このところ気温が下がっている一昨日(9/8)は、雨も落ちず曇り空。東松山の国立武蔵丘陵森林公園へ出かけた。植物案内の師匠が同行。だが私はどのくらい歩けるかが主眼。4時間を目指している。もちろんゆっくりでないと草臥れる。植物案内というおまけがついていると、頭は素通りするが、テンポはのんびりになる。
コロナ禍になって何度かここに足を運んでいるが、それでも全部のルートを歩いたわけではない。どこへ行こうと「抜け道あります」と具合がいいから、おおよその自分の位置を頭に描きながら、ついて歩く。師匠は、この森林公園を探鳥や植物観察のフィールドにしている。にもかかわらず、全体像が頭に入っていないのか、細かい自分の現在地が跳んでしまうのか、今どこにいてどちらへ向かっているかがわからなくなる。つまり、山歩きのGPSのような役割をする私の出番もあるというものだ。
師匠は、気ままに歩く。これといって当てがあるわけでもないから、メインの舗装路ではなく草をかき分けるような踏み跡をたどるルートをとる。だから私も、初お目見えの道に踏み込むようになる。それは、面白い。何が面白いのだろう。初めて通るという感触なのか、どちらを見ても、昨日までの雨を吸った草と木がびっしりという環境なのか。でも暑くはない。半袖の私は、ちょっとしまったと思っている。蚊がいる。心得たもので、師匠は長袖。私は、つい公園という言葉にだまされて(そうではないことが分かっているはずなのに)、半袖にしてしまった。時々、ペチペチと腕をはたきながら、歩く。
前方を、鳥観の一脚望遠鏡を抱えた方が横切る。その人のあとへ、うんと距離を置いてついて行く。池や大きな水たまりや庭園風に設えた蓮池へ出る。「トンボ公園よ」と師匠はいう。ショウジョウトンボやシオカラトンボ、イトトンボが飛び回っている。と、アラサーの男が私のカメラを見て「撮ってくれ」といって、庭園中央に設えられた風通しのよいお休みどころに座って待つ。カメラのシャッターを押して「送ってあげるからメールアドレスを教えろ」というと、「スマホを手放してしまった。鶴ヶ島に住んでいる」とちょっとおぼつかない日本語で話す。「じゃあ今度、ここであったらね」と師匠が横から口を出す。師匠の脇には、先ほどの鳥観の望遠鏡男がいて、アオゲラはいるが、アカゲラは山へ帰って行ってると話している。あとで聞いたが、その鳥観男が「あまり相手にしない方がよい」と師匠に言ったという。話しかけて、お金をせびるようなことをしている、と。う~ん、彼の異国人も苦しいんだなと、チラリと思う。
ジャコウアゲハが目の前を舞って、すぐにそれを忘れる。ウマノスズクサに卵を産み付ける、ほらこれよと教わるが、その脇の大きな葉とどこが違うか、分からない。関心がないから、目がとまらないのだと、我が身のふがいなさを知る。
大きな池にかかる吊り橋を渡る。水気をたっぷり含んだ樹林を抜ける。これがガンクビソウ、こちらは仲間のヤブタバコと、歩きながら目にとまる草の名を次々と師匠は口にし、ときどき私はカメラに収めるが、そのうちふ~んと聞き流すようになって、門前の小僧からも降りてしまう。
おや、もう2時間も歩いている。肩の強張りは、感じない。今日は調子がいいようだ。そろそろお昼にしようと、広い親水公園へ降りてゆく。テーブル付きのベンチが何十脚も置いてあるが、まばらに年寄りが腰掛けて食事にしている。貸し自転車の修理点検をしている若者が二人、向こうの方の動きを引き受けている。
15分程でお弁当を済ませて、再び歩き出す。向こうの方で、キ~ッ、キ~ッと笛を吹くような声を出して、幼い子どもが抱き上げる親に逆らっている。2番目の孫がこういう声を出して泣いていたなと思い出す。師匠は「ああ、あの子は眠いのよ」と平然としている。池が広がる。そちらにお目当ての鳥がいるかどうか見に行こうと師匠の足が向く。私は、こちらを歩いたことがない。
先ほどの奇声を発していた子が、父親にあやされて、まだ泣いている。「すみませんねえ。眠いんですよ」と親が恐縮して、私に声を掛ける。「いえいえ、たいへんですね」と言葉を返す。
池に7羽くらいのカルガモが群れて泳いでいる。この夏前に生まれたご家族さまって感じ。おっ、カイツブリがいたと師匠が指をさす。イソシギがパタパタと細かく羽を動かしながら、右から左へ飛び木陰に入った。うしろから、とことこと駆け寄る足音がして振り向くと、先ほどの奇声の子が、ニコニコ笑いながら駆け寄ってくる。やあ、元気になったねと声を掛けると、後ろから来る父親の足の陰に身を隠す。
行き止まりかと思った池の縁から、樹林の中の斜面を登る道があり、師匠は勝手知ったるところのように、上っていく。中央口近くのレストランに出る。以前この近くのベンチに座ってお昼を摂ったことがあった。ということは、引き返すルートに入っている。ま、いいか。それくらいの時間ではある。公園の向こう1/3ほどを残して、帰途についているが、それでもあと1時間半はかかるだろう。
どこにいるのか分からないという師匠を、私が案内して、「野草園」へ向かう。秋の七草の案内をしているが、「晩夏の花」も何十種と見かけた。ナンバンギセルとかノハラアザミがきっちりした輪郭を見せて鮮やかであった。ヤマハギとかシラヤマギクが楚々として花開いている。ゴンズイ、ウメモドキ、ヨウシュウヤマゴボウなどの木の実も、まさしくたわわに実って、秋到来を告げている。カメラに収めたのが60種以上になる。これらも、師匠が口にするから耳を通るが、すぐに抜けてしまう。
粘土質でぬれて滑りそうな斜面を用心して歩いたりしながら、車に戻ったのはほぼ2時。見込み通り、4時間の行動時間となった。肩のこりを感じない。涼しかったせいだろうか、それとも、我が身が回復の兆しを告げているのであろうか。
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