緊急事態宣言から2度目の終末。ご近所を歩くしかない。歩くのが一番身の置き場所として適当だと感じる。
土曜日(1/16)の午前中は「ささらほうさら・無冠」の今月号の制作で時間をつかう。図書館で受け取る予約本があって、午後、足を運ぶ。そのついでにどこを歩こうかと思案しながら、お茶だけをリュックに詰める。気温が4月下旬と同じ16℃になるという予報があったから、セーター1枚。でも歩いているうちに汗ばむほど。吉祥寺から住宅街の裏手を回っているうちに、いつしか、脚は見沼田んぼの方へ向く。そうか、このままいくと見沼大橋を渡って、東北道の方へ向かう。車の通りは有料道路とあって、わずか150円だが、通りは少ない。自転車は20円、歩行者は無料。高さ50mほどにかかる見沼大橋を渡る。約1㌔半くらいか。
見沼田んぼを高みから眺める感触が、心地よい。芝川の流れにカモが浮かんでいる。双眼鏡をもってきていなかったから細かい種はわからない。陽気のせいか、見沼田んぼの植栽の養生畑で働く人の姿が、軽やかに見える。大橋の下のコンクリートのバスケット練習場でゲームに興じる若者の飛び跳ねる足音と声とが、閉塞感を超えている。
橋の向こうで、見沼田んぼ東側の高台地に踏み込む。この辺りは、広い植物の植栽養生畑。舗装路を離れて、植栽畑の中を通る広い車の轍道に入る。養生している灌木の間を抜けてくねくねとおくへつづく。どこかへ抜けるとみえていたのに行き止まりでぐるりと回っていたりする。と思うと、下の方に見沼田んぼの東縁とそれに沿った舗装道がみえるが、そこへ下りるには草木の繁茂する斜面を20メートルくらい下らなければならない。とみると、車は通れないが人が歩いた踏み跡が養生灌木のさらに奥へと連なっている。もしここで誰かに出逢えば、「あんた、何しとるの」と誰何されるに違いない。「いやはや、間違えましてね」と頭を掻くかなどと、考えるともなく思いながら、突き抜けてみる。この辺りはほとんど山歩きのルートファインディングの心もちだ。うまくいった。住宅に突き当たり、その隅のほんの1メートルほどの箇所に踏み跡があり、その向こうに細い舗装路があった。
こうしてはじめての知らない道を歩き、約2時間の散策をした。知らないところを歩いているときは、ほぼ放浪しているような気分だ。そのときに、ワクワクしている心裡を感じていたのだと、こうして今、振りかえってみると思う。それが堪らない。
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日曜日(1/17)、お弁当を以ってカミサンと一緒に秋ヶ瀬公園に出向く。3月、4月に何度も足を運んだところ。今日は、鳥を観る。カミサンが私の師匠だ。
日曜日とあって、9時前というのに、何十面もあるテニスコートはゲームに興じる人でいっぱい。駐車場もすでに半分以上が埋まっている。球を追う姿とパコーンパコーンというラリーの音を聞きながら、77歳の長兄は毎週2回ほどテニスに興じていたんだったなあと、7年前のことを思う。
賑やかなところに鳥はいない。すぐに森に入る。鳥影は少ない。犬の競技会でもあるのであろうか、公園の敷地の一角を広く布ネットで囲み、周りをずらりと何張ものテントが取り巻いて設えられ、放送するような司会者の声が響いている。土手の上からみると、フリスビーが飛び、それに飛びつく犬の姿がちらほらと見える。
森に入る。春に筍をとったところだが、すっかり草は枯れ、陽ざしが明るい。ツグミやヒヨドリ、ムクドリが飛び交う。ムクドリのなかにコムクドリのような、頭の白っぽいのが混じっているが、それをいうと、いまこの時期にコムクドリはいないと師匠がいう。シロハラが何度も目に付く。カラスがたくさん屯している。
通路のネットの向こうに広がる浦和レッズの練習場も、ジュニア選手の子どもたちをふくむ声が響いている。その反対側の芝地の公園には、少年野球のチームが、練習を始めている。動き回る少年たちは皆マスクをしているが、コーチをしていたり、手助けをする大人たちは、2/3がマスクなしだ。反対だねと思う。
