2022年3月11日金曜日

どう向き合ったらいいか、困る

 朝のTVニュースを観ていたら、トルコの仲介でウクライナとロシアの外相が交渉をしたと報道している。ロシアの外相の言い分を聞いていて、何と応じたらいいか困ってしまった。

《ロシアはウクライナに侵攻していない。アメリカがウクライナでやっていること、ロシアはそれを警戒して国境沿いに展開している。アメリカはウクライナで生物化学兵器を使おうとしている》

 と、大真面目な顔をして話している。ウクライナの外相は、「そういうフェイクを長々と聞かされるのは我慢ならないが、人道回廊の保証を取り付けたいからここにいる」と応じ、外相としてすぐにでも(担当者に)電話をして「保証」ととりまとめてほしいと要請するが、ラブロフ外相は「それは停戦協議の方でやってくれ」と木で鼻を括る返答。

 〈何だよ、そんな返答するのなら外相会談になんて、出てくるなよ〉と、思わずTVに怒鳴りつけた。

 そりゃあトルコの顔を立てるためさ、とラブロフさんからの応答があるかも知れない。つまり交渉する気はなく、「(いざとなったら)核兵器を使う準備はある」と、重ねて警告するためだったのかもしれない。

 こういう相手にどう応対したらいいのだろうか。考えこんで困っている。

                              *   *   *

「どう応対するって、どういうこと?」

「いえね、ウクライナの外相の立場で考えたら、バカヤローって張り倒してやってもいいくらいなんだけど、それじゃあ戦争しかないってのと、同じでしょう。この場は、交渉なんだから」

「ラブロフの言い分を聞いていると、ロシアの作った物語が見えてくるよね。NATOがウクライナの親EU派と結託して親露派を攻撃している。それに応対して親露派を救出しようとロシア軍がウクライナに進駐しているってことでしょ。」

「でも、そんな事実はないじゃない。」

「親EU派が親露派を虐殺しているって、日本の元総理を務めたヒトも言ってるじゃない。あなたが知らないだけだって言われたら、あなたはどう応えるかね。」

「それはロシアのつくった物語でしょ。前々からアメリカが(世界に向けて)警告していたように、ロシアは演習名目で部隊を展開し、ウクライナを攻撃しようとしているって、報道していたじゃないか。」

「それだって、アメリカが挑発したと受けとっている西側諸国の知識人はいるよ。つまりアメリカはアメリカの物語で動いていて、ロシアはロシアの物語で動いているってことさ」

「じゃあ、埒外の第三者は黙って観てろってこと?」

「そんなことは言ってないよ。あなたがこの戦争に気持ちが惹かれているのは、なぜなの?」

「そりゃあ、もし似たようなことが起こったらと(日本のことを)思うからだよ」

「うん、だとすると、もし中国や北朝鮮が今回のロシアのように攻撃、侵攻してきたらってことよね。とすると、ウクライナはロシアに対する警戒をしていなかったこと、警戒していたら他の手が取れたかも知れないことね」

「うん、敵基地攻撃能力ってことも話題に上がっているからね。でもウクライナが(アメリカの警告にしたがって)現実にロシアの攻撃を察知していたとしても、ロシアの基地を攻撃するってことは、考えられないよね」

「いや、逆だよ。ロシアの物語からすると、NATOの攻撃が予測されるから、その前に敵基地攻撃能力を発揮してウクライナに侵攻したって話だよ」

「えっ、とすると何かい、敵基地攻撃能力って話も、それが正当性をもつってことはないってことかい?」

「そうだね。自国内の正当性を主張する理屈だね。ま、それがミサイル攻撃を含めてどれほどの正当性を持つことかは、今回のウクライナの成り行きをみていれば、自ずから判然とするよ。ロシアもウクライナの軍事施設を標的にして攻撃してるって口にはしているけど、実際はそうじゃないだろ。そもそも敵の攻撃を察知したと(アメリカから通知があったとしても)それで攻撃を仕掛けたら、やっぱり戦争を仕掛けたのは先に手を出した方だと、世界は思うよ。アメリカも、フェイク・ニューズに関しては、イラクなどの前科があるからね」

「じゃあ一度は攻撃を受けなくちゃならないってこと?」

「そうだね。そういうことだよ。別に憲法が規定しているからってことじゃなくて、日本が攻撃をするワケがないって明白な証しはそうやって示すしかないんだよ。いま基本的に世界がウクライナに味方しているのは、ウクライナに攻撃意志はないのに、ロシアが主権を踏みにじったってことだからだよ。そこでは、どんなロシアの理屈も通用しないってことが、日々繰り返し証し立てられている。私たちの世界認識って、そうやって日々繰り返し目の当たりにすることによって、形づくられるんだね。プーチンやラブロフの言い分を、ほとんど狂人の戯言のように聞いているのは、ただ単にアメリカの情報操作に洗脳されているからではなくて、ウクライナにロシアが手を出したってことが非道だと分かっているからだよ。そこが、世界の国際情勢リテラシーの現在地ってことだよね」

「リテラシーを上げるって、じゃあ、どうすること?」

「それが、あなたがいま応答しなければならないモンダイなんじゃないの?」

「・・・?」

「いま国際政治機関がほとんど無力に見えるのは、それが現実ってことよ。今回のウクライナの戦争でみるべきことは、ずいぶん多いよね。世界の国際情勢リテラシーを、極東の小さな国のひとりの年寄りがどうやって磨いていくか。そう思ってこそ、ウクライナの戦争のまさに当事者になるんじゃないか。そう思うよ」

「そうか、当事者研究か・・・」

「それくらいしか力が無いと見切るのか、それでも何かできることがあるんじゃないかと考えるかは、一つの分かれ道だろうけど、それにしても自分の立ち位置を見極めて振る舞うってのは、難しいよね。でもね、一匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を起こすって話もある。投げやりにならないで、世界に付き合っていくことだとおもうよ」

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