午後の手術だが、前夜の夕食後は食べ物を口にしてはいけない。翌朝9時以降は、飲み物も禁じられる。代わって点滴が行われる。食べたいという気持ちにならない。
16時と聞いていたのに、14時45分には看護師が来て、手術着に着替えさせ、両脚にエコノミー症候群を予防するストッキングをはかせる。事前に足首周りと脹ら脛の周囲を測っていた。踵と足の甲の部分が空いていて、なるほど履くとぴっちりと脹ら脛が締め付けられて緊張感が走る。これがどういう作用をするのか、教えてほしいと思った。
8階の個室を車椅子で出て4階の手術室に入る。もうまな板の上の鯉だ。帽子を被せ、手術用ストレッチャーに乗る。ここまでに何度も名前の確認をする。今日の手術部位を私に確認するから、小指だけじゃなく、親指と人差し指の間のチェックもするというと、そうそう切るかどうかは様子を見てねと、執刀医が口を挟む。それで担当の執刀医が来ていると分かる。
まだ3時だ。血圧を測り、心電計を取り付ける。看護師は足の様子を触り、気分はどうかと尋ねる。医師が向こうで世間話をしている。3人揃ったから始めようかといってるように聞こえ、随分いい加減だが、こういう雰囲気は悪くない。
と思っていたら、私の名前が呼ばれ、聞こえますかという。はい、聞こえますと応えると、明日退院したいですかと聞く。具合が良ければ・・・と応えると、じゃあ、そうしましょうという。どこかへ移動しているようだ。6時半と誰かが口にするのが聞こえた。えっ、もう終わったの?
気づいたら個室のベッドに戻り、パジャマに着替え、腕は上につり上げられ、心電計が取り付けられている。7時であった。左手は包帯でぐるぐる巻きにされ、痛みがある。看護師も指が痺れてますかと訊ねる。どの指も痺れ、切ったと思われる指と掌が痛い。点滴が二本。生理食塩水と抗生剤だ。熟睡はしていないが、眠ってはいたのだろう。看護師が出入りし、薬剤が取り替えられている。トイレに行くときはナースコールを押せという。最初の押したのは12時近くだったから、5時間くらいは寝たと思う。吊り上げた紐をほどき、心電計のつなぎ目を解き、私の体がふらつくのを支えるようにする。あとは3時頃、5時半すぎと点滴の効果が出てきている。
医師は来ないが、退院は既定のこととして話しが運んでいる。いくつかの説明を受けたという書類に署名し、コンプライアンスおいうが、責任の在処は患者にありますよといわんばかり。単純明快は歓迎だが、この署名書類の多さは、ちょっと頂けないな。
朝食後に3人の医師が来た。一部の包帯を巻き直しただけで、一人が小指をつかんで、ほらっ伸びるじゃない、良かったねと、小指が痛がっていることを意に介さず、私に笑顔を見せた。
雨の病院駐車場の混雑渋滞で後れてきたバスに乗って来たカミサンを入口で出迎えて帰宅した次第。こうして私のはじめての手術体験は、な~にも気づかないで寝ているうちに終わってしまったのでした。何処をどう切ったかまったくわからない。ブラックボックスの手術であった。
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