週に一回、近くの公民館で「男のストレッチ」をやっている。もう十何年もつづいている「自主講座」。ご近所の男たちが集まってはじめた。現在の最高齢者は84歳、一番若い人は68歳。平均すると75歳位ではなかろうか。かつては90歳になる方もいた。病でなくなる方もいたし、公民館に足を運ぶことが出来なくなって顔を出さなくなった方もいる。そうして年々、世代交代しているのだが、いつまでたっても、おおよその平均年齢は変わらず高いままだ。
最初の講師が急逝し、新しい講師が見つかるまでは、文字通り自分たちで1時間半の「体操の時間」を過ごした。その後、現在の講師陣が担当してくれるようになった。
講師陣というのは、リンパ体操を主として広めているグループ。どこかの体育大学のOGたちであろうか。ヒトの身体生理に関しては実に詳しい。よく知っている。リズム体操からヨーガ、ダンスまで、おおよそ体を動かして身をほぐしていくヒトの動きを取り入れて、なかなか面白い。いや講師にもいろいろいて、いまの講師陣で定着するまでは、ちょっとこの方は交代してほしいという声まで出て代わってもらうようなギクシャクもあった。
現在は、60代と50代の二人の方が月に二回ずつ、つまり週1回の教室をみてくれている。たいていは静かなクラシック曲や小学唱歌、演歌・歌謡曲やジャズ、ときにはロックのような激しい音楽をかけ、そのリズムに合わせて体を動かす。きつい動きが半分、あとの半分はリンパの流れやストレッチによる身体調整。体育館に十数名だから「密」ではない。
昨日(1/8)は、今年の第一回。50代の担当講師が体調不良とかで、代わりの30代の講師が来た。これまでも何回か、代わったことのある顔見知りの講師。この方は、音楽をつかわない。全員椅子を出して座る。
「体の内側の筋肉を鍛えることをやってみましょう」といって、指や掌、手首から二の腕、リンパの要所である関節のほぐし、足首からふくらはぎ、膝、太ももの筋肉とやはりリンパの溜まる関節のほぐしからはじめる。その都度、何処の何をどう動かしているのか、それがその箇所の筋にどう作用しているかを話しながら、ひとつひとつすすめていく。足指への力の掛け方とそれが身体全体の重心をどこにおいて安定させているかを意識させるように、言葉を添える。
「体の激しい動きは表層の筋肉を鍛えるのに作用するけれども、奥深くの筋肉を動かすには、こうしたゆっくりと静かだけれども丁寧な動きが有効です」と言い、「けっこうこれが、あとで体には響くんですよ」と、並みいる年寄りたちを前に笑う。
ふだんは講師の動きに併せて身を動かすので慌ただしく過ぎていく時間が、意識をともなっているがゆえに刺激的になる感触。視線が身の裡深くに届くような心持。つまり視線が体幹に届く、面白い感触を残した。片足立ちの浮いた方の脚をどの角度で前後に、左右に揺さぶることでバランス感覚が試され、かつ、鍛えられ、そのときからだがふらふらと動くことが、じつはバランスをとっている姿だと意識させる。つまり、わが身の変容していく途上を受け容れて認知し、その先の地点へ向けて移行していこうとするエネルギーに変える。そういう、無意識と意識の端境を取り出してわが身で試しているような体験であった。
山を歩いているときのわが身の状態をつかむのと同じように、ふだんのくらしの中でのわが身との対話が、体幹という中心軸においてやりとりすることができる。そう感じて、身体が喜んでいるように思った。
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