2021年1月15日金曜日

春の気配がはじまる

 心配されていた雨がそれほどでもなかったおかげで、恒例の「田島ヶ原サクラソウ自生地の草焼き」が行われた。

 開始9時の少し前に自生地に着く。入口では、一般車が入らないように係員が駐車場へ誘導している。草焼の現場ではすでに、作業服の人たちや腕に腕章を巻いた人たちが集まっている。私は、人の動きが一望できる旧秋ヶ瀬橋の高台に陣取る。見学者もちらほらと集まってきている。

 何年か前にみたときと違うのは、草焼きを行う何カ所かに分けた場所ごとに柵の周辺の枯草を刈り込み、また、背の高い萱などの高い部分をきれいに刈り払っている。以前は風下から火をつけた。今回も一つのブロックの風下から火をつけるが、点け火の松明をもった人が2メートルおきくらいに枯草に火をつけて風上の方へと移動している。風上の火は煙とともに火柱を噴き上げ、たちまち風下へと燃え広がる。カメラを持った人も、見学の人たちも、火をつける人の近くにたむろし、その群れがゆっくりと移動してゆく。なかには、火から遠い自生地の通路を見晴らす所にいて、何か動物や虫が飛び出してくるのではないかと見張っている。あとで聞いたが、以前はタヌキやキジなどが飛び出してきたのだそうだ。

 こうしてひとブロックを焼いたのちに次のブロックへと移り、全部で8カ所ほどのブロックを午前中いっぱいかけて焼き尽くす。田島ヶ原の一番奥には定住しているホームレスがいるのだが、市の係員が声をかける。だが聞こえぬふりをしてか動こうとしない。そこへ消防署員がやってきて、「危ないですよ。移動してください」と声を大きくすると、そそくさと身を移す。人を見ているのだ。

 ひとブロックを焼いたのを見て私は、秋ヶ瀬公園の北の方へ歩いてみた。人の気配は少ない。小鳥がたむろしている。シジュウカラやヤマガラ、メジロもいる。カメラマンが何かを見ている。その方向へ双眼鏡を向ける。うまい具合に、ルリビタキの雌が入る。背を向けて、きょろきょろとしている。

 ゴルフ場の整備をしている人やプレーをする人が、ネットの向こう側で動いている。水曜日なのにお客がいるのだ。ヒヨドリがけたたましい声を出す。ツグミが行き交う。コムクドリではないかと思われるのが、木立に羽を休め、すぐに向こうへ飛んでいった。別の鳥が飛んできて、5メートルほど向こうの枝にとまる。マミチャジナイではないか。秋に奥日光で、群れをみた。今日は一羽だけだ。ほほう、来ているんだと思う。

 ピクニックの森の池の水が涸れそうだ。そういえばここしばらく、雨が降っていない。関東平野の冬は乾季だ。連日のように晴れの日が続く。火曜日には雨または雪になると言っていたのに、ちょっと小雨があっただけ。降水量はゼロ。恵みにさえならない。

 車を停めて置いたところへ戻る。一番西にある自生地の辺りから煙が出ている。そろそろ終わるころか。12時になる。桜区の職員や県教育委員会の職員などが張り付き、ボランティアの助力を得て、恒例の草焼きが行われ、今年の草花が目を出す季節を迎える。文字通り、田島ヶ原のサクラソウ自生地に、これから春がやってくる。

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