晴天が続く。だがコロナウィルスの緊急事態宣言もあって、山まで自粛気味だ。県内の山ならいいだろうと足を運んだのが、正丸峠~丸山のルート。私の外に3人の方が顔をそろえた。昨2月9日。
8時半ころ、西武秩父線の正丸駅で合流。私は車で来た。正丸駅から300mくらい歩いて国道と分かれ里道に入る。「旧正丸峠・刈場坂峠→」の小さい標識がある。すぐに舗装路が終わり、山道になる。沢に沿って杉林の中を登る。50分ほどで正丸峠へ向かう舗装車道に出る。すぐにまた、登山道に入り、急登を登る。「旧正丸峠」と表示のある鞍部に着く。コースタイムより少し早いが、いいペースだ。先頭を歩くmsさんは、しばらく山を歩いていないから心配とはなしていたが、どうしてどうして。久々のおしゃべりをしながら、ペースを保っている。
ここからアップダウンがはじまる。木製の階段が設えられているところも、それが崩れて歩きにくく、傍らに出て上り下るものだから、そちらの方も滑りやすくなっている。あまりの急斜面にロープが張ってある。それにつかまり、木立で身を支えながら、降り、登る。途中で振り返ると、武甲山が大きく木立の合間に見える。医師を削った後に雪がついている。傍らのくぼ地には雪が残る。空気は冷たい。風がないから、陽ざしを受けてそれほど寒さを感じないが、気温は5度くらいか。
急な滑りやすい斜面を落ち葉を踏みながら下って、虚空蔵峠に着いた。出発してから2時間。ykyさんの話によると、虚空蔵という名のついた山や峠は29カ所あるという。そして、この菩薩様は、智恵の神と言われているが、その神の使いを務めているのが牛だそうで、丑年に虚空蔵と名のつく山や峠を歩くとご利益があると、聞かせてくれた。なるほど、じゃあ、この先にある牛立久保という地点の名も、虚空蔵菩薩とかかわりがあるのかと話しは弾む。虚空蔵峠には、舗装車道の脇の草地に名残の雪が広がっていた。
刈場坂峠への道を分かれ、牛立久保への山道に入る。ひと上りすると、雪の広がる原に出る。踏み跡が一筋ついている。そこから5分で刈場坂峠からの稜線上にある牛立久保に出る。ここから丸山へは「関東ふれあいの道」になる。降り斜面に雪が残る。困るほどではない。岩場に出遭う。登る前、「バカ岳の手前に危険マークがついてる」とmsさんが話していたのは、この辺りのことか。岩を縫って登る。岩の上を歩く。変化があって面白いってところか。
カバ岳に着く。11時45分。お昼にしたいが、樹林に囲まれ陽ざしがない。少し先へ行き、陽の当たるところに座る。武甲山の方を向いて、弁当を開く。家の庭にやってくるスズメを猫がとってきて困るとか、実った木の実をヒヨドリに取られるとか、ムクドリかなとか、どうやったら小鳥を呼び寄せられるかと話しが広がる。30分近くものんびりとした。
出発して10分ちょっとで大野峠に着いた。ここも雪が残っている。舗装車道が通り、東屋があり、大きな「よこぜイラストマップ」が立てられている。それでここが、横瀬町だとわかる。山道に入る。すぐに木立が途切れ、広々とした草地に出る。風をみる吹き流しがある。パラグライダーのスタート地点なのだろう。ずうっと向こうに見えるのは、小川町だろうか、東松山市の方だろうか。
大野峠から西へ向かう。笹原をかき分けるように踏路が走っている。丸山の方からやってくる人に出逢う。この日見かけたのは5組6人。単独行の人が多い。皆さん芦ヶ久保から登ってきたようだし、大野峠から芦ヶ久保に下るルートをとるのかもしれない。北側斜面には雪がずいぶんとついている。
3階建ての展望台が設えられた丸山の山頂に到着。屋上には固定式の双眼鏡が4基も据えられていて、どれも無料だ。見回すと、西は蕎麦粒山から有間山、大持山、武甲山と、去年歩いた山が連なる。西に両神山が、あの独特の山稜をみせ、左肩の遠方に見える雪山は八ヶ岳のようだ。右の方へ目を移すと、浅間山であろう、大きな雪山がど~んと座る。手前には去年登った赤久縄山が黒っぽく侍っている。妙義山、榛名山、赤城山と連なる向こうに、苗場山、谷川連峰、武尊山が背景を務め、奥日光の男体山や女峰山へと白い峰を並べている。いや凄い眺望だ。
この丸山からの下山路が厄介であった。急斜面に加えて、雪が残っている。その上、凍っている。落ち葉を踏んでいても、どこかで雪に乗らなければならない。ストックを持っていないykyさんはずいぶん気を遣って下っている。この後、何カ所かでこうした残雪と凍結に用心しなければならなかった。東屋のある脇の枯木に小鳥が飛び交っている。ヤマガラの色がきれいだ。シジュウカラが勢いよく飛ぶ。何羽も何羽もやってきては、飛び去り、またやってくる。みていて飽きない。
森林館を過ぎると、しばらく舗装林道を通る。だが、雪掻きをしていないため、車の轍が凍りついている。山道へ下りると少しホッとする。こちらは落ち葉があるから、まだ、滑らないように歩くことができる。日向山への分岐で芦ヶ久保駅方面の左への道へ入り、鹿除けの柵を出たところの先から、舗装路に出る。何本も道があり、どれを選ぶかちょっと迷うが、一番急な傾斜の舗装路をとれば、最短の芦ヶ久保への道になる。くねくねと九十九折れの道を下っていくと、やがて下方に西武秩父線の線路と駅舎がみえ、その手前に道の駅芦ヶ久保の建物と駐車場が広がっているのが見える。
ちょうど南向き斜面だから、陽ざしを受け、目的地を睥睨しながら下る心地よい下山路だ。芦ヶ久保の道の駅に降り立ったのは、14時51分。「ちょうど計画通りの時間ですよ」とmsさんが笑っている。歩き通せるか不安を抱えていた彼女は、これでちょっと自信を回復したんじゃないだろうか。行動時間は6時間20分。足慣らしの山歩きとしては、静かな良いコースであった。
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