2022年12月4日日曜日

この国を見よ!

 「敵基地攻撃能力」を保有することに自公が合意したと報道があった。どの段階に入ったときに「敵が攻撃態勢に入った」とみなすのかは曖昧の儘という。そりゃあそうだ、敵の考えが文書で規定するほどきっちり見えたら、戦争さえ起こせない/起こらないかもしれない。

 今のウクライナ戦争をみていると、「敵基地攻撃能力」が役に立つのかと思わないわけにはいかない。

 ウクライナは、ロシアを攻撃していない。ただただ防衛に専念している。街が破壊され、生活インフラが攻撃を受けて奪い取られ、尚且つ懸命にロシアと戦っている人々。日々のウクライナ情報を見聞きする私は、彼らに敬意を感じ、ウクライナのためにわが生活が燃料の値上がりや電力不足で苦しくなろうと、これくらいは我慢しなくちゃと思ったりする。それがたぶん、ウクライナに対する欧米や自由主義諸国の援護に繋がっている。

 もしウクライナがロシアを攻撃すれば、忽ちロシア・ナショナリズムは昂揚して、全面戦争へ進むしかないとも思う。つまり戦争を始めたのはロシアであるけれども、その趨勢の主導権を握っているのは、皮肉なことにウクライナとそれを支援する人々である。

 武器を供与しているアメリカも、ウクライナにロシア領域を攻撃するミサイルは与えないと明言してさえいる。ロシアの核攻撃と、それによって展開される第三次世界大戦という核戦争を恐れている。つまり紛争当事国になることを恐れている。これが、ウクライナ戦争の膠着をもたらしていることも明らかだ。ウクライナは、その段階への主導権は、全く持っていない。これも日本の現在と同じである。でもいまさら独自の判断をして、独自の政策展開をするほどの軍事的国力をつけるってことは、ウクライナも日本も、望むことではない。

 ロシアはウクライナがロシア領を攻撃してこないのをいいことに、持久戦に持ち込み、冬を味方につけ、生活インフラを破壊して、優位に戦略展開を図ろうとしている。だがもしウクライナがロシア領域を攻撃する能力を保有していて、それを実施していたら、ロシアはたちどころに全面戦争に突入していたであろう。核の使用もしていたかもしれない。さらにもしロシアが核を使用したら、さすがの中国もロシア寄りの傍観をつづけるわけにはいくまい。ロシア制裁という欧米のロシア孤立策に、中国も(消極的であっても)味方せざるを得ないとも考えられる。中国は、平和裏のグローバリズムの中でこそ、アメリカを凌ぐ経済大国への道を歩むことができる。そういう立場にいるからだ。

 さてそこで、日本の場合だ。日本は核を持っていない。たとえアメリカから借用する形で持つことがあっても(そんなことをアメリカが認めるとは思えないが)、アメリカの同意なしに反撃的に核を使用することができようはずもない。ということは、核を持とうが持つまいが、近隣の核を持つ中国や北朝鮮を「敵」として「敵基地攻撃能力」をもつことは、敵による核先制攻撃誘因となる結果を招く。それは間違いなく想定できる。

「敵基地攻撃能力」を持っていると宣言することは、それが抑止力として働くよりも、(敵が)攻撃意志を持った段階からごく近い時間で核攻撃に移ることを蓋然化する。つまり、開戦を決意したときから全面戦争に突入すると思われる。

 もし北朝鮮が、単独で開戦を決意した場合、それはほぼ間違いなく自国を滅ぼす決意をしてかかるだろう。その戦略戦術の進みようは想定しても、さしたる意味を持つとは思えないが、日本がウクライナの現在に陥ることは、まず間違いない。

 もし中国が台湾併合を掲げて武力攻撃を開始したら、アメリカが留め男になって仲裁する以外に、その戦争をとどめる力は、世界のどこにもない。今のアメリカの台湾政策を見ている限り、そういう展開は考えられない。よほど中国の国内事情が逼迫しない限り、中国が台湾を巡って武力攻撃に踏み切るとは思えない。

 中国の台湾武力攻撃をきっかけに、北朝鮮が独自に先端を開く可能性はありうる。北朝鮮の独立自尊は、韓国を眼中に置いていない。それは、韓国の文在寅政権のときの応対の仕方をみていると如実に感じられる。放っておいても韓国は北朝鮮に追随すると(何を根拠にしているか、経済的な実力を考えるとわからないが)、先見的にみなしている。そういう尊大さが、振る舞いの行間に見え隠れしている。つまり北朝鮮の独自攻撃は、米中戦争の間隙を縫って韓国を併合し、日本との戦争を仕掛けて、核保有国としての優位性を国際的に承認させることにおかれる。アメリカよ、こちらを振り返れってわけだ。

 さてそうした東アジアの情勢を考えると、日本が独自に振る舞える余地は、さほどない。アメリカの戦略戦術に付き従って、対応するしかない。とすると、「敵基地攻撃能力」を喧伝するのが得策とは思えない。「敵が攻撃態勢に入った」と判断するのが、日本側にあるからだ。たとえアメリカの敵の攻撃体制探索能力に拠るといえども、実際に「敵基地攻撃」が行われてしまえば、どちらが先に弾を撃ったかの遣り取り、つまり藪の中になる。

 それが、核攻撃を早めるだけの効果を招くであれば、むしろウクライナのように、ただひたすら攻撃を受け、国内への上陸を阻止するためにのみ反撃をし、その戦いざまを世界の世論に訴えて、耐えに耐える。それ以外に、WWⅡの「敵国」である日本がウクライナのような支援を得ることはムツカシイのではないか。

 そんなことを思った。

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