そこを抜けて、ピクニックの森に入る。やはり鳥影は薄い。向こうに何人か三脚を据えたウォッチャーがいる。おおっ、何かが飛び交う。双眼鏡を向ける。密生する背の高い木々の枯れ枝を移る鳥影がある。アカゲラだ。赤い腹が際立つ。おや、2羽もいる。ペアリングしてるんだと師匠が言う。コゲラも2羽が争うような飛び方をしている。池の水が、ない。わずかに残る箇所に、コガモやカルガモが浮かんでいる。師匠がタシギがいる、と指さす。向こう岸のほとりを左へゆっくりと歩いている姿が双眼鏡に入る。でも肉眼に戻すと、岸の小石や泥に溶け込んで見分けられない。と、カメラを持った人がやってくる。師匠が「タシギがいますよ」というと、「あっ、今日はまだ見ていません。昨日はいましたね」と応えている。水のある場所が狭くなって、こうしてウォッチできるんだと師匠は教えてくれる。なるほど。アカゲラとタシギで、今日は十分と師匠が言う。フクロウのいる場所を探っているみたいであった。
秋ヶ瀬公園は全体に森が広がり、その中の各所に広場のような公園があり、サッカー場や野球場やラグビー場があり、各所にトイレを設置してあり、バーベキュウ場もあり、荒川沿いに南北3㌔ほどつづく。ピクニックの森は一番北側。今度は南の方へ向かう。中央に位置するのが子どもの森。森の中を辿ると、人の屯する広場の公園を避けて歩くことができる。餌付けをしている処があると、師匠が案内する。と、3人ほどのカメラマンが屯している。その脇に横たわる倒木の中ほどを深く彫って水をためたところに、小鳥がいる。腹が黄色く、羽根が緑っぽい。ルリビタキの雌だろうか、メジロだろうかとみているうちに後ろにあるブッシュに入り込んだ。師匠が何かいる? と訊ねるのでそう応えるが、そのときには姿を消してしまった。3人のカメラマンは、住所や名前をお喋りをしていてウォッチしていない。私と師匠を見かけると、「30分に一回くらいルリビの雌がきますよ」と言って、また、お喋りに戻ってしまう。私たちは先へ抜ける。と、その先で、2羽の鳥が目に入る。アトリだ。5mほど先の枝に止まっている。私はカメラを出し、ズームしてみる。シャッターを押す。ふだんはそういうことをしても、手前の小枝に焦点が合って、鳥自体はぼやけてしまう。うまい具合に割とピントが合った。わりとというのは、目に合ってはいないからだ。自動焦点のばかちょんカメラではしょうがない。
田島ヶ原の手前のサッカー場や野球場、ラグビー場では、大人チームと少年チームが別々に練習している。そろそろお昼に近く、大人チームな切り上げている様子だ。田島ヶ原のサクラソウ自生地は、先週の草焼きがおわって、すっかり黒っぽく焼けたところと焼き遺して刈り払われた部分が何もない。なにかいると言われていたので、目を凝らす。焼き払われた黒い所に小鳥がうろちょろしている。「あれ、何かわかる?」と師匠。タヒバリ、と私が正解する。何羽もいる。ムクドリもいる。ツグミもいる。まるまるとした猫が入り込んで、何かを探している。師匠に言わせると、ここのネズミは希少種なのだそうだ。上空をタカが飛ぶ。ハイタカだと師匠が言う。鉄塔に止まった。でも、ぼろくずが鉄塔にぶら下がっているようにしか見えないのが、おかしい。
田島ヶ原でお昼をとる。こちらは人が少ないが、家族連れがサッカーボールやバレーバールで遊んでいる。犬を連れてフリスビーで遊んでいる女性もいる。
帰りに子どもの森の「餌付け」地には、女の人が座っていた。40分の間にルリビタキとアカハラとメジロが水を飲みに来たと話をする。でも、待つ気になれない。シジュカラ、エナガ、メジロの混群が目の前の木々を飛び交う。ふたたび人の少ない森の中を抜けて駐車場に戻り、今日の散策を終わりにした。行動時間は4時間半。歩いた時間は3時間15分。16600歩の散策放浪であった。
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