている。
一週間前の今日、「緊急事態宣言」ではないが、県知事の呼びかけではだめかと問い合わせるつもりで、宿に電話を掛けた。宿の係の人は事態を聞いて、「今日のキャンセルならば料金は発生しません。予約した代理店へ連絡を取って、キャンセル手続きを取ってください」と、坦々と事務的に応対する。一応名前を聞いて、電話を切った。
そうして、予約したサイトへメールをしようとしたのだが、「キャンセル不可」の表示が出て、キャンセル手続きに入れない。結局そのサイトに記されている「電話でのお問い合わせ」番号を回すことになってしまった。
3度ほど、用件に応じて番号を押す手続きをしてやっと、担当者が電話口に出た。事情を聞いて、「今ならキャンセル料はいらない。すでに支払った分は払い戻せる」
と応じた宿の担当者の名前を質して、
「しばらくお待ちください。確認します」
という。
「確認できました。手続きしますので、そのままでお待ちください。」
といって、キーボードを叩いているのか、ときどきピピー、ピピーと電子音が混ざり、
「手続きが終わりました。キャンセルした旨のメールが行きます。なお、コロナウィルスの関係で、支払い完了までに一月ほどかかります。ご承知おきください。」
といって、手続きは完了した。
わからないのは、「キャンセル不可」がどうしてキャンセルに応じてくれたのか、だ。宿の担当者は「今日ならばキャンセルは発生しない」と言った。つまり、コロナウィルスは関係がないという態度であった。
ネットの代理店は「宿に確認します」とは言ったが、コロナウィルスがどうであるかを確認しようともしていない。ということは、「キャンセル不可」というのはネットサイトの文言も含めて、容易にキャンセルさせないための「慣用語」だったのであろうか。それを、アナログ育ちの私が真に受けて、右往左往したにすぎないのであろうか。
それとも、コロナウィルス禍の蔓延が全国に行き届き、加えて、政府の弱腰(に対する不信感))が伝わり、「緊急事態宣言」の発出と人びとの事態認識のギャップが、業者の間には行き届いていて、キャンセルは致し方ないと考えているのであろうか。
どちらでもいいじゃないか。結果は文句なしなのだからと言えなくもない。だが、世の中の移ろいをみている私としては、もう少しコトを見極める手立てがあったろうかと反省している。
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