2022年8月28日日曜日

学校現場が腐るワケ

 今日(8/28)の朝日新聞にお笑い芸人がお世話になった小学校の教師との人情話が記事になっている。ふ~んと読んでいて、この教師のことを1年前に書いたことを思い出した。

 大阪市立小学校の校長だった彼が大阪市長に現場の苦衷を書き送った所、「訓告処分」を受けたというのが、昨年8月の記事。私は足尾鉱毒事件を天皇に直訴した田中正造を思い出し、「昔と変わらぬ風景」と題して、松井大阪市長の振る舞いを揶揄った。それくらい大時代的な現場教師に対する接遇の仕方であった。

 松井市長にすれば、現場の校長如きが市教育委員会の施策方針について「意見をする」など不届きなことと考えているのであろう。だが。こういう現場の声に耳を傾けず、現場教師を上意下達の命令系統で差配することで学校のモンダイが解決できると考える「強権主義的な統治手法」が、すっかり学校を変えてしまい、学校現場をブラック企業化していると批判を受けている(喜入克『教師の仕事がブラック化する本当の理由』草思社、2021年)。文科省が、例えば職員会議は決定機関ではない伝達機関だと方針を提示して、各都道府県教委に通達したのが、20年ほど前であったか。私はその直後に退職したからその後の変化は目撃していないが、そうした教師に対する管理方針が、現場教師の有り様をすっかり変えてしまい、教師たちを腐らせていったと、ときどき耳に挟んできた。

 松井大阪市長といえば日本維新の会の代表。この政党自身がかつては、既得権益をぶっ壊して大阪府市政を立て直すと旗印を掲げて登場したものであったが、それがどうしてこんな為体になったのか。

 いや、もともと橋下徹市長・知事の統治センスが上意下達タイプであった。意に沿わぬ(大阪都構想に関する批判的な)データを提示した国立大学教師を大学から排除しろと大学総長に迫るような強権むちゃぶりだったことを思い出す。私たち庶民からすると、既得権益者たちも維新の会も、どっちもどっち、強権主義者の権力争いにしか過ぎなかったってことだ。それをつい「既得権益」の破壊者と誤解しただけのことであったか。あるいは、それまでの為政者の身勝手に対する憤懣を、たまたまぶちまけるような気分を、勢いのいい維新の会に仮託しただけであったか。

 1年前の、当の校長がどうしているか気にならないでもなかったから、今日の記事は、無事退職して静かに暮らしているんだなと近況を手にした気分であった。朝日新聞も、この教師の振る舞いの肩を持って、大阪市のやり方を批判したいのであろう。わかる、わかる。そうしたい気分はわかる。だがそれは、こんな人情話からはじめることなのだろうか。江戸の敵を長崎でっていうような感じがするのだが、どうだろう。

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