2021年6月8日火曜日

状況論的「お・も・て・な・し」

 オーストラリアのソフトボールチームが、群馬県太田市で合宿に入った。その選手たちが53日間も閉じ込められているのはかわいそうだと、太田市長が「一部買い物に出ることを許したい」と発言して、非難を浴びている。

 でも人の良さそうな市長がにこやかにそう話すのをみると、たしかに(かわいそうだなあ)と思うし、市民と接触しないような工夫をしているなら、それもありかなと、ついつい同情してしまう。合宿以外の場には顔を出さないという「規定」で来ているのだから、それを崩すのはけしからんというのも、コロナウィルスの猛威が衰えないことを考えれば、よくわかる。井戸端会議は四分五裂して揺れ動く。

 太田市長の発言は、「お・も・て・な・し」なのだ。しかも、ソフトボールチームが成田を経てやってきた。健康そうな彼女らの姿を見ると、ワクチン接種を終えていることも含めて、コロナウィルスの猛威ということを忘れてしまいそうになるほど気持ちが上向きになる。接触しないという「バブル」の基本は、選手団がウィルスを持ち込むというより、こちらの市民と交流してウィルスを感染させてしまうことも憂慮している。だが、市長や市民の方は、まず、自分たちが感染源とは考えない。同じ太田市にいて、同じ空気を吸っているのであれば、「わたしたちと同じ」と「お・も・て・な・し」の心が揺さぶられる。練習試合を予定していたクラブチームとの練習試合が行われた。また同じく大学のチームが「14日間を経て後に・・・」と、当初の(6日間後の)予定の変更を求めたのは、上出来だ。気持ちの上では、「14日間を経れば、市民との交流もいいんじゃないか」という意見さえ、出かねない。

 つまり、「お・も・て・な・し」の心は、状況論的に移り変わる私たち自身の気分に違和感さえなければ、むしろ交流を促進し、「せっかく来てくれているのだから・・・」といろいろなことに便宜を図り、希望に応えるのを旨とする。それが、今回の太田市長の発言に現れている。

 それだけではない。読売新聞の世論調査によると、オリンピックの実施に賛成と反対の数が、大きく変わり始めている。6割近かった「反対」が40%代に減った。変わって「条件付き賛成」が増えている。これも状況論的な心持のせいだ。

  まず、外国の選手団がやってくる。国内の選手たちの活躍が(目前の五輪を目指して)ヒートアップする。TV番組や新聞紙面を飾る。となると、その選手たちに感情移入して、活躍する姿を見たいというのが、「状況論的心持ち」の弱い所なのだ。

 コマーシャルを請け負っている電通なども、それを承知しているからどこで何を使ってどう宣伝して行けば「世論」を動かすことができるか、文字通り陰謀論的に計算して推し進めているに違いない。「世論」を味方につけてそれを乗り越えなければ、ディレクターの日給が35万円というべらぼうな契約書が、後日明らかにモンダイになる。そうすると、それ以上に請け負って下請けに渡す仲介だけで10%、20%という仲介料をとっていることも、たぶん改めてモンダイになるであろう。すべて税金だよってことで、担当部署は非難にさらされる。

 「世論」の気分が変わることに、政権の浮沈がかかるとなると、何をするのか目標が明確になる。となると、何としてでもごり押しする方法を知っているのが、いまの内閣。さらに「解散と総選挙」がかかっているから、いわば、オリンピックは総力戦となる。

 さて、どうしてくれるのだろう。こちとら、ワクチンもまだ済まないままで、文字通り成り行きを見守っている。だって、それしか術がないんだもの。

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