2022年12月15日木曜日

ご近所の頃合い

 給水管・給湯管の農更新工事が予定通り完了し、工事後の瑕疵チェックと修復にとりかかった。来週には工事事務所も閉じ、プランニングから5年越しの事業が終了する。いや、見事であった。

 私が理事長としてかかわったのは、ほんのその取っ掛かり。事業費を整えるための修繕積立金の値上げを策定し、大まかな工事計画を立てて、コンサルティング会社の選定をするところまでであった。その後、工事計画と予算を立て、入札をしてもらい業者選定を行う。その後に子細の工事の行程表をつくり、住居パターンをいくつか選んでテスト施工をする。その上で、共用部分から始めて5棟の居宅部分へと工事を進める。

 その都度、区切りのいいところで説明会を開く。総会を開く。棟毎に居宅部分の工事工程の説明と個別のリフォームとかの要望も受ける。同時に工事費用の、共用部から専有部への一時的な流用と、不足費用を各居宅から徴収することなどの了承を得て手順を決める。

 これらの面倒なことを、一年任期の理事会が引き継ぎ、滞りなくすすめることができたのには、30年余の理事会運営で培った自律管理の気風があったと思う。ことに修繕専門委員会という諮問機関をおいて、修繕に関する専門的な眼を養い、蓄積してきたことが大きかった。厭わず、その面倒な計画を立て、理事会へ答申してきた人たちのご苦労が、いまさらながら居住者の信頼をうるのに威力を発揮したと感心している。ましてコロナ禍の2年半の間にこれだけのことを進めるために、特段の配慮も必要であった。

 工事業者の居宅への立ち入りが1週間ほどになることから、その間、誰かが居宅にいなくてはならない。トイレは使えない、風呂はどうする、鍵はどうすると、居住者の方は、心配することが多々あった。例えばトイレは、日中は管理事務所のを用いる、朝取り外したものを夕方には取り付けて使えるようにする。工事業者の手間暇を掛けた気配りと目配りが行き届いていると実感できた。作業員の仕事の丁寧さ、仕上げのチェックも一つひとつ工事監理者が行っている。

 1号棟から5号棟まで、何しろ半年間も業者が団地の一角に事務所を構え、資材置き場を据えて出入りするのだ。彼らからしても、工事をしている居宅だけでなく、始終意詰められているわけだから、応対の言葉も丁寧になる。住民に比べると孫のような若い人たちが、細かい作業に頑張っている姿を見るのは、社会が団地にやってきて実演販売をしているようで、新鮮な風が半年間吹き抜けていくようだった。

 5年の間に彼岸に渡った居住者も何人かいる。一緒に理事をやった人たちであったり、同じ階段の方だったり、自治会報で、あるいはご近所の知らせで、えっ、あの人なくなったんだ、つい先日階段を出たところで言葉を交わしたよとか、いつも奥さんに付き添って散歩に出ていたけど、あの頑丈そうな旦那さんの方が亡くなったの? と訃報は耳に入る。同じ階段の方の場合はお悔やみにいったり言葉は交わすが、コロナ禍もあって葬儀はほぼひっそりと行われたことを後で知る。団地全体が年を重ね、世代交代も進んでいる。

 団地というのは、そういう距離がクールに取られていて、親密な人の付き合いとは違った趣を持つ。関わり合い事柄については子細な向き合い方をする。しかしその余のことは、それぞれの傾きや好みに沿ってご随意にという頃合いが、団地の中でようやくうまく取れるようになったのかなと思っている。建設から33年。建物の寿命の半ばを過ぎた。こちらは余命幾ばくという年齢になった。後のことはよろしくと、誰にいうともなく言っておきたいと、ふと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